寄稿・インタビュー
ヘラルド紙(エチオピア)による河野外務大臣書面インタビュー
(2019年5月4日付)
「日本はアビィ首相の地域における平和と安定のイニシアティブを評価」
日本の河野太郎外務大臣は,本日エチオピアを訪問する。事前に行われたヘラルド紙による書面インタビューに対し,河野大臣は,日本はアビィ首相による地域の平和と安定のイニシアティブを評価していると述べた。また,河野大臣は,人口増,天然資源,高い経済成長率により,日本においてアフリカの潜在性に注目が集まっており,投資,ビジネス面でのアフリカへの関心が急速に高まっていると指摘した。
河野大臣は,インタビューの中で,日本がアフリカの角と周辺地域の平和と安定を重視することを強調し,アビィ首相のリーダーシップとエチオピアとエリトリアとの外交関係の再開への同首相の努力を賞賛した。
日本は2019年8月にTICAD7を開催する予定であり,河野大臣はTICAD7の重要なテーマとして,ビジネス促進,イノベーション,強靱で持続可能な社会,そして平和と安定を挙げた。エチオピアとエリトリアが外交関係を再開させた昨年,南スーダンにおいても衝突解決合意が署名された。こうした動きを受け,日本は,アフリカがアフリカ自身による紛争解決に動くのは今だと考えている。
【問】今回の大臣のアフリカ訪問及びエチオピア訪問の意義いかん。
【河野外務大臣】本年8月,日本は,第7回アフリカ開発会議(TICAD7)を開催します。TICAD7では,ビジネスの推進やイノベーション,強靱で持続可能な社会,平和と安定等が重要なテーマとなります。今回のアフリカ訪問では,TICAD7の成功に向けたアフリカ各国との協力を促進していきたいと考えております。
今回訪問する国の中でもエチオピアは,先月退位された上皇上皇后両陛下が,皇太子同妃両殿下であった1960年に御訪問された地であり,日本と古くから交流がある国です。私にとっても,2017年8月に続いて2回目の訪問であり,再びこの地を踏むことができることを嬉しく思います。
アビィ首相の就任以来,エチオピアでは国内外で様々な画期的な動きが起きています。外交面では,アビィ首相は対エリトリア国境紛争を解決し外交関係を再開するなど,アフリカの角地域の平和と安定をリードしています。さらに,国内においても,自由・民主主義の下,民族融和や諸分野における改革が進められています。
日本は,アビィ首相の外交面,内政面での取組を高く評価しております。私は今回のエチオピア訪問において,エチオピア政府のこうした取組を日本としてどう後押しできるか意見交換したいと考えております。
【問】エチオピアを含む「アフリカの角」の安全保障情勢は,アビィ首相の就任以降大きく改善しており,日本は,同地域に対する平和構築の取組を支援していることで知られている。大臣はこの地域の安全保障情勢と平和構築についてどのようにお考えか。今回の大臣の訪問を通じ,同地域の平和と安全に対する支援という観点から,どのような成果を期待できるのか。
【河野外務大臣】日本は,アフリカの角及びその周辺地域において,これまで南スーダンにおける国連PKOへの要員の派遣,政府間開発機構(IGAD)を通じた南スーダンの和平プロセス推進やソマリアのテロ対策支援,ケニア及びエチオピアのPKO訓練センターへの講師派遣,ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動等を通して,平和と安定を後押ししてきました。
アフリカの角及びその周辺地域における平和と安定を重視してきた日本は,エリトリアとの外交関係を再開させ,地域の平和と安定においてリーダーシップをとるアビィ首相の取組を高く評価しています。
約1億円を供与したほか,オスマン・エリトリア外相を日本に招へいし,アフリカの角地域における平和と安定について議論を行いました。
本年8月に日本で開催されるTICAD7においても,主要なテーマの一つとしてアフリカ自身による平和への努力を取り上げる予定です。日本は,アフリカにおける平和構築,特に国家の制度構築の取組に引き続き積極的に手を差し伸べていく考えです。今回の訪問では,アビィ首相に安倍総理発のTICAD7への招待状を直々にお渡し,アフリカにおける平和と安定に関する議論を日本と共にリードしていただくよう,お願いしたいと思います。
【問】TICAD7ナイロビ宣言は,アフリカ大陸における経済及び社会の重要な原動力として民間投資の重要性を認めているが,現状として,エチオピアやアフリカ諸国に対する日本企業の投資は,他国と比べて進んでいないように見受けられる。日本政府は,エチオピアを含めアフリカへの民間投資を促すため,どのような計画を有しており,どのような展望を持っているのか。また,次回のTICAD7ではどのような成果が見込まれるのか。
【河野外務大臣】人口増や天然資源,高い経済成長率といった点から,日本ではアフリカのポテンシャルに注目が集まっており,投資,ビジネス面でのアフリカへの関心が急速に高まっています。この中でも,エチオピアは,安価で豊富な労働力,安い電力料金等を背景に,日本企業から製造拠点として注目を集めています。
近年のTICADプロセスでは,日アフリカの双方から,日アフリカビジネス関係の促進について大きな期待が表明されています。こうした状況に鑑み,日本政府は,アフリカとの間の貿易投資促進を目的として,日本の官民連携を強化するためのプラットフォームの設置を検討しています。
TICAD7においても,全体会合の一つのセッションを官民ビジネス対話として,日本の民間企業とアフリカの首脳の間で,直接,ビジネス環境改善や投資政策等に関する要望や意見について議論してもらうことを検討中であり,多くのビジネス関連のサイドイベントも計画されています。
日本政府はこのようにTICADプロセスを通じ,日本企業のアフリカ進出を促進していく考えでありますが,アフリカにおいては,不透明な行政手続,ローカルコンテンツ要求や外貨送金規制等の外資への各種規制,汚職や模倣品の問題等,ビジネスを制約する問題が依然として存在していることも事実です。更に,大規模な民間投資を受け入れるための基礎的インフラの不足という課題もあります。
日本企業の投資を促進するためには,このような問題や課題を解決していく必要があります。日本としては,ODA等のツールを活用し,アフリカの取組に対して日本らしい支援をしていく考えです。エチオピアでは,製造業の発展の鍵となる生産性の向上を支援するため,日本の「カイゼン精神」を広く普及するエチオピアカイゼン機構(EKI)への支援などを実施しています。
- ヘラルド紙(エチオピア)による河野外務大臣書面インタビュー掲載記事(英語(PDF)
/アムハラ語(PDF)
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