寄稿・インタビュー
グランマ紙(キューバ)による安倍総理大臣インタビュー
(2016年9月22日付)
「日本は,キューバの経済及び社会発展のために尽力していく」
日本とキューバの400年以上に及ぶ交流で,これまで日本の総理がキューバを訪問したことはなかった。
両国の友好関係の象徴でもある支倉常長のキューバ訪問から4世紀以上を経て,日本の安倍総理は,ハバナを訪問し日・キューバ関係の新たな一章を開くという両国政府の意思を確かなものにする。安倍総理のキューバ滞在は,日玖関係にとって間違いなく歴史的な出来事であり,また,経済及び貿易関係を強く後押しするものである。
2006年から短期間ながら総理を務めた安倍晋三自民党総裁は,2012年12月に日の出ずる処の国の政府の手綱を手にした。2014年には再選され,現在3期目を務めている。
ニューヨークの国連総会に出席した安倍総理は,特にキューバとカリブ地域の現状における日・キューバ関係への期待と潜在性について,グランマ紙の記者に話してくれた。
(問)日本の総理によるキューバ初訪問の意義は何か。
(安倍総理大臣)日本とキューバには,1614年の慶長遣欧使節団に遡る400年以上の交流の歴史があります。美しい海に囲まれ,音楽,革命の歴史,世界遺産の街並みを有するキューバは日本国民を魅了し続けており,昨年の日本人訪問者数は前年比8割増で1万人を突破するなど,両国の関係はますます盛んになっています。
ラウル・カストロ議長のお招きを受け,日本の現職総理として初めてキューバを訪問できることを大変喜ばしく思います。今回の訪問において,カストロ議長と共に,両国の将来を語り合い,両国の交流の歴史を再び活性化したい,そう期待しています。
キューバ訪問中は,貿易及び投資の促進,開発協力のさらなる充実,観光交流の強化,学術交流の促進,さらにはスポーツ交流といった幅広い事項につき,率直な対話を実現したいと思います。日本として,キューバの経済社会発展に尽力していくことを,カストロ議長にお伝えする考えです。
また,非同盟諸国に大きな影響を持つキューバと,国連安保理改革,核軍縮,アジア情勢等国際社会における諸課題についても意見交換を行いたいと思います。
今回の訪問により,両国の友好親善にとって,新たなページを開く機会にしたいと心から期待しています。
(問)日本とキューバの関係の現状評価及び今後,特に今次ご訪問後の展望は何か。
(安倍総理大臣)私は,経済,学術,文化,スポーツといった幅広い分野において両国の関係を進展させていきたいと考えています。
経済面において,1970年から85年までは,日本はキューバの第二の貿易相手国でした。その面影は,現在でもキューバ市民に大切に使われている「日野」や「コマツ」の製品などに見ることが出来ます。
その後,両国の経済関係は低迷の時期が続きましたが,先日,両国がキューバの債務救済措置に合意したことを契機に,経済関係拡大の期待が高まっています。日本企業の関心も高く,本年,複数の経済ミッションがキューバを訪問しています。
このような中,本年11月には,東京で経済関係強化のための官民合同会議を開催し,また,ハバナ国際見本市において過去最大級の独立した日本館を出展します。
経済社会構造の現代化を推進するキューバにとって,日本企業は信頼できるパートナーとして大きく貢献できる,私はそう確信しており,官民を挙げてキューバと協力する考えです。また,ビジネス環境の整備等,両国が共に発展していくための経済関係の礎の整備を支援したいと考えます。
キューバは医療制度が充実し,1人あたりの医師数が多く,予防医療に取組むなど,日本にとっても学ぶところが多くあります。今後,医療機材の供与や技術協力等により,医療協力を拡大するなど,開発協力を新たな段階に進めていきたいと考えます。
文化面での交流も盛んです。キューバでは日本のアニメや「おしん」が人気と聞いておりますが,最近の日本をより身近に感じていただくべく,ファッションや食等の分野で明るく頑張る日本の女性の生き方を描いたテレビドラマ(「カーネーション」,「ごちそうさん」)を提供したいと考えます。
スポーツ分野での協力も忘れてはなりません。先日のリオデジャネイロ・オリンピックでは,ボクシング,レスリング,柔道をはじめ多くの種目でキューバ選手が活躍していたことは記憶に新しいですが,いよいよ,2020年の次期オリンピックは東京で開催されます。東京オリンピックにおいて両国選手の活躍を期待しています。特に再び公式種目となる野球では,ぜひキューバ代表と日本代表が決勝で対戦するのを見たいと思います。