寄稿・インタビュー
ポリティカ紙(セルビア)による河野外務大臣書面インタビュー
(2019年8月15日付)
「二国間経済関係の更なる発展を期待」
「日本の外務大臣のセルビア訪問は18年ぶりになります。日本とセルビアとの友好の歴史は長く,1882年に明治天皇とミラン・オブレノビッチ国王が書簡を交換したことから,二国間交流が始まりました。2022年には『日・セルビア友好140周年』を迎えます。今次訪問を契機に日本とセルビアの関係をより親密なものにし,2022年を見据え,二国間で具体的な交流を積み上げていきたいと考えます」と,本日ベオグラードに到着する日本の河野太郎外務大臣はポリティカ紙へのインタビューで語った。
【問】今次セルビア訪問の意義と目的いかん。
【河野外務大臣】今次訪問は,私にとり,初めてのセルビア訪問です。セルビアは,1990年代及び2000年代初頭の厳しい時代を乗り越え,現在は,西バルカンの大国として,地域の安定と平和のために重要な役割を担い,経済改革や財政健全化が進展する活力ある国と承知しています。今回の訪問を通じ,近年のセルビアの発展を目にすることを楽しみにしています。旧ユーゴ崩壊後,日本は経済協力を通じてセルビアの発展を支援してきました。欧州の地理的要衝に位置し,EU加盟を目指し順調に改革を進めるセルビアとの関係は,日本にとってますます重要なものになってきています。また,価値を共有する結束した欧州を支持するという観点からも,私はセルビアとの関係を重視しています。
【問】昨年の安倍総理のセルビア訪問の際,西バルカン担当大使が任命された。
【河野外務大臣】昨年1月の安倍総理の訪問時に発表した「西バルカン協力イニシアティブ」を通じて,二国間関係は各分野で飛躍的に発展しています。御指摘の西バルカン担当大使の任命も,その一部です。昨年5月には,西バルカン担当大使がセルビアを訪問し,政務協議を実施し,二国間及び国際場裡での協力促進に関する有意義な議論を行いました。それに加え,西バルカン地域青年協力機構(RYCO)との協力による青年交流,防災セミナー,ビジネス・フォーラム,記者招聘等を実施する等,西バルカンの域内協力,融和及びセルビアの国内改革をサポートし,セルビアの欧州統合に向けた支援を強化しています。
【問】日本がバルカン地域につき最も可能性を見いだしている点は何か。
【河野外務大臣】欧州が内外での課題を抱えその一体性が揺らぐ中,日本はセルビアを始めとする西バルカン諸国の安定と平和を極めて重視しており,セルビアが地域の平和と安定のために建設的な役割を果たし,セルビアのEU加盟プロセスが着実に進展することを期待しています。西バルカンの欧州統合は,日本が一貫して支持する結束した欧州の実現にとり非常に重要であると信じています。
【問】日系企業「東洋タイヤ」が数日前にセルビアへの工場開設を発表し,セルビア経済への大きな後押しとして評価されている。外交と国際経済はしばしば相互作用することを踏まえ,日本とセルビアの更なる政治・経済の協力可能性につきどう考えるか。
【河野外務大臣】安倍総理のセルビア訪問以降,業務用大型冷蔵設備を製造する前川製作所がスメデレボに工場を開設し,JTインターナショナルがセンタのタバコ工場に新製造ラインを増設しました。また,伊藤忠商事が,ビンチャの電力発電を伴う廃棄物処理施設の建設プロジェクトに参加を決めています。さらに,御指摘のとおり,先日,東洋タイヤがインジヤ市にタイヤ生産工場を設立することを決定しました。東洋タイヤの投資は,約3.9億ユーロの大規模なものです。これらの日本企業のセルビアへの新規投資は,日本企業のセルビアへの関心が確実に高まっている証左であります。更なる経済交流の進展が期待できる状況にあると考えています。セルビアは,比較的低廉な賃金水準で質の高い人材を有し,近年,経済・財政改革の進展も顕著です。
【問】薗浦総理補佐官は当紙のインタビューに対して,投資を決定する際の情報不足が日本企業のセルビアへの投資の増加に向けての最大の障害だと述べていたが,そのような状況を改善するために具体的に何を行い得るか。
【河野外務大臣】こうした魅力あるビジネス環境をより多くの日本企業に知ってもらうことが重要であり,日本とセルビアの双方が,日本企業向けの情報提供の取組を進めていくことが更なる経済交流の進展のために必要です。この観点から,日本政府は昨年12月に東京,本年5月には,独デュッセルドルフにおいて,セルビア商工会議所の参加も得て日本企業向けのビジネス・セミナーを開催しました。今後もビジネス・セミナーの開催等を通じ,日本企業に対するセルビアへの投資の利点等についての情報共有を行っていきます。
加えて,日本企業のセルビアでの成功談を他の日本企業に知ってもらうことも重要です。セルビアに投資した日本企業の多くはセルビアの有利な税制上のインセンティブや労働者の質,セルビア政府の対応に大変満足していると伺っていますので,更に成功例を積み重ね,それを積極的に広報していくことが必要です。セルビア政府の日本企業への配慮や日本企業向けの積極的な情報提供や広報が新たな日本企業のセルビア進出の呼び水となります。この点,セルビア側の積極的な取組も期待します。大企業のみならず中小企業に対する情報も重要であり,セルビア政府による日本国内での情報提供を引き続きお願いしたい考えです。