寄稿・インタビュー

タス通信(ロシア)による河野外務大臣インタビュー

(2017年11月26日付)

「日本国外務大臣:ロシアとの平和条約,「安倍プラン」,北朝鮮の脅威について語る」

平成29年11月30日

 河野太郎外務大臣は,国際社会の安定におけるロシアと日本のパートナーシップの大きな役割,貿易量,安倍晋三内閣総理大臣のロシア訪問の準備,両国の研究分野での協力,安全保障問題と「朝鮮民主主義人民共和国」の核・ミサイル問題,北方領土における共同経済活動,文化・スポーツ・技術分野での協力などについて語った。

(コプノフ副社長)尊敬する大臣閣下!2016年5月にソチにおいて安倍総理がプーチン大統領と会談し,「安倍プラン」として知られる8項目の包括的協力プランを提案してから,1年半が経過した。この間,日露関係は変化したとお考えか。今の日露関係の現状をどのように評価しているか。

(河野外務大臣)日露両国の間に,戦後70年以上経っても未だ平和条約が締結されていないという事実を非常に残念に思う。日本とロシアは,地域あるいは国際社会における自然なパートナーになれる関係にあり,また日露が緊密に連携することは,地域のみならず,国際社会全体の平和と安定に寄与するものであると思う。
 (しかし,)現時点において日本とロシアの貿易額は日中間の貿易額のわずか17分の1でしかない。8項目の協力プランをしっかりと実現していくことで,日露の経済関係あるいは人の交流が重層的に分厚くなっていくと信じており,一つ一つ目に見える結果を出して,日露両国民の間の信頼関係を更に強くしていきたいと考える。

(コプノフ副社長)貴大臣は,日露外相会談および貿易経済に関する政府間委員会のモスクワでの会談を終えられたところであるが,一連の会談の印象についてお話を伺いたい。何らかの分野で進展は得ることはコプノフ副社長できたのか。

(河野外務大臣)日露外相会談は,記者会見後のワーキングランチを含め2時間30分に及び行われた。ラブロフ外相とは3度目の会談であり,意見の違いがあっても率直に意見交換できる個人的な信頼関係ができている。
 来年の総理の訪露に向け,12月の局長級協議,1月又は2月の次官級協議,春の外相会談,そして5月安倍総理のロシア訪問につながるスケジュールを組むことができたと思う。
 北朝鮮の核問題については,朝鮮半島の非核化の必要性について共有し,そのために安保理決議の完全履行が重要であることでも一致した。
 貿易経済に関する日露政府間委員会は,ご存じのとおり,1994年に私の父である河野洋平外務大臣(当時)の時に作った委員会だが,今回は,各省庁の次官級あるいは民間企業からの参加も得て,様々な問題についてしっかりと協議できたと思う。今後,極東における協力をはじめ,様々な経済協力が大きく進んでいくだろう。

(コプノフ副社長)「安倍プラン」は8項目から成るが,その多くが実現しつつある。同プランに基づく露日協力の進捗いかん。また,露日経済関係の現状をどのように評価しているか。露日間での協力プロジェクトについて,顕著な例を示していただきたい。

(河野外務大臣)100本以上の様々な覚書が署名され,その4割が実現していると思う。ロシアでは年間15,000人以上が結核で死亡していると伺っているが,例えば大塚製薬がロシアの企業と一緒に結核のための薬をしっかり提供するとの試みが合意されている。また,ウラジオストクの都市計画は,今年中に(マスター)プランを策定する方向で計画が進んでいる。郵便局のシステム改善プロジェクトも進んでおり,これにより,クリスマスにしっかりクリスマスプレゼントが届き,ロシア国民の皆さんに生活環境がよくなったと実感していただけるような協力が行われている。そういった一つ一つの地域で始まったプログラムの成果をロシア全体に広げていきたいと思う。

(コプノフ副社長)この他に,今後,どのような有力なプロジェクトが更に実現され得ると考えるか。

(河野外務大臣)例えば,ロシア極東の開発によって,極東からアジア太平洋地域に様々な輸出を行う輸出基地を建設するプロジェクトもいくつか進んでいる。また,輸出用の牛肉をはじめとする農林水産業,あるいはそのためのインフラ整備なども進んでいくことを期待している。

