寄稿・インタビュー

ストレーツ・タイムズ紙(シンガポール)による河野外務大臣インタビュー

(2018年7月27日付)

平成30年7月31日

記事(1)「河野外務大臣:ASEANは自由で開かれたインド太平洋戦略の中心」

 ASEANは,海洋の法の支配及びインド洋・太平洋地域における質の高いインフラ整備を促進することを目指す日本の自由で開かれたインド太平洋戦略の中心である,と河野太郎外務大臣は語った。

 昨日(7月26日),河野外務大臣は,ASEAN及びASEANのパートナー国との外相会合のためのシンガポール訪問に先立ち,ストレーツ・タイムズの独占インタビューにおいて,この戦略は,中国の一帯一路構想や韓国の新南方政策と競争するためのものではないと述べた。

 河野外務大臣は,インド洋と太平洋の間を航行する船舶のハブであるシンガポールは,「非常に大きな役割」を果たすことができると指摘し,「高度な海運管理能力を有しているシンガポールとは,海賊対策や海上でのテロ対策等で協力できる」と語った。

 シンガポールはこれまでのところ,自由で開かれたインド太平洋戦略には完全には賛同しておらず,日本は支持を得るために積極的な働きかけを行っている。

 米国,インド,豪州もこのコンセプトに同調している。そして先月,バラクリシュナン星外相は,シャングリラ・ダイアログの席上,同戦略の中心にASEANがあるとする日米印豪の関係者の意向を歓迎したが,今後詳細につき協議し整理する必要があると述べた。

 昨日,河野外務大臣は,日本は,自由で開かれたインド太平洋の基本理念である海洋における法の支配を促進するために,ASEANと協力したいと述べた。同外務大臣は,「経済を成長させるため,質の高いインフラ整備を通じ,連結性を向上させたい」とし,「更には,海上の法執行,防災,海賊対処,テロ対策等における能力向上支援が重要であり,こうした分野においてもASEANと協力したい」と語った。

 日本の戦略は,一部の分析筋からは,中国の地域における影響力拡大の封じ込めの手段として見られている。しかし,河野外務大臣は,世界貿易と経済の基礎として,インド太平洋戦略が開かれた海上交通路の確保に寄与することにより,数ある地域のインフラ戦略と相互補完が可能となる,と語った。

 河野外務大臣は,一帯一路構想にとっても新南方政策にとっても開かれた海洋が重要となると指摘し,従って,インド太平洋戦略が,「すべての経済戦略の基礎」となる可能性があると語った。

 一部の専門家は,日本の自由で開かれたインド太平洋戦略は米国版とは本質的に異なると指摘している。日本の防衛政策の専門家であるロンドン大学キングズ・カレッジのアレッシオ・パタラーノ博士は,月曜日(23日),米国版は,明白に,中国の封じ込めを目的としており「能力構築支援がなく,法の支配の維持やインフラ整備という要素もない,完全に軍事的なものである」と語った。

 河野外務大臣は,5月の日中韓首脳会談時の李克強中国首相の訪日及び年内に予定される安倍総理の訪中に触れ,日中関係も着実に改善している,と述べた。同外務大臣は,「問題はあるものの,日中双方で問題に対処できると考えており,経済関係の進展のために取り組んでいる」と語った。

 河野外務大臣は,日星両国は,自由貿易に関し,世界最強の応援団であり,シンガポールは経済問題につき,日本にとって非常に重要な戦略的パートナーであると述べた。シンガポールは,2002年に日本が初めての二国間自由貿易協定を結んだ国であり,日星経済連携協定は第3回目の見直しを行っている。日星両国はメキシコと共にCPTPP,TPP-11として知られる,TPPの修正版を批准している。同協定は,更に三か国における国内手続が完了した60日後に発効する。

 河野外務大臣は,日星両国は,価値観と安全保障上の懸念を共有しており,第三国の発展を協力して支援していると述べた。

 外務大臣は,「二国間で協議しなければならないことはあるが,我々の経済・貿易関係は,二国間関係を超えるものである」とし,「シンガポールと日本は現在,アジアにおけるルール・メーキングを主導しており,二国間関係を更に特別なものにしたい」と語った。

記事(2)「河野外務外務大臣:日米にとり,貿易と安全保障は別々の問題」

 日本の河野太郎外務大臣は,貿易と安全保障は別々の問題であり,長年の同盟国である日米両国はこれらを混同することはない,と語った。

 昨日(26日),河野外務大臣は,「二つは別々の問題であり,これらを混同する者は日本政府の中にも米国政府の中にもいないだろう」とストレーツ・タイムズに語った。

 河野外務大臣は,二国間の貿易問題が貿易以外の二国間関係に不利な影響を及ぼすことへの懸念を払拭しつつ,「過去にも日米間に様々な貿易問題があったが,それが戦略的な日米同盟に影響を及ぼすことはなかった。したがって,我々は全く心配していない」と述べた。

