寄稿・インタビュー

フィナンシャル・タイムズ紙(英国)への安倍総理大臣寄稿

(2018年9月24日)

「安倍晋三:地球を守るため,日本と共に今行動を」

-未曽有の豪雨,酷暑,土砂崩れ,ハリケーンは,残された時間がなくなってきていることを示す-

平成30年9月25日

英語版 (English)

 この夏,日本の西部の人々は,未曾有の豪雨と土砂崩れに襲われた。200人を超える命が奪われ,数十万人の生活が壊された。同時に,日本全土が前例のない酷暑に襲われ,熱中症が約160人の命を奪った。酷暑は欧米でも広く生じ,ハリケーンや台風が米国やフィリピンを襲った。

 温暖化は,二酸化炭素を増大させて海洋を酸性化し,その自浄機能を奪っている。加えて,近年はプラスティックごみによる海洋の汚染がひどく,海洋の生態系のみならず人の健康も害しかねない状況。

 世界は,これまでも気候変動対策をまとめ,将来を見た長期的目標の達成を目指してきている。2015年にはパリで中国,インドを含む主要経済大国も参加した条約がまとまった。私自身,翌年の伊勢志摩G7サミットでさらに踏み込み,G7は長期戦略を策定することにコミットした。

 気候変動問題は,先進国・途上国を通じて,高齢者にとっても,子供たちにとっても,自らの命に関わり得るものだ。この問題は,我々の想定を上回って深刻化している。我々は強固な行動をとらなければならない。それも迅速に。

 進むべき道は明らかだ。地球の緑と海洋の青の双方を守らなければならない。我々の目標を最新の科学的知見から学んだものとする。IPCCの科学者の努力や知見からより多くを学び,世界全体が対策をとることが必要である。

 すべての国が当事者として切迫感をもって取り組むこと。一部の国は温室効果ガスの排出を今でも増大させ,IEAによれば年間20億トン以上排出している国もある。すべての国が対策を実行しなければならない。そして,そうした対策を実施しようとする途上国の活動のために,先進国もしっかり支援していくべきである。

 各国政府が長期的戦略の下に,新たな成長の源泉となるイノベーションを促し,新たなアイデアを取り込んでいく。あらゆる可能性を排除することなく追求すべきだ。日本では例えば,超大容量蓄電池などの技術の確立,また,エネルギー自動制御システムによる分散・デジタル化,さらには水素社会の実現などを目指している。各国は,将来を見据えた技術の開発や普及で企業の競争力を評価すべきである。そのことが企業に長期的視点に立って投資することを促す。

 民間においてもすでに機運が高まりを見せている。ESG投資やグリーンボンド発行に取り組む企業が急増しており,日本のGPIFはその好例だ。投資家は今や企業に対して,環境問題を予測し,それを踏まえた事業リスクやビジネス機会について情報を開示することを求めている。

 インフラを,温室効果ガス排出節約型に変革する。日本の新幹線のネットワークは,交通渋滞を防ぎ,交通全体の燃費効率を上げている。日本は,2050年までに自動車一台あたりの温室効果ガス排出量を8割削減し,Well-to-Wheelベースで排出量をゼロにする目標を掲げた。

 経済成長の確保と化石燃料の削減は,共に重要な課題だ。それは再生可能エネルギーのコスト削減と再生可能エネルギーの信頼性向上を意味する。日本では,この4年間で再エネ発電量が約2.5倍に増えた。また,世界初の水素閣僚会議を日本で開催する。また,安全を前提にした原子力発電,メタンやHFCの排出抑制も必要だ。

 多量の温室効果ガスを排出する製造業が製法を革新する。各国は,多量の温室効果ガスを排出するのみならず,市場を乱す鉄鋼の過剰生産を止めるべきだ。

 そして,データ処理,通信分野の発展を促し,イノベーション・サイクルを加速させる。エネルギー転換やシェアリング・エコノミーへの投資は,経済成長を確実なものとし,温室効果ガスの排出を大幅に削減する。

 気候変動,海洋汚染及び防災はSDGsの実現に重要な柱でもある。来年,日本はG20議長国を務め,環境と経済成長の好循環を加速させることに注力する。日本はTICADを開催し,アフリカの国々に対する協力を進めていく。他の国々にも,この困難な課題への取組への参加を求めたい。


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