(コプノフ副社長)昨年12月のプーチン大統領訪日の際,北方領土における共同経済活動を開始する可能性についても発表された。既に2回にわたって日本政府・ビジネス代表団が現地を訪問し,外務省レベルでの協議も何度か行われた。この問題についてどのような進展があり,それをどのように評価しているか。

(河野外務大臣)4つの島で水産業,農業,観光,風力発電,ゴミの削減といったプロジェクト候補が検討されている。どのプロジェクトも島の住民の生活環境を改善し,人の往来の増加を目指すものであり,50人を超える専門調査団を派遣し,様々な意見交換や関連施設の視察を行ってきた。12月の中旬にはそれを受けた作業部会が行われ,1月あるいは2月には次官級協議を行う予定である。春には外相会談を実施し,5月の総理のロシア訪問につなげていきたいと考えている。4つの島の未来を日露が一緒に描いていくことは,互いの信頼関係を強め,平和条約の締結に向けた更なる一歩となると思う。

(コプノフ副社長)日露両国の関係は,もちろん,政治,経済,文化関係の発展にとどまるものではない。北東アジアの安全保障問題に関する露日対話も再開され,両国の外相・防衛省による「2+2」も本年3月に行われた。露日間の安全保障当局によるこうした接触の意義について,どのように見ているか。

(河野外務大臣)冷戦後,日本とロシアはお互いに直接の脅威ではなくなった。そうした中で日本とロシアが安全保障の面でも関係を緊密にすることは,地域の平和と安全に大きく寄与するであろう。例えば今でも海上自衛隊とロシア軍と海難救助を始め様々な訓練を一緒に行っており,12月にはロシア軍参謀総長,陸軍総司令官が日本を訪問する。また「非伝統的脅威」といわれる麻薬,テロ,マネーロンダリングの問題に加え,今回更に腐敗問題においても日露間で協力していくことになった。こうした流れの中,両国外相・防衛相による「2+2」を実施することも,地域全体(の平和と安定)のためにも非常に重要であると考えており,来年にも実施できればよいと思う。

(コプノフ副社長)安全保障分野での国際社会の主な懸念の一つは,今や北朝鮮の核・ミサイル問題である。この問題の解決のために,どのように取り組むべきと考えるか。日本はこの問題を共に解決するためにロシアとの間でどのような話合いを行っているか。

(河野外務大臣)北朝鮮の核実験およびミサイルの発射は極めて許しがたい事態である。もはや日本や韓国といった東アジアの脅威を超えて,ロシアや欧州を含む国際社会全体の脅威となっている。ラブロフ外相とは,北朝鮮の問題で何度も議論をしてきており,朝鮮半島から核兵器を取り除かなければならないという認識では完全に一致をしている。朝鮮半島の非核化というゴールは,日本とロシアだけではなく,韓国,アメリカ,中国の共通した目標である。そのためには,(タス通信注:DPRKに対する)国連の安保理による制裁決議を国連加盟国全て,すなわち,国際社会全てが完全に履行することが必要である。制裁の完全な履行により,北朝鮮の今の体制がこのまま核やミサイルの開発を続けても北朝鮮に明るい未来がないことを認識させ,核やミサイルを放棄し,拉致問題を解決させることが重要である。北朝鮮がその意思をもって交渉のテーブルに着くのであれば,国際社会は北朝鮮と話し合うこととなり,日本もそのプロセスに加わる用意がある。今の北朝鮮の体制を変えなければならないと言っている国は一つもない。国連の安保理の常任理事国であり,六者会合のメンバーであるロシアは,極めて重要なパートナーである。

(コプノフ副社長)来年,「日本におけるロシア年」及び「ロシアにおける日本年」を開催することが首脳間で決定されたが,露日関係を発展させる観点から,こうした相互交流年の開催の意義をどのようにお考えか。交流年を実施するに当たり,日本をどのように紹介するお考えか。