 日本の自動車メーカーは,米商務省が国家安全保障を理由とした25%の関税上乗せを検討する等,ドナルド・トランプ大統領による保護主義政策の標的にされている。

 米国への輸出額が先月,17カ月ぶりに減少したことで,トランプ大統領による保護主義政策に対する懸念が日本の景況感を悪化させている。

 7月下旬にワシントンで予定されていた新たな日米閣僚級通商会合の第一回目会合は,8月に延期される可能性が高い。

 菅義偉官房長官は,先週土曜日,ブルームバーグに対し,米国は二国間の貿易協定を要求することが予想されるが,日本政府は抵抗を続けると語った。

 貿易につき,アジアの二大経済大国である中国と日本は,多国間貿易システムの重要性を訴える世界最大の声として,図らずも政治的同志となっている。両国は,16カ国から成るASEAN主導の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に参加している。また,中国と日本は,韓国を含む三カ国間自由貿易協定についても協議を行っている。昨日,河野外務大臣は「良い知らせもあるところ,早期合意に向け努力したい」,「アジア経済の上位二カ国を含む貿易協定は,アジア地域の経済にとって非常に大きな影響があるだろう」と語った。
 同外務大臣は,日本を訪れる中国と韓国からの観光客の増加にも触れ,その多くはリピーターであり,東京だけではなく他の地域も訪れていると指摘しつつ,「政府間でいかなる問題が発生しようとも,人々の交流は,前向きな関係を構築する上で不可欠である」と語った。

記事(3)「非核化が曖昧になる中,日本と北朝鮮の指導者による会談は未定」

 河野太郎外務大臣は,北朝鮮による非核化に関する誓約が曖昧になる中,シンガポールにおいて李容浩北朝鮮外相と会談する可能性があるという日本国内の見方を確認も否定もしなかった。

 河野外務大臣に対するインタビューは,北朝鮮が弾道ミサイルエンジン製造施設の解体を実施したとの報道があった数日後,そしてポンペオ米国務長官が米議会において北朝鮮は核物質の生産を続けていると証言した数時間後に実施された。

 河野外務大臣は,シンガポールを訪問し,ASEAN各国や地域の外相との会談を行う予定である。李外相もまた,ARFのためシンガポールを訪問する予定である。

 河野外務大臣は,長期にわたる拉致問題を解決するには,最終的には,日本と北朝鮮が腰を落ち着けて話し合わなければならないとしつつ,その会談がいつ行われるかについては「ノーコメント」とした。

 外交関係がない日本と北朝鮮は,この問題に関し膠着状態にある。日本は,拉致被害者12人が行方不明であるとしているが,北朝鮮は,内8人は死亡,他の4人については北朝鮮には入国していないと主張している。

 トランプ米大統領は,6月12日の金正恩委員長とのシンガポール首脳会談後,記者団に対し,金委員長から拉致問題に「取り組む」(Worked on)との約束を勝ち取ったと述べた。しかし,先月,日本の当局が北朝鮮と接触した際,北朝鮮は,拉致被害者に関する新しい情報をほとんど提供しなかった,と共同通信は報じた。日本経済新聞は,北朝鮮は,拉致問題は既に解決済みであるということを日本が受け入れることを求めていると報じている。

 一時期,朝鮮半島の急速な緊張緩和の蚊帳の外に置かれる懸念があったことから,安倍総理と金委員長による首脳会談の構想が暫定的に持ち上がっていた。先月,日本のメディアは,最短で9月にも会談が開催される可能性があると報じていた。

 しかしながら,河野外務大臣は,この会談に必要な前提条件について問われると,「これまでもお話しているように,諸懸案を解決した上で,二国間関係を正常化させる必要がある。関係正常化の暁には,北朝鮮に経済協力を行う用意がある。この点において日本の立場は変わっていない」と述べた。

 とはいえ,河野外相は,トランプ大統領と金委員長がシンガポールで署名した宣言にふれ,北朝鮮の非核化の見通しについて慎重ながら楽観的な見方を示した。「遅かれ早かれ,両国は非核化のプロセスについて合意するだろう。国際社会はこの動きを支援する必要がある」とし,「東アジアの状況は良くなってきていると考える。また,北朝鮮の諸問題に対処し,北朝鮮との関係を正常化できれば,北朝鮮経済が日本の支援により発展することを期待する」と語った。


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