寄稿・インタビュー
ミャンマー・アリン紙、チェーモン紙及びグローバル・ニューライト・オブ・ミャンマー紙による
河野外務大臣インタビュー
(2018年1月13日付)
「日本,ミャンマーの平和構築を最大限支援」
【問】今次ミャンマー訪問の目的いかん。
【河野外務大臣】昨年12月,ティン・チョウ大統領が日本を訪問し,安倍総理大臣と会談した際,両首脳は,ミャンマーの国造りのための日本の支援策や,ラカイン州情勢等について率直に意見交換を行いました。
私の今次訪問の主な目的は,ミャンマーの民主的な国造りを全面的に支援することを改めて伝えるとともに,大統領訪日のフォローアップとして,これらの課題について,ミャンマー政府及び国軍のトップとの間で,具体的な施策について協議することです。
また,ティラワ経済特区を視察し,両国の官民協力の成功例を内外に発信することを通じて投資促進につなげたいほか,ミャンマーの平和と繁栄に向けた今後の日本の協力の在り方を考えていきたいと思います。
【問】日・ミャンマー二国間関係の展望いかん。
【河野外務大臣】日本は,「自由で開かれたインド太平洋戦略」の下,法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を維持・強化し,いずれの国にも分け隔てなく安定と繁栄をもたらす「国際公共財」とすることで,インド太平洋地域全体の平和と安定を確保することを目指しています。この戦略の下でのミャンマーとの協力を一層具体化するとともに,ミャンマー政府による民主主義の定着,和平プロセスの進展,経済発展のための取組を全面的に支援していく考えです。
ティラワ経済特区は,まさに日本とミャンマーの官民が連携してヤンゴンを起点に海外投資を呼び込み,経済成長の起爆剤となることで,インド太平洋の広域にわたる経済圏を創出し,ミャンマーと他の地域との連結性を高めていくための象徴的な案件です。私は,日本とミャンマーが協力してこの成功例を拡大し,ミャンマー及び地域経済全体の発展につなげていくことは,両国の国益に合致すると考えます。
また,ミャンマーにおける和平と国民和解の実現は,インド太平洋地域の安定と平和のために極めて重要です。私は,ミャンマー政府,国軍,少数民族武装勢力が全国停戦合意を実現し,和平プロセスを進展させることで,より多くの人々が平和の果実を実感することを強く期待しています。日本は,ミャンマーの国民の皆様が希求する平和の構築を最大限サポートしていきます。
【問】日本が表明しているミャンマーへの8千億円の支援に関し,具体的な支援内容いかん。
【河野外務大臣】日本政府は,2016年,ミャンマーにおける民主主義の定着,和平と国民和解,経済発展を支えるため,両国で合意した日本・ミャンマー協力プログラムに基づき,官民合わせて5年間で8,000億円規模の貢献を行うことを表明しました。そのうち経済発展に関して,ヤンゴン都市開発,運輸,電力分野を日本の協力の3本柱と位置付けています。
この3本柱の下で,2020年までにミャンマーの人々が生活の変化を実感できるよう支援を行うことを目指します。例を挙げますと,2020年9月までに,ヤンゴンとタウングーをつなぐ鉄道に,最高時速100キロで走る新車両を納入予定で,2023年のマンダレーまでの運行を目指します。これにより,ヤンゴンとタウングー間が現在の約7時間から,最短で約3時間半にまで短縮され,ヤンゴン・マンダレー間が最短約8時間で結ばれることになります。その結果,第1の商業都市ヤンゴンと第2の商業都市マンダレーを繋ぐ物流や人々の往来が円滑となり,ミャンマーの人々の生活向上,経済発展の加速を後押しすることが期待されます。
また,日本が進めるヤンゴン環状線整備計画により,2020年9月までにヤンゴンの鉄道に新車両が18両走り,2022年には1日あたりの運行本数が現在の約120本から約180本に増加し,ヤンゴン市内の大幅な渋滞解消に繋がると期待されます。これらの事業や,日本企業が実施している駅前開発事業を通じ,ミャンマー国民に新たな市民生活の姿を提示できると考えています。
その他の分野についても,ミャンマー政府と緊密に協議して,ミャンマーの国造りのための支援を継続していきます。
【問】日本の対ミャンマー農業開発支援内容いかん。
【河野外務大臣】農業はミャンマーの基幹産業です。ミャンマー政府も,農業の発展を経済政策の基軸の一つに掲げて重視しています。日本政府としても,ミャンマーの農業の生産性を向上させ,人口の6割を占める農民の生活向上を促進させると共に,ヤンゴンの発展を地方へと拡大させていくことを目指しています。
具体的には,ミャンマー政府が進めるマンダレー北西部のザガイン地域シュエボー地区を対象に農業所得向上計画を支援していきます。この支援には,灌漑施設や田畑の整備や,農場から市場までの輸送道路等の農業インフラ整備が含まれます。また合わせて,農業用水管理やモデル農家の支援などの技術協力も併せて実施する予定で,民間投資を呼び込みながら農業開発モデルを提示することを意図しています。
このミャンマー政府の計画が日本の支援によって成果を上げれば,他の地域へも拡大し,ミャンマーの地方の発展に大きく貢献できると考えています。
【問】ラカイン州情勢に関する評価いかん。また,今後の支援計画いかん。
【河野外務大臣】日本政府は,ラカイン州情勢について,ミャンマー政府及び国軍との直接の対話を継続してきました。日本政府は,ミャンマー政府による人権に配慮した形での治安回復が行われることを重視しています。また,アウン・サン・スー・チー国家最高顧問が設置した「ユニオン・エンタープライズ」の下で,(1)国連を含む人道支援アクセスの拡大,(2)安全で自発的な避難民の帰還と再定住,(3)アナン勧告の実施を通じた根本問題への対応の進捗を強く期待しています。
日本政府は,このようなミャンマー政府の取組を支える方針です。先月,安倍総理からティン・チョウ大統領に対し,ラカイン州での道路舗装,送電線整備,約15校の学校建設の支援を伝えました。また,今回の私の訪問にあたって,日本政府は,間近に迫っている帰還民の受入れ・再定住に特化した緊急支援として,帰還民が生活する上で必要な物資を社会福祉・救済復興省を通じて約300万ドル規模で供与することを決定しました。このほか,日本政府は,国際機関を通じて,ラカイン州の住民への緊急支援を行ってきており,今後も継続していきます。
また,ラカイン州では,以前から日本のNGOが活躍しています。ブリッジ・アジア・ジャパン(BAJ)は,技術訓練や技術訓練を通したコミュニティ・インフラ整備を,日本財団はBAJと連携して学校100校の建設等の支援活動を行ってきています。これらの活動は,ムスリムや仏教徒を含む様々なコミュニティからの若者や子供達が共に学び,相互理解を深める機会を提供するものです。私は,このような草の根の活動が更に広がっていくことを強く願います。
日本の支援は,ミャンマー政府及び国民の皆様による取組を前に進めることに貢献するものであると確信しています。
- ミャンマー・アリン紙、チェーモン紙及びグローバル・ニュー・ライト・オブ・ミャンマー紙(ミャンマー)による河野外務大臣インタビュー掲載記事
(ミャンマー・アリン紙(ミャンマー語)(PDF)/チェーモン紙掲載記事(ミャンマー語)(PDF)
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