寄稿・インタビュー

シャルクルアウサト紙(汎アラブメディア)による岸田大臣インタビュー

(2017年7月14日付)

「シリアでの緊張緩和を歓迎。復興は政治解決に懸かっている」

平成29年7月18日

 岸田文雄日本外務大臣は,昨日(7月13日),シャルクルアウサト紙に寄せた発言の中で,日本がシリアの「緊張緩和」のための米露による努力を歓迎するとした上で,「復興」のためにはシリア危機の「政治解決」が重要であると指摘した。
 岸田外務大臣は東京における発言の中で,「モースル解放が宣言されたこと」及びダーイシュからの「ラッカ解放が近づきつつあること」を高く評価した一方,両都市の解放後も,多数の避難民の発生など「人道状況が継続する」と指摘した。その上で,「テロや暴力的過激主義との闘いは,中東のみならず国際社会全体において依然として続くだろう」と述べた。以下,「中東安定化の鍵」たるサウジアラビアとの関係について,そして「戦略的関係」構築と「ビジョン2030」実現への協力に向けた日・サウジの努力について語った発言全文である。

【日・サウジアラビア関係】
(問)現在の日・サウジアラビア関係をどう見ていますか。

(岸田外務大臣)サウジアラビアは中東の平和と繁栄の鍵となる国であり,日本にとってエネルギー安全保障の最大の柱です。日・サウジアラビア関係は,1955年の外交関係樹立以来,日本の皇室とサウジアラビアの王室の交流を始め様々な分野で良好な関係を維持しています。日本は,サウジアラビアをエネルギー安全保障のみならず,貿易や文化,政治・安全保障等多様な分野におけるパートナーとして重視しています。

(問)最近,ハイレベルでの要人往訪が見られます。

(岸田外務大臣)その通りです。最近も両国間の要人往来は活発であり,2017年3月には,国王としては46年ぶりに,サルマン国王が訪日したことは記憶に新しいところです。また,2016年9月にはムハンマド・ビン・サルマン皇太子(当時副皇太子)も訪日しました。

(問)何を話したのですか。

(岸田外務大臣)私はサルマン国王訪日時には国王陛下を表敬する機会に恵まれました。サルマン国王から,日本との協力を強化することへの期待を伝えられ,私からも「サウジ・ビジョン2030」実現への協力を始め多岐にわたる分野で協力関係を強化していきたいとお伝えしました。

(問)どのような分野での協力となるのでしょう。

(岸田外務大臣)ジュベイル外相とも国連総会の機会を含めて3度会談し,両国関係強化の方策や中東地域,アジア地域情勢について熱心に意見交換を行ってきました。またいつの日か,今度はサウジアラビアを訪問し,ジュベイル外相とじっくり意見交換する機会を得たいと思っています。中東,湾岸地域の安定の要であるサウジアラビアと,更に幅広い分野で,より一層の協力関係を築いていきたいと考えています。サルマン国王,ムハンマド新皇太子の下,伝統を重んじながら新しい未来を創ろうと前進するサウジアラビアと共に手を携えて日本も歩んで参ります。

(問)両国の署名した各合意や各文書はどの程度実施されましたか。

(岸田外務大臣)サルマン国王訪日時の首脳会談において,日・サウジアラビア関係を「戦略的パートナーシップ」に引き上げることが確認されました。そして,新しい日サウジ協力の羅針盤として,「日・サウジ・ビジョン2030」を始めとする多くの成果文書が策定されました。「日・サウジ・ビジョン2030」は,脱石油や雇用促進のためにサウジが追求する「サウジ・ビジョン2030」と日本の「成長戦略」という両国の改革構想間のシナジーを起こし,共に変革・発展していくことを目指すものです。その実現の体制として,「日・サウジ・ビジョン2030」には両国合わせて41省庁・機関が参加しており,すでに31件の先行プロジェクトにおいて実施に向けた取組がスタートしています。

(問)具体的にはどのような分野ですか?

(岸田外務大臣)両国の協力分野は,貿易,投資,観光,教育,インフラ,科学技術,文化交流など多岐にわたります。例えば,文化・娯楽振興を改革の主要目標の一つに掲げるサウジ側の改革努力に協力する目的で,サウジで初となる日本人オーケストラによる公演が4月に行われました。公演は非常に盛況で,公演後にはサウジアラビアの観客から多くの賛辞と謝辞を頂きました。両国で協力した新しい試みをこれからも続けていきたいと考えています。
 その他の分野としては,サルマン国王訪日時には数次査証と査証料に関する覚書への署名が,さらに,本年4月には両国間の投資協定が発効しました。これにより,両国間の人的・物的な交流が更に活発化することを期待しています。日本とサウジアラビアが,双方のより良い未来のために,困難な改革を推し進めるべく,互いの強みを生かして幅広い分野で協力し合っていきたいと考えています。

