寄稿・インタビュー

ハヤート紙(汎アラブ紙)による岸田外務大臣書面インタビュー

(2016年10月10日付)

「日本外務大臣:『シリア危機に軍事的解決はない』テロの根本的解決の重要性を強調」

平成28年10月14日

 日本の岸田文雄外務大臣は,シリア危機は,「軍事的手段によって解決できる問題ではなく,政治的解決を追求しなければならない」と強調すると共に,停戦に至らず,人道支援が搬入されていないのは残念である旨表明。「テロの根本的原因」に対する中長期的解決を創出する重要性を強調した。
 アレッポにおける停戦及び人道支援搬入に関する国連決議の発出のため,国際的なやりとりが行われる中,岸田氏は東京においてハヤート紙に語った。日本は,国連安保理の非常任理事国として,8日夜,フランスの決議案に賛成票を投じた。また,日本は,数ヶ月前から,米露が昨年末に立ち上げた国際シリア支援グループ(ISSG)に加わっている。

 岸田氏は,質問に対し,「シリア危機は,喫緊の人道問題であり,中東のみならず,国際社会の安定を揺るがしている。日本を含む国際社会は,シリア危機の政治的解決を目指し,停戦及び人道支援提供のために多大な努力を行っているが,残念ながら,国際社会のこうした努力も実を結んでいない」と述べた。
 更に,2011年初めに始まったシリア危機は,「軍事的手段によってのみ解決できる問題ではなく,シリアの未来のためには,政治的解決を追求しなければならない。それ故,日本は,政治的解決に到達するための国際社会による継続的な取り組みを,今後も支持していく」と付言した。また,同氏は,「悠久の歴史と多大な人材を有するシリアをはじめ,中東地域が育んできた豊かな文化に心より敬意の念を抱いている。我々は,現在の危機が解決し,シリア国民が国家再建に向かうことを希望する。先にも述べたように,このような目的に達するため,日本は最大限尽力することを強調する」と指摘した。

 岸田氏は,「日本は,中東地域の安定のため,シリア危機の政治的解決に向けた環境醸成に取り組んでいる。自分も日本の外務大臣として,9月20日にニューヨークで開催されたISSG閣僚級会合に出席した」と述べた。毎週木曜日にジュネーブで開催されるISSG「人道問題会合」には,日本人外交官も参加している。
 日本は,シリアにおける人道支援及び技術支援の提供に貢献している最大の国の1つであり,2月にロンドンに行われた支援国会合にも参加,同会合では約120億米ドルの拠出が約束されたが,うち3.5億ドルが日本政府によるものであった。

 岸田氏は,「政治的解決に達するための取り組みとして,日本は,シリア内外の全てのシリア人を支援することを重視しており,シリアの復興と将来の開発に資するため職業訓練を提供し,女性の能力向上プログラムを立ち上げた。また,周辺国の負担軽減のための支援も実施した」と述べた。シリアの隣国,特にトルコ,レバノン,ヨルダンには,約420万人の難民が存在しており,負担の原因となっている。

 岸田氏によると,日本は昨年末までに12.6億ドルの支援を提供。また,国連総会に際して開催されたハイレベル会合において,本年中に11.3億ドルの支援を行う旨発表した。同氏は,「一刻も早く,シリアに安定が戻り,全てのシリアの人々が母国の再建のために手に手をとって協力し合う日が来ることを望む。我々は,日本の外交政策の柱の1つである『人間の安全保障』を念頭に,人道及び開発における支援を積極的に行っていく」と述べた。

 米が主導する対ISIL有志連合における日本の役割に関する質問には,「日本は,シリア及びイラクにおいて,いかなる軍事作戦にも参加していない。なぜなら,日本は,テロとの戦いにおいては,中東地域の安全保障を揺るがす根本的原因に対し,中長期的な解決策を創出する必要があると考えているからである。それ故,貧困,社会的格差,若者の失業といった問題を解決すると共に,中東地域における復興・開発を支援すべく最大限の努力を行っている」と答えた。更に,「日本は,『中庸が最善』の旗印のもと,『寛容で安定した社会』を構築するために,2016年から2018年の3年間で,2万人の人材育成等を行う約60億米ドルの支援を行う」と述べた。

 岸田氏は,最後の質問の回答として,「私自身は,第2次世界大戦中(1945年8月6日),世界で初めて原子爆弾が投下された広島市の出身である。当時,日本全体が戦火に曝され,私の故郷である広島も灰燼に帰したが,戦後70年以上に亘って日本は平和を希求し,経済大国として復興を遂げた。それ故,私は,シリア危機が一刻も早く解決し,シリア国民の生活に安寧が戻ることを,心から祈っている」と述べた。


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