寄稿・インタビュー
東亜日報(韓国)による河野外務大臣書面インタビュー
(2019年6月26日付)
【1面記事】
韓国政府の「徴用」解決法,到底受け入れられない 河野日本外相,本紙インタビューで明らかに
「徴用問題,関係発展の最大の障害物」
河野太郎外相は,24日,「韓日企業が財源を用意し,被害者に慰謝料を支給しよう」という韓国政府の強制徴用解決法の提案に対し,「日本政府は到底受け入れられない」とし,仲裁委員会でこの問題を解決しなければならないと明らかにした。
日本外交の司令塔である河野外相は,この日,東亜日報への書面インタビューの回答で「(韓日)双方が外交的に解決策を探る,もしくは双方が知恵を絞っていこうという韓国側の認識自体,事の重大さを全く理解していない」として,このように強調した。
河野外相は,強制徴用問題について,「現在の日韓(韓日)関係の発展を阻害する最大の障害」と規定しつつ,「問題の本質は,国際約束(1965年韓日請求権協定)が50年以上の時を経て韓国側から一方的に覆されてしまったこと」だと付け加えた。河野外相の言及は,日本政府が徴用賠償判決とそれに続く過程をそれだけ重く見ており,韓日関係と直結した事案として認識していることを示している。
しかし,河野外相は「外交当局間の対話は,非常に重要であり,今後も継続していく考え」であると付け加えた。河野外相は「日韓関係が非常に厳しいが,北朝鮮問題を始め,連携すべき課題については引き続き韓国とも連携していく考え」とし,「民間や地域間の交流は続けるべき」と明らかにした。
【3面記事】
北朝鮮問題等,韓日の緊密な協力が必須 民間交流-安保連携は継続する
「韓国が50年以上の時を経て協定を覆し,友好を望む日本国民,徴用判決に失望危機意識を持ち解決策を提示してほしい」
国家間では引き下がれないことがある。しかし,絶対に解決しないことのように意見が一致しない時がまさに外交が動く時になりうる。河野太郎外相との24日の書面インタビューは,韓国案に対する日本政府の考えと韓日関係に対する認識を率直に聞くために行われた。韓国政府は,大法院の強制徴用賠償判決以降,7カ月となる今月19日,「韓日企業が財源を用意し被害者に慰謝料を支払おう」という解決策を初めて示した。河野外相は,韓国の解決策に「NO」と明らかにするだけでなく,「事態の重大性」,「厳しい日本の認識」を伝えながら,韓国政府に強い危機意識を持ってもらいたいと求めた。河野外相は,「韓国政府に引き続き適切な解決策を示すことを強く求める」として,再びボールを韓国側に返した。以下は一問一答。
【問】日本政府は,徴用問題についての韓国政府の徴用解決策を「受け入れられない」と明らかにしたが。
【河野外務大臣】韓国側の提案は,韓国の国際法違反の状態を是正するものではなく,この問題の解決策にはならない。日本政府は,「日本企業の資産への被害」はもちろんのこと,そもそも日本企業に慰謝料の支払を求めた大法院判決が,日韓(韓日)請求権協定という国際法に違反していると考えている。
【問】「日本が問題を政治的な観点で利用している」との声もある。
【河野外務大臣】全く事実と異なる。問題の本質は,国と国との約束,それも国交正常化の礎となってきた国際約束を50年以上過ぎて韓国側が一方的に覆してしまったことである。双方が外交的に解決策を探る,もしくは双方が知恵を絞っていこうという韓国側の認識自体,事の重大さを全く認識していないものだ。
【問】韓国政府に望むことは。
【河野外務大臣】旧朝鮮半島出身労働者(日本政府が強制徴用労働者を指す言葉)に関する大法院の判決は,両国及び国民の間の財産・請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決」されたことを確認した日韓請求権協定に明らかに反し,1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものである。韓国政府には,協定上の義務に従い,仲裁に応じるよう求める。
【問】日本政府は未来志向の韓日関係のため,どのような努力をしたのか。
【河野外務大臣】(2017年8月)外務大臣就任以来,未来志向の日韓関係構築のため特に意を用いて努力してきた。両国関係が非常に厳しい中でも,両国間の相互理解と信頼増進のために,これからも国民間の交流,自治体間の交流や,文化・スポーツの交流はしっかり続けていくべきと考える。また,北朝鮮問題を始め,連携すべき課題については引き続き韓国とも連携していく考えだ。
