寄稿・インタビュー

(2017年11月19日付)

「バングラデシュに対する日本の支援は続く」

平成29年11月21日

 短期間であるが重要な訪問を行うため,本日ダッカに到着した河野外務大臣は,デイリー・スター紙の外交記者であるレザウル・カリムに対し,日本による開発協力,対バングラデシュ投資,インフラや電力関連事業について語った。河野大臣は,ロヒンギャ問題についても話した。本独占インタビューは,大臣の当地訪問前に,日本大使館を通じて日本の外務省に送った質問をもとに行われた。

【問】日本のODAによるダッカ都市交通整備計画及びマタバリ超々臨界圧火力発電計画の進展状況と完成見通し如何。また,昨年7月ダッカで起きたテロ事件以降,バングラデシュのインフラ整備に対する日本の支援が滞っているように見受けられるが,今後の日本の支援の展望如何。さらに,バングラデシュの日本企業向け経済特区における日本の支援如何。

【河野外務大臣】日本とバングラデシュは,良好な二国間関係と国民同士の絆に支えられ,本年国交樹立45周年を迎えました。両国間の友好関係は,1973年,日本人の生き方への特別な関心と日本の伝統・文化に対する深い造詣を持ち,日バ関係の強化に大変ご尽力頂いた,国父ムジブル・ラーマン首相を日本にお迎えしたことから始まります。同首相を父とし,その意思を引き継がれたハシナ首相のすぐれたリーダーシップの下で,バングラデシュは目覚ましい発展を遂げています。この記念すべき年に日本の外務大臣としてバングラデシュを訪問することを大変嬉しく思います。

 日本は,バングラデシュの主要なドナー国として,貧困対策やインフラ整備,自然災害に対する脆弱性克服を後押しする協力を実施しています。中でも,2014年の首脳会談の際に両首脳間で合意された「ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)」構想の下,質の高いインフラ整備,投資環境整備,地域連結性強化に向けた協力を加速しています。

 現在実施中のマタバリ超々臨界圧石炭火力発電計画,ダッカ都市交通整備計画及び外国投資促進計画は,いずれもBIG-B構想にとって重要であり,バングラデシュの経済社会開発に大きく貢献する事業です。

 マタバリ超々臨界圧石炭火力発電計画は,600MW級の発電所を2基建設し,2026年までに年間7,865GWhの発電量の確保を目指すものであり,ダッカ都市交通整備計画は,2024年までに一日57万人以上の市民の足となる都市鉄道網を整備し,渋滞の解消を目指すものです。どちらも日本企業が受注し,質の高い技術を活用しながら進めている事業であり,日本は早期完成に向けて協力していきます。また,日本企業向け経済特区に関しては,日本によるバングラデシュの外国直接投資促進計画の下で協力が進められており,今後日本の対バングラデシュ直接投資及び進出日本企業数の拡大などが期待されています。

 昨年7月のダッカ襲撃テロ事件において,日本の国際協力事業関係者を含む多数の尊い人命が奪われたことは極めて残念なことです。改めて卑劣なテロを断固として非難しますが,バングラデシュ政府が厳格なテロ対策の下,邦人を含む外国人の安全確保に努めていることを評価します。日本はテロ事件で犠牲となった方々の志を受け継ぎ,国際協力事業関係者の安全を確保しながら,積極的に協力を継続していきます。

 「黄金のベンガル」の前途は希望に満ちています。自由で開かれたインド太平洋の実現にむけても両国の協力の可能性は広がっています。私自身,包括的パートナーシップに基づく二国間関係を一層発展させるべく先頭に立って汗をかきたいと考えています。

【問】ミャンマー・ラカイン州北部の情勢を踏まえた日本政府の対応如何。また,日本はこの問題に取り組んでいるバングラデシュに対してどのような支援が可能か。

【河野外務大臣】日本は,ミャンマー・ラカイン州における8月25日の治安部隊等に対する武装勢力による襲撃と住民を犠牲にした暴力行為を強く非難します。また,襲撃事件後の現地の人権・人道状況,多数の市民殺害の疑惑,60万人以上のバングラデシュへの避難民流出について深刻に懸念しています。

 バングラデシュ政府が,ハシナ首相のリーダーシップの下,避難民を受け入れ,新たに流入した避難民のために,人道的観点から最大限の配慮をもって対応してきていることを高く評価し,国境警備や避難民問題のため,バングラデシュとミャンマーの間の協議が行われていることを歓迎します。今後更に進展するよう国際社会が後押することが重要です。

 この難局の中で,日本は,バングラデシュ政府の取組をしっかりと支援していく考えです。これまでに実施した500万ドルの緊急支援(シェルター及び日用品の提供,水・衛生,子どもの保護等)に加え,増大する避難民にとって優先度の高い食料などの分野に対し,合計1,860万ドルの支援を国際機関を通じて新たに実施します。

 ミャンマー政府は,(1)人道支援,(2)避難民の帰還・再定住と復興,(3)地域開発とコミュニティ間の緊張緩和等の取組を進め,アナン助言委員会の勧告を履行していくとしており,この問題の解決のためには,その着実な実施が重要です。日本としても支援していく考えです。

 日本は複雑かつ深刻なこの問題の根本的解決に向け,バングラデシュと密に連携して,引き続きあらゆる支援を検討したいと考えています。


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