寄稿・インタビュー

ズィアルル・フィナンチアール紙(ルーマニア)による安倍総理大臣インタビュー

(2018年1月16日付)

「安倍晋三日本国総理大臣:
欧州の地理的要衝に位置し,EU加盟を経て順調に経済成長を続けるルーマニアとの関係は,
日本にとって益々意義深いものになってきている」

平成30年1月17日

【問】初の日本の総理のルーマニア訪問であるが,ルーマニアの政治,経済及び投資面についての日本の関心いかん。

【安倍総理大臣】日本の内閣総理大臣として初めてルーマニアを訪問できることを嬉しく思います。私自身としては,35年前の8月にも,父である安倍晋太郎外務大臣の秘書官としてルーマニアを訪問しています。前回の訪問の際には,ブカレストだけでなく,黒海沿岸の美しいリゾート地ネプチューンを訪れました。夏のルーマニアの活気が今も記憶に残っています。
 ルーマニアは,民主主義や法の支配を始めとする基本的価値を共有する重要なパートナーであり,両国関係は順調に進展しています。体制転換後,日本は経済協力を通してルーマニアの発展を支援してきました。欧州の地理的要衝に位置し,EU加盟を経て順調に経済成長を続けるルーマニアとの関係は,日本にとって益々意義深いものになってきています。
 両国の協力強化の柱は,何と言っても経済です。既に多くの日本企業が進出しており,日本はアジア最大の投資国として,4万人近くの雇用を創出しています。ルーマニアは優秀で豊富な労働力とともに,IT基盤も整っています。ルーマニア経済の潜在性に鑑みれば,これまで以上に経済関係を緊密化することができると考えています。
 今回の訪問には,インフラ整備に貢献する企業や多くの雇用を生み出している自動車関連産業など,ルーマニア経済の発展に情熱と意志を持つ日本企業が同行しています。また,本年5月には,インベスト・ルーマニアの訪日ミッション派遣を予定していると伺っています。また,昨年末,日EU・EPAの交渉が妥結したことは,両国の更なる経済交流にとっても追い風となるに違いありません。
 投資を呼び込むにあたり,交通インフラの整備は極めて重要です。ルーマニアに対する最後の円借款案件「ブカレスト国際空港アクセス鉄道建設計画」を着実に進めます。大型商業施設の近くに建設予定の駅は,「東京駅」と名付けられることが決まっていると伺っています。ルーマニアの方々には,是非「東京駅」の近くでショッピングを楽しみ,日本を身近に感じていただければと思います。
 経済を中心に上昇気流に乗る両国関係を更に押し上げるべく,人的交流も活発化させていきます。今般,ルーマニア国民に対するビザ免除措置の試行期間を本年末で終了し,2019年からの本格的運用を決定しました。今回の私の訪問を契機に,政治・経済のみならず幅広い分野で両国の関係を飛躍させていきたいと考えています。

【問】現在,大国間の緊張,政治・金融危機,先進国におけるナショナリズムの台頭が見られる中,今後,日本は,こうした国際情勢にどう対処していくのか。

【安倍総理大臣】世界各地では,保護主義や内向きの傾向が強まり,法の支配に基づく国際秩序は様々な形で深刻な挑戦を受けています。
 こうした中,今日,我が国を取り巻く安全保障環境は,戦後,最も厳しいと言っても過言ではありません。特に,北朝鮮は,国際ルールを踏みにじって核・弾道ミサイルを開発しています。そして,弾道ミサイルの射程はルーマニアにも届き得るものであり,これまでにない重大かつ差し迫った脅威となっています。
 北朝鮮は過去に,94年の米朝合意,2005年の六者共同声明の二度,核の放棄を約束しながら,結局,それを反故にし,核・ミサイル開発の時間稼ぎに使ってきました。このことを踏まえれば,北朝鮮とは対話のための対話では意味がありません。
 北朝鮮は完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法で核・ミサイルを放棄するとのコミットメントと具体的な行動を示さなければなりません。
 北朝鮮に政策を変えさせるため,国際社会が一致結束して北朝鮮への圧力を最大限まで高め,北朝鮮の方から対話を求めてくる状況を作っていく必要があります。
 北朝鮮が繰り返す挑発的な言動を受け,「北朝鮮が暴発するかもしれない」という議論があることは承知しています。しかし,そう思わせることは,いわば北朝鮮の交渉戦術の一つでもあり,これを恐れることは,北朝鮮の交渉力を高める結果になります。
 我々は,北朝鮮の脅しに屈することなく,状況をしっかりと分析し,冷静に対応していく必要があります。
 この観点から,累次にわたり国連制裁決議が成立し,EUはこれに加えて,昨年(2017年)10月,北朝鮮に対する独自制裁を決定しました。欧州,そして,ルーマニアとも緊密に連携しながら,国際社会全体で北朝鮮への圧力を高め,北朝鮮の核・ミサイル,そして我が国にとって何よりも重要な拉致問題の解決に向けて全力を尽くしていきます。国連では,累次の安保理決議を経て対北制裁を強化してきており,国連加盟国であるルーマニアにも着実な履行を期待しています。
 経済面においては,公平かつ自由で開かれたルールに基づく経済圏を世界に拡大していくことが重要です。こうした中,欧州との関係では,先般,4年以上に及ぶ粘り強い交渉の末,日EU・EPA交渉が妥結に至りました。ルーマニアの経済力を含め,総人口6億人,世界のGDPの約3割を占める巨大な経済圏を創出する本EPAは,双方に多大な貿易・投資の機会をもたらします。日ルーマニア間においても,本EPAは貿易拡大だけでなく,日本企業のルーマニア進出や雇用創出を含む対ルーマニア投資をさらに後押しし,また,ルーマニア企業の日本での活躍の可能性をさらに拡大します。
 また,日本は世界の活力の中核であるインド太平洋地域を法の支配に基づく自由で開かれた「国際公共財」とし,この地域全体の平和と繁栄を確保することを目的とした「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進しています。欧州との連携を深める上で,この点も視野に入れたいと思います。この考え方に賛同してもらえる国であれば,いずれの国とも自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて協力することができると考えています。
 私は,外交を二国間の点と点という観点ではなく,地域の国々との関係も含めた面で捉え,地球儀を俯瞰する観点から積極的に推進しています。
 今後も,自由,民主主義,人権,法の支配といった普遍的価値を共有する国々と協力しながら,その外縁を広げ,法の支配,航行の自由,紛争の平和的解決といった基本原則を確固たるものとし,「積極的平和主義」の旗の下,世界の平和と繁栄に貢献していく考えです。


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