寄稿・インタビュー

アイランド・タイムズ紙(パラオ)への河野外務大臣寄稿

(2019年8月6日付)

令和元年8月8日

 今回,私は,日本の外務大臣として初めてパラオを訪問します。今年は,日・パラオ外交関係樹立25周年であり,このような記念すべき年に伝統的に友好・協力関係を有する美しい国パラオを訪問することができ,大変嬉しく思います。今回の私の訪問は,太平洋島嶼国との抜本的関係強化に向けた日本の強い意思の現れです。

 前回,日本の外務大臣が太平洋島嶼国を訪問したのは32年前に遡ります。1987年,日本の外務大臣として初めて太平洋島嶼国を訪問した倉成大臣が,太平洋島嶼国との関係を一層発展させていくことを約束して以来,これまで日本と太平洋島嶼国との関係は着実に発展してきました。

 倉成大臣の訪問から10年後の1997年,日本と太平洋島嶼国との関係の基盤となる太平洋・島サミット(PALM)が立ち上げられ,3年に一度日本と太平洋島嶼国の首脳が一堂に会し,絆を更に深めるための対話を重ねています。PALMでは,太平洋島嶼国の独立性と自主性を尊重しながら,共に「太平洋人」である我々が直面する開発,自然災害,環境・気候変動への対応といった問題につき,議論を重ね,協力して解決策を考えてきました。PALMの中間閣僚会合が来年夏に初めて太平洋島嶼国で開催されることが決定される等,PALMプロセスは進化を続けています。

 日本と太平洋島嶼国の関係強化はPALMのような首脳レベルの交流にとどまりません。島嶼国の発展を促進するため,国際協力機構(JICA)による研修プログラムを通じ,この32年間で1万人を超える太平洋島嶼国の研修生が日本を訪問しました。国民同士の交流も着実に進展しており,2015年に開始した21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYS)では,5年間で732人の太平洋島嶼国の若者が日本を訪問し,また,2002年から開始された子どもたちの交流事業では,1,000人を超える島嶼国の子どもたちが日本を訪問し,1,800人の日本の子どもたちが島嶼国を訪問しました。こうした人と人との交流を通じ,日本と太平洋島嶼国は,文化や価値観を伝え,相互に学び合ってきました。

 太平洋島嶼国の発展を支援するに当たり,日本は,島嶼国が「質の高い成長」を実現することを重視してきました。経済成長の基盤となるインフラは,開放性,透明性,経済性及びインフラが整備される国の財政健全性といった国際スタンダードに則った「質の高いインフラ」であるべきとの考えの下,日本は2001年以降,この地域において9の空港,多数の道路を整備してきました。自らも人を資源として成長してきた日本は,経済発展における教育の重要性を強く認識しており,これまで島嶼国において約600の学校の整備を支援しています。

 こうした32年間の歩みにおいて,太平洋島嶼国と共通の課題を共に乗り越えてきた経験を踏まえ,日本と太平洋島嶼国は同じ「太平洋人」であり,未来を共有していることを強く実感しています。そして,日本のみならず,地域の多くの国々が共有するビジョンである「自由で開かれたインド太平洋」を実現するために太平洋島嶼国は鍵となる重要な存在です。こうした問題意識の下,日本は,太平洋島嶼国に振り向けるリソースを増大し,政府全体で重点政策として取り組むことを決定しました。

 具体的には,安定・安全の確保,強靱かつ持続可能な発展,人的交流・往来の活発化,という3つの柱を中心に太平洋島嶼国との協力を強化していきます。1つ目の柱である,安定・安全の確保においては,島嶼国の海上保安分野の人材育成の強化に重点を置きます。この点でパラオには今年初めて海上保安庁の職員を派遣し,巡視船の乗組員等に対して技術指導を行いました。2つ目の柱である,強靱かつ持続可能な発展については,日本はパラオ国際空港旅客ターミナルの拡張・改修,運営維持管理を支援しており,こうした「質の高いインフラ」の整備により,パラオの観光産業そして経済発展に貢献していきたいと考えています。3つ目の柱である人的交流・往来の活発化においては,これまで積み重ねてきた人と人との交流を一層促進していく考えであり,2020年の東京オリンピック・パラリンピックにはパラオを含む太平洋島嶼国から計100名の子どもを招待します。また,今日,日本の高校生がJENESYSの枠組で初めてパラオを訪問します。

 地理的に近く,多くの日系人がおり,2015年に上皇上皇后両陛下が訪問されたパラオは,日本にとり,太平洋島嶼国の中で特別な位置を占める存在です。今回の訪問では,できるだけ多くのパラオの方々にお会いし,日・パラオ関係を更に発展させられることを願っています。


このページのトップへ戻る
寄稿・インタビューへ戻る