寄稿・インタビュー

クヴィリス・パリトラ誌(ジョージア)への河野外務大臣寄稿

(2018年9月3日付)

平成30年9月5日

 9月4日から5日にかけて,私は,日本の外務大臣として初めてジョージアを訪問します。日本とジョージアとの外交関係は,昨年,25周年を迎えました。これを受けて,ジョージアの地を自らの足で踏み,日本とジョージアの関係のさらなる進展に寄与することができるのは,私の光栄であり,喜びです。私は,自由・民主主義といった基本的価値を共有する日本とジョージアは一層しっかりと手を携える必要があると考えます。「積極的平和主義」を掲げる日本として,ジョージアがアフガニスタンへの「確固たる支援任務」などを通じて国際社会の平和に貢献していることを高く評価します。

 日本とジョージアの間には,両国を結びつけるいくつものエピソードがあります。特に日本の国技たる大相撲の,本年初場所で初優勝し,5月に大関に昇進した栃ノ心関(レヴァニ・ゴルカゼ氏)の活躍は日本国中にジョージアの名をとどろかせました。それだけではありません。日本とジョージアはラグビーの世界ランキングでそれぞれ11位及び13位。明年の日本でのラグビーワールドカップでの両国の健闘を祈念します。また,ジョージアワインの人気も次第に高まっています。2013年に日本の和食とともに,クヴェヴリを用いたジョージアの伝統的ワイン製法がユネスコ無形文化遺産に登録され,近年は日本のブドウ品種である「甲州」とコーカサス地方の品種「ビニフェラ」との優勢な遺伝的関係を認める研究もみられます。今回の訪問を契機に,このような二国間の繋がりを,両国に,また世界に広く伝えることができるのは,嬉しいかぎりです。

 コーカサス地域は,東西南北の世界を結びつける重要な「結節点」です。この地域の安定は,地域レベルの関心事に止まるものではなく,国際社会の平和と安全に直結します。コーカサス地域の西には欧州,東にはカスピ海を挟んだ対岸に中央アジアが広がっています。その先の先には日本を含む東アジアの一大経済圏があります。私は,アジアと欧州とをつなぐゲートウェイとして,重要な役割を担うコーカサス地域の自立的な発展のための協力を進めたいと考えます。

 コーカサス地域へのこれまでの日本の関与において常に心に置かれてきたこと,そして今後の日本の関与においても忘れてはならないことは,コーカサス地域の「自立的な発展」のための国造りを支援することです。このことは,19世紀半ばに開国した後,日本が「自立的な発展」を目指す中で学んできた,経験,教訓をコーカサス地域と共有していくことでもあります。日本としては,次の2つの柱を通じて,コーカサス地域の「自立的な発展」を支援していく考えです。

 1つ目の柱は,人造りです。国造りは,人造りから始まります。インフラも,制度も,人が使いこなすことで,初めてその機能を発揮します。日本が150年前に新しい国を造り始めたときに,最初に力を注いだことは,世界から最先端の知恵と技術を吸収し,これを日本に持ち帰ることができる人材の育成でした。地域としてのコーカサスに,日本の経験を共有していく上でも,情報を媒介する「人材」が必要です。
 また,日本の国造りにおいて,常に心がけてきたことの一つは,「法の支配」です。国造りの中で,公正さと,予見可能性を確保するのは,法律であり,その担い手たる優秀な法律家です。「法の支配」の担い手たる法律家の育成は,国造りの礎です。日本は,訪日招へい,人材交流などの様々な機会を活用し,コーカサス地域における若い法律家の育成を支援していきます。
 コーカサス地域において,地域と日本の架け橋となる知日派・親日派を育成していくことも重視しています。その観点から,日本語教育に対する支援等の取組を継続していきます。
 これに加えて,ジョージアに対して,水資源・防災,ガバナンス,運輸交通,資源エネルギー,経済政策,民間セクター開発,農業開発・農村開発分野,自然環境保全,都市・地域開発,環境管理といった分野での訪日研修を実施します。

 そして,これらの人材が目指すべきは,インフラやビジネス環境が整い,各国からの投資が集まる「更に魅力あるコーカサス」です。これが2つ目の柱です。
 これまで,重要性と潜在性に溢れるコーカサス地域に対して,日本は,その安定化,民主化,経済社会開発,市場経済化に協力してきました。例えば,ジョージアとの関係では,日本は2008年のジョージア支援国会合において円借款「東西ハイウェイ整備計画」を含む最大約2億ドルの支援を表明し,ヨーロッパとアジアを結ぶ重要な物流網を構成するジョージアの輸送力増強を図り,地域経済の発展に寄与すべく協力を進めてきました。
 こうした基礎的インフラ等への支援に加え,例えば,日本はコーカサス地域の各国との間で,投資協定を作るべく力を注いでいます。ジョージアとの投資協定交渉は着実な進捗を見ています。投資協定により,各国に投資する日本企業にとって公正かつ予見可能性がある制度枠組みが整備され,日本からの投資を呼び込む前提が整うことになります。また,このような枠組みを設けるだけでなく,その活用の知見についても,コーカサス地域の各国の専門家たちと共有したいと思います。日本は,コーカサス地域の各国に対して投資協定・投資仲裁分野における各国政府の職員教育活動を支援します。
 また,ビジネスの拡大は,人の往来の拡大に繋がります。コーカサス地域の各国の人々が,日本をより訪問しやすくするための手続の簡素化も進めます。
 これに加えて,最近では環境性能に優れた日本製次世代自動車96台を警察車両としてジョージア内務省に供与したほか,トビリシ国際空港及びイリア・チャフチャヴァゼ国立大学に太陽光発電システムを設置する等,再生可能エネルギーの分野における協力も進めています。

 

 日本は,これら二つの柱で,コーカサス地域の「自立的発展」を支援していきます。私たちのジョージアやコーカサス地域の各国との協力は,閉じられたものではありません。他の国,国際社会がコーカサス地域の各国と行う協力と有機的に結びつき,ポジティブな化学反応を起こしていくものと期待しています。今回の訪問が,日本とジョージア,さらには日本とコーカサス地域の各国との関係強化のための一つのマイルストーンであり,この先に続く輝かしい道程の第一歩となることを確信しております。


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