寄稿・インタビュー

(2018年1月14日付)

「安倍総理:EUとの合意は日本のブルガリアに対するビジネスと投資を促進する」

平成30年1月15日

 安倍総理は,本日から明日まで,二国間関係で初めてとなるブルガリアを訪問する。本14日,安倍総理はボリソフ・ブルガリア首相と会談を行い,日・ブルガリア間のビジネス関係や戦略的パートナーシップの拡大について協議する。また,安倍総理には,日本を代表する企業の関係者が同行する。

【問】貴総理はブルガリアを訪問される初の日本の首相であり,しかも両国が外交関係樹立80周年を迎える直前の訪問。ソフィアと東京の将来の展望いかん。

【安倍総理大臣】日本の内閣総理大臣として初めてブルガリアを訪問できることを嬉しく思います。実は,私自身としては,35年前にも父である安倍晋太郎外務大臣の秘書官としてブルガリアを訪れています。その際,日本の「ソフィアの秋」という小説を読んで行きましたが,実際のソフィアは小説以上に美しい町でした。また,人気力士だった琴欧洲の存在により,日本人はブルガリアに親しみを持っています。
 日本とブルガリアの交流は,100年以上前のブルガリア王国時代にさかのぼります。来る2019年は,交流開始110年,外交関係樹立80年,外交関係再開60年の「3つの周年」が重なる年となります。この意義深い年に向けて,幅広い分野で両国の協力関係を一層深めて行きたいと考えています。
 特に両国の経済関係には,まだまだ発展の余地があります。近年,ブルガリアへの投資に関心を寄せる日本企業が増加しています。今回の訪問には,世界的に活躍する商社,食品,自動車部品さらに情報通信業などから日本企業が同行している他,本年にはJETROによる経済ミッション派遣も予定しています。日EU・EPAが交渉妥結したことは,このような両国の経済的な交流を一層促進することになるでしょう。
 また,日本とブルガリアの友好関係は,人的交流抜きには語れません。ブルガリアを訪れた日本人は皆ブルガリアを好きになり,日本を訪れたブルガリア人は,皆,日本を好きになると言われています。
 人的交流の大きな柱の一つがスポーツ分野の交流です。2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会を契機として,日本の5都市が,ブルガリアのホストタウンに登録されました。既に山形県村山市では,ブルガリア新体操代表選手の事前合宿が実施され,市をあげてチームを受け入れるなど,心温まる交流が行われています。2020年を越えた末永い交流を,スポーツをはじめとした多様な分野で益々進展させていきます。
 今回の私の訪問を契機に,日本とブルガリアとの交流を更に発展させていく所存です。

【問】今回のブルガリア訪問は,ブルガリアがEU議長国を努める欧州の周遊の一環。日本外交は,北朝鮮問題のような諸課題の解決に関して,どれほど欧州を頼りとしているのか。また,現在日本が直面するその他の課題いかん。

【安倍総理大臣】欧州は,民主主義や法の支配などの基本的価値を共有する重要な戦略的パートナーであり,我が国は北朝鮮問題を始めとする国際社会における諸課題の解決に向け,欧州,そしてブルガリアとの連携を重視しています。
 今日,我が国を取り巻く安全保障環境は,戦後,最も厳しいと言っても過言ではありません。特に,北朝鮮は,国際ルールを踏みにじって核・弾道ミサイルを開発しています。そして,弾道ミサイルの射程はブルガリアにも届き得るものであり,これまでにない重大かつ差し迫った脅威となっています。
 北朝鮮は過去に,94年の米朝合意,2005年の六者共同声明の二度,核の放棄を約束しながら,結局,それを反故にし,核・ミサイル開発の時間稼ぎに使ってきました。このことを踏まえれば,北朝鮮とは対話のための対話では意味がありません。
 北朝鮮は完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法で核・ミサイルを放棄するとのコミットメントと具体的な行動を示さなければなりません。
 北朝鮮に政策を変えさせるため,国際社会が一致結束して北朝鮮への圧力を最大限まで高め,北朝鮮の方から対話を求めてくる状況を作っていく必要があります。
 北朝鮮が繰り返す挑発的な言動を受け,「北朝鮮が暴発するかもしれない」という議論があることは承知しています。しかし,そう思わせることは,いわば北朝鮮の交渉戦術の一つでもあり,これを恐れることは,北朝鮮の交渉力を高める結果になります。
 我々は,北朝鮮の脅しに屈することなく,状況をしっかりと分析し,冷静に対応していく必要があります。
 累次にわたり国連制裁決議が成立し,EUはこれに加えて,2017年10月,北朝鮮に対する独自制裁を決定しました。欧州,そして,ブルガリアとも緊密に連携しながら,国際社会全体で北朝鮮への圧力を高め,北朝鮮の核・ミサイル,そして我が国にとって何よりも重要な日本人拉致問題の解決に向けて全力を尽くしていきます。国連では,累次の安保理決議を経て対北制裁を強化してきており,国連加盟国であるブルガリアにも着実な履行を期待しています。
 欧州とは経済面での連携も,一層,重要です。昨年末に交渉妥結した日EU・EPAの早期の署名・発効を通じ自由貿易を力強く前進させていきたいと考えています。日ブルガリア間においても,本EPAは貿易拡大だけでなく,日本企業のブルガリア進出や雇用創出を含む対ブルガリア投資をさらに後押しし,また,ブルガリア企業の日本での活躍の可能性をさらに拡大します。
 我が国は強く結束した欧州を支持しています。これからの半年間EU議長国を務めるブルガリアとの緊密な連携は,より重要性を増していると考えます。
 また,日本としては,世界の活力の中核であるインド太平洋地域を法の支配に基づく自由で開かれた「国際公共財」とし,この地域全体の平和と繁栄を確保していくため,「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進しています。欧州との連携を深める上で,この点も視野に入れたいと思います。この考え方に賛同してもらえる国であれば,いずれの国とも自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて協力することができると考えています。
 今後も,重要な戦略的パートナーの欧州との連携を強め,国際社会の平和と安定に貢献していく考えです。


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