【北朝鮮問題】
(問)トランプ政権の対応をどう評価しますか。北朝鮮のエスカレートする行為に対するトランプ政権の立場はどのようなものなのでしょう。

(岸田外務大臣)地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中,米国の抑止力を確保することが必要です。日本として,全ての選択肢がテーブルの上にあることを言葉と行動で示すトランプ政権の姿勢を高く評価しています。日米同盟の抑止力・対処力を強化していく考えです。同時に,米国政府は,外交的・経済的手段を通じて北朝鮮に対する圧力を強化するとともに,中国に対して更なる対応を求めていく方針を示しています。この点について,日本と米国政府の立場は完全に一致しています。

(問)これは北朝鮮問題を軽減することにつながるのでしょうか。

(岸田外務大臣)私は,7月5日にティラソン米国務長官と電話会談を行い,国際社会による北朝鮮に対する圧力の更なる強化を主導すべく,より厳しい制裁措置を盛り込んだ国連決議の採択に向けて,日米・日米韓で緊密に連携していくこと,中国やロシアが更なる役割を果たすよう共に働きかけていくことで一致しました。こうした点は,7月6日の日米韓首脳会議でも確認されました。

(問)何を目指しているのでしょう。

(岸田外務大臣)日本としては,国連の場を含め,引き続き米国や韓国と緊密に連携し,中国やロシアにも更なる役割を求めながら,北朝鮮に対する圧力を強化し,諸懸案の解決に向けた具体的な行動を強く求めていきます。

【シリア危機の政治解決と緊張緩和後の支援】
(問)シリアに関し,日本はシリア南西部停戦に関する米露合意をどう評価しますか。アスタナ合意,「緊張緩和地帯」はどうでしょう。

(岸田外務大臣)ロシア,トルコ及びイランが,シリア政府とシリア反体制派を仲介する形で,停戦体制を強化するための協議である「アスタナ会合」を継続的に開催し,5月4日の第4回アスタナ会合において「緊張緩和地帯」の創設が合意されました。その後,7月7日には,米国,ロシア及びヨルダンの3か国がシリア南西部における停戦に合意しました。日本は,こうしたシリアにおける暴力の低減に向けた取組を歓迎します。

(問)危機の政治解決についてはどうでしょう。

(岸田外務大臣)関係国や当事者による停戦の遵守や人道状況の改善への取組が政治プロセスの実質的進展につながることが重要です。日本としても,国際社会と連携しつつ,人道状況を含むシリア情勢の改善のため,外交努力を継続していきます。

(問)日本はシリアの将来についてどのように見ていますか。

(岸田外務大臣)残念ながら,2011年3月のシリア危機発生以降,数十万の命が奪われ,難民・国内避難民を含め,多くのシリア人が人道支援を必要とする状況が続いています。こうした中,2012年以降,日本はシリア,イラク及び周辺国に対し総額約19億ドルの支援を実施してきました。
 2017年に入ってからも,日本は新たにシリア,イラク及び周辺国に対し,国際機関及びNGOを通じた約2.6億ドルの人道支援を決定しました。特に,シリアにおける緊急の人道的ニーズに対応するための避難民支援や電力供給の復旧支援に加え,中長期的な地域の安定が重要との観点から若者の人材育成,女性のエンパワーメントといった分野で,約7,700万ドルの支援を行っています。

(問)シリア復興に際しても日本は積極的に役割を果たしていくのでしょうか。

(岸田外務大臣)シリアが本格的に復興に向かうには,何よりも危機の政治的解決が必要です。日本は,国際社会と連携しつつ,人道支援を引き続き実施し,政治プロセスの進展を後押ししてまいります。

【モースル後・ラッカ後のテロとの闘い】
(問)対ダーイシュ(ISIL)有志連合についてはいかがでしょうか。テロとの闘いの進捗状況に満足していますか。

(岸田外務大臣)イラクではモースルにおける戦闘の勝利が宣言され,シリアにおいてもラッカの解放が迫るなど,ISILとの闘いは重要な局面を迎えています。他方,両都市の解放後も,多数の避難民の発生など,深刻な人道状況が継続するものと考えています。
 また,テロや暴力的過激主義との闘いは,中東のみならず国際社会全体において依然として続くと思われます。日本としては,中東地域に寛容と協調の精神が広がり,それに基づく平和と安定が築かれるよう,多面的かつ中長期的観点からイラク・シリア及び周辺国に対して人道支援及び安定化支援を実施していきます。

(問)どのようにでしょうか。

(岸田外務大臣)昨年のG7伊勢志摩サミットで日本が発表した2016年から2018年までの3年間で60億ドルの中東・北アフリカの安定に向けた支援は,こうした日本の決意の表れです。今後も,こうした支援を通じて,中東地域の平和と安定に向けた貢献を続けて参ります。

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