(河野外務大臣)今年の1月から日本に来るロシアの方々のためのビザが緩和され,日本に来るロシア人の数が4割増えた。モスクワをはじめ,ロシアには多くの寿司屋,日本料理屋があると伺っているが,この交流年で,そういった日本に強い関心を持って下さっているロシアの方々に,日本の様々な伝統ある文化,現代のアートを見ていただきたいと思っている。特に,これまで海外に出したことのないような国宝コレクションも来年の交流年に向けて,ロシアに持ってくる予定である(タス通信注:江戸の絵画展)。また,来年はロシアに恐らく初めて流鏑馬がくることになると思うが,馬の上で武器を扱う技能はロシアにもあると聞いており(タス通信注:「ジギトフカ」),ロシアの方々の関心もひくのではないかと思う。
 また来年はサッカーワールドカップがロシアで開催される予定であり,日本のサッカーチームが活躍すれば,それは日本サッカーのレベルをロシアの方々に知っていただく機会にもなる。文化だけでなく,スポーツ,科学技術など,様々な分野で日本を紹介していきたいと思う。

(コプノフ副社長)交流年の実施は,日本人の目に映るロシアのイメージを変えられるとお考えか。

(河野外務大臣)ロシアの方々の中で日本が重要だといって下さる方々が97パーセントに達したという話を伺ったことがある。その反面,日本人の中でロシアが重要だと考える人は8割近くありつつも,ロシアに親しみを感じるという人は2割以下にとどまっている。これは非常に残念なことであると私は思っており,来年の交流年には,ロシアの芸術,演劇,絵画を日本に持ち帰り,多くの日本人にロシアの文化の素晴らしさを直接感じていただきたいと思っている。
 昨日,シュヴァロフ第一副首相に誘われて,ボリショイ劇場でバレエ「ロミオとジュリエット」を鑑賞した。何年か前のクリスマスイブにも,やはりボリショイ劇場で「くるみ割り人形」を拝見させていただいたが,非常に完成度の高い素晴らしいものであった。そうしたロシアの文化,素晴らしい風景,宇宙を先頭にロシアの科学技術,いろいろなものに興味を持つ日本人が増えてくれればよいと思っている。

(コプノフ副社長)安倍総理は,本年9月のウラジオストクにおけるプーチン大統領との会談で,「正に私たち自らの手で」平和条約を自らの手で署名するとの決意を表明された。貴大臣も,外相就任後のインタビューの中で,貴大臣の御祖父様も御父様もこのプロセスに直接関わっており,御自身もロシアとの関係発展に特別の思い入れがあると述べられた。貴大臣御自身は外務大臣として露日関係に関する問題に多くの時間を割いていらっしゃるか。また,外務大臣として,理想的なロシアとの関係はどうあるべきと考えるか。

(河野外務大臣)私にとって,日本とロシアの関係は特別なものである。今から61年前に,私の祖父河野一郎が当時の鳩山一郎総理と一緒に,日ソ共同宣言の交渉及び署名のためソ連を訪れた。その際,ニキータ・フルシチョフソ連共産党中央委員会第一書記が私の祖父の前で振り回していたペーパーナイフを祖父がもらって帰ってきたという話を何度も聞いており,そのナイフは我が家に残っている。
 昨日ラブロフ外相と会談をした外務省別館は,61年前私の祖父が宿泊した建物でもあった。昨日シュヴァロフ第一副首相とともに共同議長を行った貿易経済に関する日露政府間委員会は,私の父が1994年に外務大臣として設立した委員会である。
 日ソ共同宣言50周年の記念の年に,河野一郎の孫の私と鳩山一郎総理の孫の鳩山由起夫氏と一緒にモスクワを訪問したが,そのときに「日ソ共同宣言から50年も平和条約がほったらかしにされている」と私はフォーラムで発言した。今や安倍総理を支えて,平和条約を締結させる外務大臣という役職に自分自身が就くこととなり,これだけは,プーチン大統領と安倍総理の二人の任期の間にやり遂げなければならないと思っている。必要なら何回でもこの問題のためにロシアを訪問し,多くの時間を割くつもりであり,日本とロシアの両国の国民に,平和条約を締結してよかったといってもらえる日を待ち望んでいる。

(コプノフ副社長)本日は,多忙なスケジュールの中,タス通信の質問に答えるお時間を頂き感謝する。今回の貴大臣のモスクワ御訪問が,今日お話になった目的の達成に資することを願っている。


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