寄稿・インタビュー

ANSA通信(イタリア)による岸田外務大臣書面インタビュー

(2017年4月10日)

「我々の間で率直な意見交換が必要である」

-日本の外務大臣へのインタビュー:強固な連携が必要ー

平成29年4月13日

 「テロや過激主義など,安全保障上の国際的課題に対応するため,基本的価値と戦略的利益を共有するG7の重要性はかつてなく高まっている。」2012年12月26日より安倍晋三内閣の外務大臣に就任して以来,東京の外交政策の責任者である岸田文雄氏はこう述べる。岸田大臣は,ルッカでは大臣間での「率直な意見交換」を期待しており,新たな課題に対応するため強固な連携が必要であると確信している。
 岸田外相は,広島出身で59歳,自民党所属の政治家としての長い伝統を有する家系に生まれた。同外相は,新保護主義や,北朝鮮の核・ミサイル開発に見られるような国際秩序に対する脅威といった問題について言及。7カ国のグループが強いリーダーシップを発揮し,自由で開かれたルールに基づく国際秩序を牽引する役目を果たす必要があるとの立場である。アンサとのインタビューにおいて岸田大臣は,トランプ政権下における歴史的同盟国・米国との関係や,極東で拡大する経済大国・中国との関係について述べるとともに,国交150周年を迎えた日伊関係が今後もあらゆる分野で更なる発展を遂げることへの期待を表明した。

(問)新興市場の成長の鈍化,主要国のリーダーの交代,ヨーロッパでの移民危機などの状況下でのG7の重要性は何であり,G7はどのような役割を果たせるでしょうか。

(岸田外務大臣)現在,国際社会では,保護主義や内向き志向の台頭が懸念されている他,北朝鮮の核・ミサイル開発を含め,国際秩序を揺るがすような一方的な現状変更の試みも行われています。このような中,基本的価値と戦略的利益を共有するG7の重要性はかつてなく高まっており,G7が安全保障及び経済面で連携とコミットメントを強化し,リーダーシップを発揮していかなければならないと考えています。G7ルッカ外相会合,そしてG7タオルミーナ・サミットにおいては,自由で開かれた,ルールに基づく国際秩序の下,国際協調を維持・発展させていくという力強いメッセージを発出すべきと考えています。引き続き,議長国イタリアを始めとするG7の間で,国際社会が直面する諸課題への具体的な取り組みへの議論を深め,G7としての結束を示していきたいと思います。

(問)今次G7外相会合において議長国イタリアにどのようなリーダーシップを期待するか。2016年のG7外相会合議長として岸田大臣が得た教訓は何でしょうか。また,日本はイタリアへどのように円滑に引き継ぎをしましたか。

(岸田外務大臣)私が議長を務めた昨年のG7広島外相会合では,国際社会の喫緊の課題に関し,G7ならではの率直で白熱した議論を交わし,国際社会に対し力強いメッセージを発信することができました。国際社会は引き続き様々な課題に直面しており,また,世界の多くの主要国で政権の交代や選挙が行われるなど,変化の可能性を秘めた年を迎えています。このような中,自由で開かれた,ルールに基づく国際秩序の牽引役としてのG7の役割はますます重要になっています。G7ルッカ外相会合においても,国際社会の平和と繁栄に向け,G7の力強い連帯が確固たるものであることを確認したいと思います。そのためにも私は前議長として,アルファーノ外務・国際協力大臣を全力で支援していきます。この決意は2月,G20ボン外相会合でアルファーノ大臣と会談した際にしっかり伝えており,G7ルッカ外相会合の成功に向けて緊密に連携していきたいと思います。