【問】「日本は韓国に気を使わない」というメディア報道もある。日本にとって韓国はどのような国か。
【河野外務大臣】北朝鮮問題等,依然,不透明・不安定な東アジア地域の安全保障環境において,日本と韓国は,共に米国の同盟国でもあり,日韓両国の緊密な連携は不可欠である。(しかし)昨年の一連の大法院の判決は,日本政府だけではなく,両国の良好な関係を望む多くの日本国民を大変失望させている。
【問】日本の外相として,韓国政府,国民に伝えたいことは。
【河野外務大臣】米国のワシントン・ジョージタウン大学に留学している時,近郊に住んでいた金大中(キム・デジュン)大統領の御自宅で食事を頂いたことがある。私の父である河野洋平,また大叔父にあたる河野謙三と金大中大統領は,元々長くお付き合いをさせていただいたが,私もワシントン時代,そういう形で金大中大統領に直接接する機会があった。若い時の経験に加えて,日韓の問題については,私の祖父の河野一郎,そして私の父の河野洋平も関わってきたため,私自身強い思い入れもあり,かなり前から日韓の議員交流にも熱心に取り組んできた。その私が外務大臣を拝命し,昨年,金大中大統領と小渕総理との「日韓パートナーシップ宣言」20周年という節目の年に,康京和長官とともに日韓関係をさらに前へ進めていこうと思っていた矢先に,それに逆行するような韓国側の動きが相次いだことは非常に残念であり,大変悔しくもある。是非韓国政府が,早急に適切な対応を取ることを強く望んでいる。
【電子版記事】
北朝鮮問題等,韓日の緊密な協力が必須 民間交流-安保連携は継続する
「韓国が50年以上の時を経て協定を覆し,友好を望む日本国民,徴用判決に失望危機意識を持ち解決策を提示してほしい」
国家間では引き下がれないことがある。しかし,絶対に解決しないことのように意見が一致しない時がまさに外交が動く時になりうる。河野太郎外相との24日の書面インタビューは,韓国案に対する日本政府の考えと韓日関係に対する認識を率直に聞くために行われた。韓国政府は,大法院の強制徴用賠償判決以降,7カ月となる今月19日,「韓日企業が財源を用意し被害者に慰謝料を支払おう」という解決策を初めて示した。河野外相は,韓国の解決策に「NO」と明らかにするだけでなく,「事態の重大性」,「厳しい日本の認識」を伝えながら,韓国政府に強い危機意識を持ってもらいたいと求めた。河野外相は,「韓国政府に引き続き適切な解決策を示すことを強く求める」として,再びボールを韓国側に返した。以下は一問一答。
【問】大阪で開催される主要20か国(G20)サミットを控え,未来志向の韓日関係のために韓国政府に望むことは何か。また,G20サミットの際,韓日首脳会談は開催されるのか。
【河野外務大臣】私は外務大臣就任以来,未来志向の日韓関係構築のために,特に意を用いて努力してきた。しかし,旧朝鮮半島出身労働者(日本政府が強制徴用労働者を指す言葉)の問題を始め,それに逆行するような韓国側による否定的な動きが相次いだことは大変残念。現在,日韓(韓日)関係は非常に厳しい状況にある。
特に,旧朝鮮半島出身労働者に関する大法院の判決は,両国及び両国民間の財産・請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決」されたことを確認した日韓請求権協定に明らかに反し,1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものである。
本件については,韓国側の責任において,国際法違反の状態を是正する必要があるにもかかわらず,先般韓国側から示された提案(韓国と日本の企業が自発的に基金を作り,大法院確定判決の被害者に慰謝料を支給)は,韓国の国際法違反の状態を是正するものではなく,この問題の解決策にはならない。したがって,日本政府として到底受け入れられないという立場を韓国政府にも伝達した。
韓国政府には,引き続き適切な解決策を示すよう強く求めるとともに,協定上の義務に従い,仲裁に応じるよう求める。
なお,G20サミットの際の日韓首脳会談については,まだ決まっていない。
【問】韓国政府が提示した強制徴用問題の解決策をどのように評価するか。
【河野外務大臣】既に述べたとおり,日本政府は韓国政府に対し,韓国側の責任において国際法違反の状態を是正することを含め,適切な措置を講ずるよう強く求めてきている。しかし,今般韓国側から示された提案は,韓国の国際法違反の状態を是正するものではなく,この問題の解決策にはならない。日本政府は,「日本企業の資産への被害」はもちろんのこと,そもそも日本企業に慰謝料の支払いを求めた大法院判決が,日韓請求権協定という国際法に違反していると考えている。
