寄稿・インタビュー

(2018年5月24日付)

「河野外務大臣:日本とメキシコは『真の友人』」

平成30年5月28日

 日本の河野太郎外務大臣はエル・ウニベルサル紙に対し,日本とメキシコの間には長い通商と友好の歴史があり,昨年9月19日の地震のような困難な時を経て関係は一層強化されてきたと述べた。また,この関係には「苦難の時の友は真の友」の精神があると付言した。

【問】外交関係樹立から130年が経つ日墨関係を,今後如何にして一層強化していくのか。

【河野外務大臣】日本とメキシコは400年以上に亘る交流の歴史があり,1888年に日墨修好通商航海条約が締結されてから130年の間,両国は幅広い分野で友好関係を築き上げてきました。この歴史の中で,現在約2万人を擁する日系社会は,昨2017年に移住120周年を迎えました。両国の架け橋となってきた日系社会に敬意を表します。
 昨年のメキシコ震災の際,日本は即座に国際緊急援助隊を派遣するなど,両国は,困難な時こそ相互に手を差し伸べ合う真の友人として共に発展してきました。「苦難の時の友は真の友」です。
 日本とメキシコは自由,民主主義,人権,法の支配といった基本的価値を共有する戦略的グローバルパートナーです。両国はアジア太平洋地域においてハイ・スタンダードな貿易・投資の枠組を構築するため,TPPの推進を含めた連携を進めており,国際場裡でも,地球規模の諸課題への対応において協力しています。
 今後とも,基本的価値に基づいた国際秩序を維持・強化していく目的で,メキシコとさらに連携していきます。このため,両国のハイレベル対話をさらに活発化させ,認識共有・連携促進に関する意見交換を深めていきます。
 政府間の協力に加え,日本とメキシコの間では活発な人材交流があります。46年に亘る日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画には4,700人近くが参加し,両国関係,日・中南米の交流を支えています。また,昨年広島で開催された第3回日墨学長会議には,両国から多くの大学が参加し交流を深めました。
 今後ともこうした人的交流を進めていくことにより,より多層的に二国間関係を強化していくことが重要と考えます。

【問】トランプ政権の発足に伴う米国の通商関係の方針変更もあり,中国が中南米に対し接近しようとしている。日本も通商分野で中南米,なかんずくメキシコに対する関係を強化しようとする関心はあるか。また,日墨の関係強化に当たり,投資や協力の有望分野は何か。

【河野外務大臣】世界有数の資源を擁し,人口6億人,GDP約5.1兆ドルの市場をもつ中南米との経済面での関係強化は極めて重要であり,日本は中南米との間で経済的枠組みの構築・強化を進めています。
具体的にはTPP11協定を早期に発効させ,日本は「自由貿易の旗振り役」として,中南米と共に自由貿易体制を強化していきたく,参加国であるメキシコとも緊密に連携を進めています。その意味で,メキシコの上院議会が4月にTPP11協定を承認したことを高く評価します。また,中南米のTPP参加国であるメキシコ,チリ,ペルーと日本は二国間の経済連携協定(EPA)を締結しており,コロンビアともEPAを交渉中です。更に,太平洋同盟等サブリージョンの枠組を通じても,中南米との経済関係の強化を図りたいと考えています。
 日墨EPAが2005年に発効して以降,日・メキシコ経済関係は飛躍的に拡大し,今や貿易総額は2倍以上,約1,200社の企業がメキシコに進出しています。メキシコは日本の企業が近年最も増えている国の一つです。
 日本の自動車産業にとってメキシコは重要な生産・輸出拠点であり,今後も日本企業の更なる進出が見込まれます。さらに,インフラやエネルギー分野での投資にも関心を有しています。
 また,現在交渉中のNAFTA再交渉は,メキシコに進出している日本企業に大きな影響を与える可能性があり,その動向に大きな関心を有しています。

【問】貴国として,今後行われうる米朝首脳会談に期待することは何か。朝鮮半島の非核化という目標は,達成可能と考えるか。

【河野外務大臣】この歴史的な米朝首脳会談が核・ミサイル,そして何よりも重要な拉致問題の包括的な解決に向けて前進していく機会になることを強く期待しています。
 米朝首脳会談に向け,日本の考えをしっかりと米国に伝えながら,米国と共に準備を進めていきます。米朝首脳会談の成功,そして,北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的な解決に向け,日本としても全力を尽くしていく決意です。
 南北首脳会談において,金委員長による北朝鮮の非核化に向けた意思を文書上で確認しました。さらに,北朝鮮は,北朝鮮北部の核実験場を5月23日から25日に廃棄する旨発表しました。こうした一連の動きを,拉致,核・ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けた前向きな動きとして歓迎します。
 その一方で,北朝鮮は一方的な核廃棄の強要を受け入れられないとしつつ,米朝首脳会議の前提条件として,米国の「敵視政策」の終了等を求めています。北朝鮮の動向をしっかりと注視する必要があります。
 北朝鮮から,全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法での廃棄に向けた具体的な行動を引き出すことが重要です。
 この観点から,駐墨北朝鮮大使の追放処分等,メキシコのこれまでの取組を多としています。引き続き,北朝鮮に政策を変更させるため,日米,日米韓で緊密に連携し,中国,ロシアを含む国際社会とも協力しながら,日本としてもしっかりと役割を果たしていきます。


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