(問)日本が期待する今次G7外相会合の成果はどのようなものでしょうか。日本としてどのような役割を果たしていくと考えていますか。

(岸田外務大臣)自由で開かれた,ルールに基づく国際秩序の牽引役たるG7として,テロ・暴力的過激主義といった国際社会が直面する喫緊の課題や地域情勢につき,忌憚のない意見交換を行い,G7の連携を確認したいと思います。また,近年G7で議論を深めてきているアジア情勢や海洋安全保障についても,G7ならではの率直な議論を交わしたいと思います。このため,前議長かつG7諸国の中で最古参の外相として,積極的に議論に参加し,G7ルッカ外相会合の成功に貢献したいと考えています。

(問)昨年,外交関係樹立150周年を迎えた日本とイタリアの関係をどのように見ていますか,また,今後の両国関係を強化する上でどのような協力が期待されるでしょうか。

(岸田外務大臣)本年のG7外相会合はルッカで開催されますが,100年以上前,日本を舞台とするオペラ「蝶々夫人」を生み出し,まだ遠い存在であった日本をいち早くイタリアに紹介したのが,まさにそのルッカに生まれた作曲家のジャコモ・プッチーニでした。豊かな伝統文化と優れた芸術を愛でる国民性は,日伊両国が世界に誇る共通点です。国交150周年を迎えた昨年,様々な記念行事を通じ,イタリア国民にも日本への理解を深めていただけたと確信しています。こうした両国国民の友好関係を基礎とした国と国との関係においても,日本とイタリアは基本的価値を共有する重要なパートナーです。近年,国交150周年も機に,日伊関係がますます緊密になっていることを嬉しく思っています。一方で,世界有数の経済大国である両国の経済規模に鑑みれば,二国間の経済関係はまだまだ発展の余地があります。また,モノ作りで世界をリードする日伊両国であればこそ,防衛装備・技術協力も大きな可能性を有しています。この観点から,先月のローマでの日伊首脳会談において,防衛装備品・技術移転協定の交渉開始で一致できたことは大変意義深いと思います。さらに協力の舞台は二国間には留まりません。政治・安全保障面でも,新旧G7議長国・安保理理事国として,テロや暴力的過激主義といった国際社会が直面する深刻な課題を前に,日伊間の協力強化の要請は高まっています。アルファーノ外相と手を携えて,世界の平和と繁栄のための日伊の協力を一層強化していきたいと思います。

(問)トランプ新政権後のこれまでの日米関係をどのように評価しますか。また,日本は,トランプ大統領による政策の不確実性に起因する影響をどのように抑えていくお考えでしょうか。

(岸田外務大臣)トランプ大統領が1月に就任し,現在,米国は様々な政策の見直しを行っています。地域の安全保障環境が更に厳しくなる中で,国際社会の平和と繁栄に対する米国のコミットメントに関する不安の声が一部にあるのは事実です。このような状況下にあるからこそ,トランプ新政権との間でも日米同盟が強固であることを示すことが極めて重要だと考えています。2月の訪米の際,安倍総理は,トランプ大統領と二日間にわたり,様々な問題について,じっくりと話し合うとともに,個人的な信頼関係を確立し,日米同盟が揺るがないということを世界に向けて発信することができました。ティラソン国務長官の就任以来,電話会談を含め既に5回の会談を行っており,今後の具体的な協力のあり方等について議論を行っています。日米同盟は地域の平和と繁栄の礎です。盤石な日米同盟の礎が更に強固なものとなるよう取り組んでいきたいと思います。

(問)トランプ政権の下で,アジアにおける米国の役割は変化しつつあります。このような背景を踏まえ,日本はこの地域での中国の立場をどのように見ているのでしょうか。日中関係をどのようにしていく考えでしょうか。また,この状況の下,アジアにおける日本の新たな役割は何であると考えていますか。

