寄稿・インタビュー
ABC紙(パラグアイ)による安倍総理大臣書面インタビュー
(2018年12月2日付)
「日本人として,パラグアイの日系社会を誇りに思う」
日本の安倍晋三総理は本日パラグアイを訪問する。これは,2019年に外交関係樹立100周年を迎える日・パラグアイ関係における画期的な出来事となる歴史的訪問である。アブド・ベニテス大統領により大統領官邸に迎えられる日本の総理大臣は,本紙のインタビューに対し,パラグアイにおける日系社会を誇りに思うと語った。
【問】過去99年の間に築き上げてきた日本とパラグアイの二国間関係をどう評価し,二国間関係の将来にどのような展望を有しているか。日本が日・パラグアイ関係において重視する分野は何か。
【安倍総理大臣】Mba´éichapa. Che réra Shinzo Abe.(注:パラグアイの公用語であるグアラニー語で「こんにちは,安倍晋三です。」)今回,日本の内閣総理大臣として初めてパラグアイを訪問できることを嬉しく思います。今回の訪問では,アブド・ベニテス大統領と首脳会談を行います。今回の訪問を,日本とパラグアイとの歴史的な友好関係を更に強化する弾みを与えたいと考えています。
日本とパラグアイは,地理的には遠く離れていますが,自由,民主主義,人権,法の支配といった普遍的価値を共有する重要なパートナーであり,日系人を通じて心と心の絆で固く結ばれています。
経済分野では,近年,パラグアイの堅調な経済成長とパラグアイ政府の開放的な経済政策の下,進出日系企業は,ここ5年で2倍以上に増えました。パラグアイに進出する日系企業は,雇用の創出や技術移転を通じて,パラグアイ国民の生活向上に貢献しています。
経済協力分野においても,日本は,長年,主要なODA供与国の一つとして,パラグアイの経済・社会の発展に貢献してきました。1988年に日本の支援によって建設された「パラグアイ・日本・人造りセンター」では一年を通じて各種文化行事が開催されており,アスンシオン市民にとっての憩いの場になっています。
これまで日本がパラグアイに対して行ってきた無償・有償資金協力,技術協力等の成果が有効活用されることを期待します。日本は今後もパラグアイに対して,包摂的な社会の実現及び持続可能な経済開発を重点分野とした支援を継続したいと思います。
パラグアイと言えば,日本ではサッカー強豪国として知られています。2010年ワールドカップ南アフリカ大会決勝トーナメントで,両国はベスト8を掛けて闘いましたが,日本は惜しくもPK戦で敗れました。来年のコパ・アメリカでは再び両国が対戦することを楽しみにしています。
明年,日本とパラグアイは外交関係樹立100周年という記念すべき節目の年を迎えます。この慶賀の年に,次の100年を見据え,政治,経済,文化,国民交流など様々な分野における両国の絆を更に強化すべく,パラグアイ政府と共に努力していきます。
【問】パラグアイ国民,特に当国に住む日系コミュニティーへのメッセージいかん。
【安倍総理大臣】パラグアイが1世紀にわたり,日本人移住者を温かく迎えてくださったことに,この機会に改めて感謝申し上げます。
日本人のパラグアイ移住は1936年に始まり,今では,約1万人の日系人の方々がパラグアイに暮らしています。2016年には移住80周年を迎えました。その際には眞子内親王がパラグアイを御訪問され,日系人をはじめ多くのパラグアイ国民の皆様に,全国で盛大に歓迎して頂いたことを大変嬉しく思います。
今日,日系人の方々は,両国関係の「架け橋」として重要な役割を担っています。特に,農業分野におけるパラグアイの経済発展への貢献は顕著です。例えば,現在,パラグアイは世界有数の大豆輸出国ですが,それは日系人の方々が大豆栽培方法を改良し,パラグアイで普及させたからです。日系社会が今日のパラグアイの発展に貢献し,パラグアイで高く評価されていることを,日本人として誇りに思います。
日本とパラグアイは,地理的には遠く離れていますが,日系人の方々の存在を通じて,心と心の絆で固く結ばれています。南米有数の親日国であるパラグアイの国民の皆様にとっても,今回の私の訪問が弾みとなって,日本を更に身近に感じていただけるよう,また,日系人の方々に日本を一層誇りに思っていただけるよう,アブド・ベニテス大統領と共に手を携え,あらゆる分野で関係を発展させていきたいと思います。