寄稿・インタビュー

(2017年2月17日付)

「EUと日本は自由貿易の範を示すことができる」

平成29年3月1日

 岸田文雄外務大臣は本紙とのインタビューで,日EU・EPAの早期締結を訴える。大臣は先駆者役という意味でもドイツとの協力を期待している。

(問)トランプ米大統領は,アジアの自由貿易協定であるTPPにストップをかけ,また,北米地域のNAFTAの見直し交渉を始める方針です。後退及び保護主義が米国からの新たな兆候ですが,日本は何を求めているのでしょうか。

(岸田外務大臣)米国のTPP離脱などもあり,保護主義的な動きへの懸念が世界に広がる中,自由貿易を主導すべく,日EUが率先して範を示す観点から,日EU・EPAと呼ばれる日本とEUとの間の経済連携協定の可能な限り早期の大枠合意を実現することは極めて重要です。

(問)日EU・EPA交渉の中で,ドイツにはどのような役割を期待しますか。

(岸田外務大臣)ドイツは,世界有数の貿易大国で,伝統的に自由貿易を推進する立場です。本協定の大枠合意の実現に向けて,ドイツがEUの中で主導的な役割を担うことを期待します。

(問)長らく対立しながら交渉が行われている本協定の実現に向け,日本はどれ程強く積極的に取り組む方針なのでしょうか。

(岸田外務大臣)日EU・EPAについては,日本側としては,引き続き,それぞれの関心分野を踏まえ,また,お互いのセンシビリティに配慮しつつ,精力的に交渉を行っていく予定です。

(問)日本はドイツと同様に,トランプ大統領から,対米輸出が多すぎるとして批判されています。2度にわたる日米首脳会談を経て,問題は取り除かれたとお考えでしょうか。

(岸田外務大臣)日米首脳会談において,安倍総理とトランプ大統領は,自由で公正な貿易のルールに基づいて,日米両国間及び地域における経済関係の強化に引き続き完全にコミットしていくことを強調しました。

(問)しかしながら,トランプ大統領は,米国内で生産されない自動車に制裁関税を課すと脅しています。日本のメーカーは生産拠点を移す用意があるのでしょうか。

(岸田外務大臣)米国における日本企業の累積直接投資額は2015年までに4,110億ドルにも上り,約84万人の雇用を生み出していることからも,米国経済に大きく貢献をしています。
 日米首脳会談でも,例えば米国で生産しているトヨタのカムリは,Big3の車よりも部品の現地調達率が高いことを説明し,日本の車はよいなとの反応がありました。このような現状を踏まえれば,輸出の削減や米国への工場移転は想定しがたいと考えています。

(問)トランプ大統領は,米国による軍事的庇護を必要とする国に対し,その対価を支払うべきと要求しています。米国は日本に4万2千人近くの兵士を駐留させおり,トランプ大統領は,安全保障に対してお金を払えと求めていますが,日本はその用意があるのでしょうか。

(岸田外務大臣)在日米軍駐留経費については,日米両国政府の合意に基づき,適切に分担されているものと考えており,米側との間でその認識は共有されています。マティス国防長官からも日本の対応は他国のモデルだとの発言がありました。

(問)しかしながら,日本は今後も米国を頼りにできるのでしょうか。

(岸田外務大臣)アジア太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中,日米同盟は,アジア太平洋の平和と繁栄の礎として,不可欠な役割を果たしており,日本としても外交・防衛力を強化し,自らが果たし得る役割の拡大を図っていきます。ティラソン米国国務長官との会談でもこの点につき完全に一致しました。

(問)今年3月のCeBITにおいて,日本はパートナー国です。現在の日独経済関係をどのように評価されていますか。

(岸田外務大臣)経済面でも日独は緊密で,ドイツは日本にとってEU最大の貿易相手国,そして日本はドイツにとってアジア第二位の貿易相手国です。また,日独は戦後,共に奇跡的な経済成長を遂げ,多くの産業分野で良きパートナー,そして良きライバルとして切磋琢磨してきました。
 現在では1700社を超える日本企業がドイツに進出するなど,相互依存が深まっています。近年は,ドイツが官民挙げて推進するIoT/インダストリー4.0の分野でも協力が進んでいます。


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