また,韓国国内にはこの問題を日本が政治的観点から利用しているといった声もあるようだが,このような指摘は全く事実と異なる。この問題の本質は,国と国との約束,それも国交正常化の礎となってきた国際約束が50年以上の時を経て韓国側から一方的に覆されてしまったこと。双方が外交的に解決策を探る,もしくは双方が知恵を絞っていこうという韓国側の認識自体,事の重大さを全く理解していないと言わざるを得ない。
外交当局間の対話は,非常に重要であり,今後も継続していく考え。その上で,現在の日韓関係の発展を阻害する最大の障害といえる旧朝鮮半島出身労働者問題については,韓国側において,自らの国内事情・認識のみにとらわれず,国際法,国家間の関係の観点からしっかり向き合っていただき,国際法違反の状態を是正する適切な措置を講じていただく責任がある。改めて,日韓関係のためにも,韓国側のしっかりとした危機意識の共有と,国際社会の一員としての責任ある対応を強く望む。
【問】日本政府は未来志向の日韓関係のためにどのような努力をしてきたか。
【河野外務大臣】私は外務大臣就任以来,未来志向の日韓関係構築に向けて特に意を用いて努力してきたが,旧朝鮮半島出身労働者の問題を始め,そのような努力に逆行するような韓国側による否定的な動きが相次いでいることは大変残念。
日韓関係は現在,非常に厳しい状況にあるが,他方で昨年,私が立ち上げた「日韓文化・人的交流推進に向けた有識者会合」の提言では,両国間の政治・外交関係が悪化した場合でも,民間や地域間の交流は続けるべきだと謳っている。両国関係が非常に厳しい中でも,両国間の相互理解と信頼増進のために,これからも国民間の交流,自治体間の交流や,文化・スポーツの交流はしっかり続けていくべきと考え,私は機会がある度にこの点を強調している。
また,日韓関係が非常に厳しい状況が続いている中でも,北朝鮮問題を始め,連携すべき課題については引き続き韓国とも連携していく考え。
いずれにせよ,現在の非常に厳しい日韓関係は,韓国側による否定的な動きが相次いだことによるもの。韓国側には,日韓関係の重要性に鑑み,様々な課題について,適切な対応を求める。
【問】「日本は韓国に気を使わない」というメディア報道もある。日本にとって韓国はどのような国か。
【河野外務大臣】北朝鮮問題等,依然,不透明・不安定な東アジア地域の安全保障環境において,日本と韓国は,共に米国の同盟国でもあり,日韓両国の緊密な連携は不可欠。
また,人的交流面でも,2018年の日韓間の人的往来者数は,初めて一千万人を突破する等,非常に活発。
このような二国間関係の重要性を踏まえ,私は外務大臣就任以来,未来志向の日韓関係の構築に向けて努力してきただけに,現在の日韓関係については大変残念に思う。
昨年の一連の大法院の判決は,日本政府だけではなく,両国の良好な関係を望む多くの日本国民を大変失望させている。現在の日本国内の韓国に対する認識は大変厳しいものがある。また,大法院の判決については,韓国国内でも様々な意見があるものと承知している。
韓国政府には,この日韓関係の重要性をしっかり認識し,強い危機意識をもって臨んでもらいたいと心から思う。
【問】日本の外相として韓国政府,国民に伝えたいことは。
【河野外務大臣】私がワシントン・ジョージタウン大学に留学している時に,後の金大中(キム・デジュン)大統領がワシントン近郊に住んでおられ,御自宅でお食事を頂いたことがある。私の父である河野洋平,また大叔父にあたる河野謙三と金大中大統領は,元々長くお付き合いをさせていただいていたが,私もワシントン時代,そういう形で金大中大統領に直接接する機会があった。
そのような私自身の若い時の経験に加えて,日韓の問題については,私の祖父の河野一郎,そして私の父も関わってきたため,私自身強い思い入れもあり,かなり前から日韓の議員交流にも熱心に取り組んできた。
その私が外務大臣に任命され,昨年,金大中大統領と小渕総理との「日韓パートナーシップ宣言」20周年という節目の年を迎え,未来志向の日韓関係構築に向けて,康京和長官とともに日韓の外交関係をさらに前へ進めていこうと思っていた。その矢先に,それに逆行するような韓国側の動きが相次いだことは非常に残念であり,私個人としても大変悔しくもある。
是非韓国政府には,この日韓関係の重要性についてしっかりと認識していただき,早急に適切な対応を取ることを強く望んでいる。