(岸田外務大臣)現在,アジア太平洋地域の安全保障環境は一層厳しさを増しており,そのような中,日米同盟は,これまでアジア太平洋の平和と繁栄の礎として,地域の安定に貢献しており,その点は先般の日米首脳会談においても改めて確認されました。同時に,世界の二大経済大国である米国と中国との関係は,日本のみならず国際社会にとても重要です。中国と米国が,様々な問題について建設的なやり取りを続けることは,地域と国際社会の平和と安定の観点から有意義と考えます。また,日本にとって日中関係は最も重要な二国間関係の一つです。中国の平和的な発展は,日本にとってもチャンスであり,日中の安定的な関係も,この地域の安定と繁栄に不可欠です。中国との間では,国交正常化45周年である本年,日中平和友好条約締結40周年である来年と,節目の年が続きます。累次の首脳会談及び外相会談でも,これらの機会を捉えて,日中関係を改善していくことで一致しています。引き続き,アジア太平洋の平和と繁栄の礎となっている日米同盟を強化するとともに,中国との関係を改善させ,地域の平和と安定に共に貢献していきたいと思います。

(問)トランプ大統領はTPPの離脱を表明しました。日本は米国との二国間通商協定の可能性を追求していくのでしょうか。また,日米経済対話の進展はどうでしょうか。そのような中,日本はRCEPに対してどのように取り組んでいくのでしょうか。

(岸田外務大臣)米国には,これまで様々な機会に,TPPの経済的,戦略的意義について説明してきています。米国がすぐさまTPPに対する立場を変えるということではありませんが,日本がTPPを推進する意図については,理解を得たと考えています。
 2月の日米首脳会談では,日米が主導し,アジア太平洋地域に,自由で公正な経済圏を作る必要性について一致しました。日米主導で自由で公正な市場を世界に広げていくという,日米共通の目標の下で,今後あらゆる選択肢について考えていくことになりました。また,日米がウィン・ウィンの経済関係を一層深めるため,麻生副総理とペンス副大統領の下で,新たな経済対話の枠組みを立ち上げることで合意しました。今後,この新たな経済対話では,(1)経済政策,(2)インフラ,エネルギー,サイバー,宇宙などの分野での協力,(3)貿易・投資に関するルールについて議論していきます。RCEPについては,物品貿易,サービス貿易,投資,知的財産,電子商取引等の分野について,交渉が行われており,本年3月にも神戸における交渉会合で,活発な議論が行われました。日本としては,RCEPについて包括的でバランスのとれた質の高い協定の早期妥結を目指し,強いリーダーシップを発揮しつつ,引き続き精力的に交渉を進めていきます。

(問)中国の北朝鮮からの石炭の輸入停止,金正男の殺害,ミサイル発射等,最近の北朝鮮を巡る動きは地域における北朝鮮のリスクを浮き彫りにしています。日本はこうした北朝鮮によるリスクをどのようにとらえていますか。また,国際社会と共にどのような手段をとることができると考えていますか。

(岸田外務大臣)北朝鮮の核・ミサイル開発は新たな段階の脅威となっています。北朝鮮は昨年,短期間に連続して核実験を強行し,また,一年間で20発以上の弾道ミサイルを発射しました。今年に入ってからも,既に4度にわたり弾道ミサイルを発射するなど,核・ミサイル開発に邁進しています。これは,アジアのみならず,欧州・北米を含めた国際的な安全と秩序に対する重大な挑戦です。国際社会が一致して,北朝鮮に対し,挑発行動を自制し,安保理決議を遵守するよう,強く求めていかなければならなりません。昨年11月,安保理は,北朝鮮の収入源である石炭輸出について上限を設定する強い決議を採択しました。こうした安保理決議の実効性を確保すべく,中国を含む関係国と緊密に協力していきます。また,北朝鮮は当時13歳の少女を含む多くの日本人を拉致しました。拉致は我が国の主権及び国民の生命と安全に関わる問題であり,我が国の最重要課題。拉致の発生から既に40年が経過しており,もはや一刻の猶予も許されません。北朝鮮への対応には,イタリアをはじめとするG7メンバーとの連携が不可欠です。アルファーノ大臣のリーダーシップの下,今回のG7外相会合でも,議論を深めていきたいと考えています。


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