寄稿・インタビュー

タイン・ニエン紙(ベトナム)による河野大臣書面インタビュー

(2018年9月11日付)

「ベトナムと日本は戦略的利益を共有」

平成30年9月12日

 河野太郎外務大臣は,9月11日から13日にかけてベトナムを訪問するに際し,タイン・ニエン紙による独占インタビューを受けた。

【問】ハノイにおけるASEAN世界経済フォーラムへの期待いかん。ASEAN経済のインダストリー4.0(第4次産業革命)の課題と可能性いかん。また,技術革新の時代におけるASEANの統合において,日本はどのような役割を果たせるか。

【河野外務大臣】日越外交関係樹立45周年の節目となる本年,ベトナムを再訪できることを喜ばしく思います。私は,昨年ダナンでのAPEC閣僚会議に出席するため,約25年振りにベトナムを訪問しましたが,この間にベトナムが飛躍的に発展し,いまや国際社会において確固たる地位を築いていることに感嘆しました。本年,ベトナムがASEAN世界経済フォーラムを開催することは時宜に適ったものと思います。
 このフォーラムには,今回は,初めて外務大臣という立場で参加する予定です。実り多き議論になることを楽しみにしています。ASEANは世界経済の成長センターです。デジタル経済と第4次産業革命の到来を成長のエンジンとしなければなりません。
 そのような観点から,日本はASEAN議長国のシンガポールが打ち出した「デジタル化に対応し,成長の機会とする」とのコンセプトに沿った形で,「日ASEAN第4次産業革命イニシアティブ」を力強く推進しています。これは,ASEAN各国の(1)デジタル経済に対応した「産業の高度化」,(2)中小企業を始めとする「幅広い主体への裨益」,(3)新たな時代に対応した「ルールの導入・実施の促進」の3つを柱にしています。日本としては,このイニシアティブの下,技術革新の時代の到来を日ASEAN双方の発展につなげていきます。

【問】太平洋地域の経済にとって最近の最も重要な成果の一つは,CPTPP(TPP11)である。ASEANと太平洋地域にとってのCPTPPの未来及び加盟国拡大の可能性に関する河野大臣の見解いかん。

【河野外務大臣】TPP11は,21世紀型の新たな共通ルールをASEANとアジア太平洋地域に作り上げ,自由で公正な「一つの経済圏」を構築する試みです。同協定により,人口約5億人(世界の約13%),GDP約10兆ドル(世界の約15%),貿易総額約5兆ドルという巨大市場の形成が期待されます。
 日本,メキシコ及びシンガポールは,それぞれ国内手続きを終えたところであり,来年の早期の発効に向け,ベトナムを始めとする各国においても速やかに国内手続が完了することを期待しています。
 TPP11は自由で開かれた枠組みであり,新たな国・地域の加入を通じて,21世紀型の新たなルールを広めていくことが,参加国共通の思いです。その意味で,様々な国・地域がTPPへの参加に関心を示していることを歓迎します。
 日本はベトナムと協力し,まずはTPP11の早期発効に全力を挙げていきます。同時に,発効後のTPP拡大に向け,引き続き関心国・地域に必要な情報提供を行っていきます。
 世界に保護主義が広がる中,21世紀型の貿易・投資ルールの基礎となるTPP11の実現とその拡大を主導することで,自由で公正な市場を,ASEANを含むアジア太平洋地域を始め,世界に広げていきたいと考えます。

【問】自由で開かれたインド太平洋地域の確立に向けては安全保障上の多くの懸念があるが,その中の一つは,南シナ海を始めとする海洋における紛争である。自由で開かれた地域を確立するために,この問題に対し,日本はどのような立場をとり,いかなる政策を追求していく考えか。

【河野外務大臣】法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序は,国際社会の安定と繁栄の礎です。日本は,ASEANなどのパートナーとともにインド太平洋を自由で開かれた「国際公共財」とすることにより,地域全体の平和と繁栄を確保していく考えです。
 この観点から,日本は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進していきます。具体的には,(1)航行の自由,法の支配,自由貿易などの普及・定着,(2)質の高いインフラ整備等を通じた連結性の強化などによる経済的繁栄の追求,(3)海上法執行能力の構築支援,防災,不拡散等を含む平和と安定のための取組を進めていきます。
 他方,南シナ海においては,大規模かつ急速な埋立て,拠点構築及びその軍事目的の利用等,一方的に現状を変更し緊張を高める行為が見られます。このような行為は,航行の自由等を損ないかねないものでもあり,日本を含む国際社会共通の懸念事項です。日本としては,一貫して海における法の支配の貫徹を支持してきており,南シナ海をめぐる問題の全ての当事国が,国際法に基づく紛争の平和的な解決に向け努力することの重要性を訴えていきます。また,ベトナムを始めとする地域の沿岸国に対する能力構築支援等,地域の安定に資する活動に引き続き積極的に取り組んでいきます。

【問】CPTPP交渉の成功は,日越協力が地域の主要問題の解決に貢献できることを示している。このような日越協力関係を,地域の他の課題の解決にいかに活用することができると考えるか。今後の日越二国間関係への河野大臣の期待いかん。

【河野外務大臣】TPP11の交渉過程で日本とベトナムが緊密に連携できたことは,両国間の経済面のみならず,外交面でも大きな成果でした。
 保護主義の台頭や地域の安全保障環境の変化など,国際情勢が複雑に変動する中,日本とベトナムは,自由で公正な貿易体制,法の支配に基づくインド太平洋の自由で開かれた海洋秩序を共に支え,発展させるパートナーとして連携を深めています。また,昨年のベトナムAPECでも議論したとおり,持続可能で包摂的な成長の実現に向けても両国で連携していきたいと考えています。
 本年8月から,ベトナムは3年間のASEAN対日調整国を務め,また,2020年にはASEAN議長国を務めます。戦略的利益を共有するベトナムと日本が連携を深め,法の支配や航行の自由の普及・定着,地域の連結性強化や豊富な生物多様性や自然災害への強靱性を有する「グリーンメコン」の実現など,地域・国際社会の課題に共に取り組む大きな機会となります。
 今回のベトナム訪問では,ミン副首相兼外相と本年3回目となる外相会談を行い,二国間協力の促進のみならず,このような地域・国際課題に対する協力の具体化について率直な意見交換を行い,自由で開かれたインド太平洋の実現に貢献したいと考えています。


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