寄稿・インタビュー

(2018年1月5日付)

「日本の『自由で開かれたインド太平洋戦略』は地域の利益
-河野太郎 日本国外務大臣 ~平和構築外交~」

平成30年1月5日
  • インド洋のハブとして益々発展しつつあるスリランカ
  • 第2次世界大戦後,日本を擁護する演説が記憶されるジャヤワルダナ元大統領
  • 1,700億ルピーを越える二国間の貿易額
  • 100名近くの日本の経済ミッションがスリランカを訪問

 日本の河野太郎外務大臣が昨夜,2日間の公式訪問日程でスリランカに到着した。日本の外務大臣がスリランカを訪問するのは15年ぶりとなる。河野大臣は,本日スリランカ大統領・首相・外務大臣と会談予定である。

【問】今回のスリランカ訪問の主な目的は何か。

【河野外務大臣】スリランカは,アジアと中東・アフリカを結ぶシーレーンの要衝に位置し,地政学的・戦略的に極めて重要であり,また,近年,安定した治安と高い経済成長を達成し,今後更なる発展が見込まれるポテンシャルの豊かな国でもある。このようなスリランカとの関係を更に強化するため,今般,2018年の最初の外国訪問先の1つとして,スリランカを選んだ。
 日本は,世界の活力の中核であるインド太平洋地域を法の支配に基づく自由で開かれた「国際公共財」とし,この地域の平和と繁栄を確保することを目的とした「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進している。そのような中,インド洋のハブとして益々発展しつつあるスリランカは極めて重要。共に海洋国家である日本とスリランカは,自由で開かれたインド太平洋から発展と繁栄を享受することができ,またこれを担っていく責務を有している。日本は引続き,港湾等の質の高いインフラ整備を通じた連結性強化や海洋の安全に係る協力などを通じて,スリランカと共に地域の平和と繁栄を促進していく。
 また,今回の訪問においては,医療分野や環境分野等における協力の強化や国民和解プロセスへの支援についても意見交換を行うほか,北朝鮮をはじめとする地域・国際情勢についても議論する予定。
 この訪問を機に両国間の要人往来を更に活発化させ,両国関係を一層深化させたい。

【問】現在の日・スリランカ二国間関係に関するお考えをお聞かせいただきたい。

【河野外務大臣】日本とスリランカの友好関係は,1951年のサンフランシスコ講和会議において,当時のジャヤワルダナ・セイロン財務大臣(後の大統領)が,日本の主権を擁護する演説を行ったことに始まる。戦後の日本の国際社会への復帰を後押しした,あの演説を日本国民は忘れていない。
 以来,両国は,友好と協力の道を歩んできた。これまでに合計1兆円を超す円借款,約2,000億円の無償資金協力,約800億円の技術協力,そして1,000名を超える青年海外協力隊により,日本はスリランカの経済社会の基盤整備と人材育成等に貢献してきた。また,スリランカ和平にも積極的に関与してきた。
 また,近年では2014年には安倍総理が日本の総理として約20年ぶりにスリランカを訪問したのに続き,2016年,2017年には,シリセーナ大統領やウィクラマシンハ首相が訪日され,両国は「包括的パートナーシップ」の下,貿易・投資,海洋協力,人的交流など様々な分野における協力が進んでいる。
 現在の日・スリランカ関係は,仏教文化を有する島国の海洋国家としての共通の基盤の上に,長い協力の歴史を積み重ね,幾多の人々の往来によって支えられているもの。私は,先達から引き継いだ両国関係をさらに強固なものとすべく,努めていく所存。

【問】日本企業は対スリランカ投資の可能性について,高い関心を有しているか。

【河野外務大臣】30年以上に及ぶ紛争終結後,日本とスリランカ両国間の経済関係は緊密化している。両国の貿易額は1,000億円を超え,スリランカには130社を超える日本企業が進出するなど,今や日本とスリランカは重要な経済・貿易パートナーとなっている。
 インド太平洋における連結性の向上の観点から,スリランカの港湾等のインフラ開発事業は重要。日本は,開放性,透明性,経済性及び被援助国の財務健全性といった国際スタンダードに則った質の高いインフラ整備を進めている。
 また,スリランカは豊かな自然と8つの世界遺産等,魅力的な観光資源を有する国。その魅力で世界中の人々を魅了している。特に,紛争が終結した2009年以降,スリランカを訪れる観光客は増加している。日本からの観光客も年間4万人を超える勢いで増加しており,スリランカの観光セクターは有望な投資先であると考える。
 今月,100名近い日本商工会議所の経済ミッションがスリランカを訪問予定。同ミッション訪問の機会等,様々な交流を通じて,日本からスリランカへの投資が一層増えていくことを期待している。

【問】緊迫した北朝鮮情勢に関するお考えをお聞かせいただきたい。

【河野外務大臣】北朝鮮は,この二年間,過去最大出力と推定される規模の核実験を含む3回の核実験を強行したほか,2回連続で日本を飛び越える弾道ミサイルの発射,ICBM級の長射程の弾道ミサイル発射など,40発もの弾道ミサイル発射を強行した。北朝鮮の核・ミサイル開発は,今や日本やスリランカはもちろん,国際社会全体に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威である。
 日本は戦後70年以上にわたり平和国家として,アジア太平洋地域の平和と繁栄を支えてきた。日本としても,平和的な問題解決が望ましいとの考えである。
 しかしながら,北朝鮮が,1994年の枠組合意,2005年の六者会合共同声明を反故にし,核・ミサイル開発を進めてきたことの反省を踏まえれば,北朝鮮とは対話のための対話では意味がない。
 北朝鮮に政策を変えさせるため,あらゆる手段を使って圧力を最大限にし,北朝鮮から対話を求めてくる状況を作っていくことが必要である。
 日本としては,日米,日米韓三か国で協力するとともに,スリランカを含む関係国とも緊密に連携しながら,安保理決議の完全な履行を含め,あらゆる手段を通じて国際社会全体で北朝鮮への圧力を最大限まで高め,北朝鮮の政策を変えさせるべく全力を尽くしていく考えである。


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