寄稿・インタビュー

(2019年4月15日付)

「日本の外務大臣,対北朝鮮制裁の一層厳格な適用を求める
-制裁の抜け穴には「瀬取り」も含まれる,と大臣は述べる-」

平成31年4月22日

 日本の外務大臣は本紙によるインタビューにおいて,北朝鮮に対する制裁は抜け穴だらけであり,国際社会による厳格な取締りが必要だと述べた。

 河野太郎大臣は,北朝鮮は「瀬取り」や海外の北朝鮮人労働者からの送金,サイバー攻撃による仮想通貨の盗取を通じて制裁逃れを継続しているとした。

 河野大臣は,「石油製品を北朝鮮に届け,北朝鮮の石炭を他国に運ぶ「瀬取り」が頻繁に行われている」「北朝鮮の船舶が「瀬取り」に関与し,また,複数の国が間接的もしくは知らないうちにこれに加担している」と述べた。

 河野大臣の発言は,北朝鮮の核兵器廃棄に向けた米朝交渉の停滞を受け,北朝鮮への経済的圧力の強化を図りたい日本政府の意向を反映したものだ。

 2018年初頭以降,日本政府は,国際水域において,少なくとも12件の北朝鮮のタンカーによる他の船舶への横付けの現場を確認している。船の大きさに鑑みて,移し替えた積み荷は制裁の上限を大幅に超えると見られる。

 確実性は劣るものの,日本は他にも「瀬取り」の疑いのある事例を多数発見していると日本政府関係者は述べている。多くが船名を偽装している疑いがあるため,日本は制裁逃れを行った全ての船を特定してはいない。米国は先日,制裁違反の疑いがある中国の船舶会社2社の資産を凍結した。

 河野大臣は「『瀬取り』を防ぐため,東シナ海において国際的な作戦が展開されている」「我々は中国に情報共有すると共に,同国からの情報提供も求めており,こうしたやり取りを通じ,中国がこの問題に対する取組を強化することを期待している」と述べた。

 また河野大臣は,ハノイで開催された米朝首脳会談は,トランプ大統領が非核化に関し北朝鮮に譲歩するつもりはないことを示したと指摘し,制裁を解除する唯一の方法は「全ての大量破壊兵器と全ての射程のミサイルを廃棄するという正しい決断を下すことだ」と述べた。

 北朝鮮の国営通信社である朝鮮中央通信は,金正恩委員長が先週,制裁を課す相手に「深刻な打撃を与える」と発言したと報じている。

 2017年の就任以来,流暢な英語と非常に活発な外国訪問で歴代の外務大臣とは一線を画す河野大臣にとって,朝鮮半島との関係は頭痛の種になっている。

 1965年の日韓請求権協定で請求権は「完全かつ最終的に解決された」にも拘わらず,昨年韓国の大法院が戦時中の労働者への賠償を日本企業に命じて以来,日韓関係は急速に悪化している。

 河野大臣は「この判決に衝撃を受けた。これは予期されていなかった。日本は1960年代に韓国の当時の政府予算を上回る規模の経済支援を提供し,韓国はその資金で全ての請求に対応することになっていた。そのため,今回の判決が認められたことに大変な衝撃を受けた」と述べた。

 韓国大法院は,民間人の精神的苦痛に関する損害賠償請求権は1965年の日韓請求権協定の適用対象に含まれないとした。日本はこうした元労働者の人々を「元民間労働者」と呼んでおり,これら労働者の中には職を得るため自発的に日本に渡航した者が含まれていると指摘している。

 河野大臣は,この問題につき,韓国政府に協議を呼びかけている。河野大臣によると,日本は国際司法裁判所へ提訴する選択肢も排除しない構えだが,韓国が今回の判決を執行し「日本企業が実質的な損害」を被らない限り,行動は起こさないという。


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