寄稿・インタビュー

(2016年5月4日付)

「ラオスー日本関係」

平成28年5月9日

(問)ラオス協力は,外交関係樹立以降の60年間でどのように発展したか。

(岸田外務大臣)サバイディー(こんにちは)。1955年3月5日,日本とラオスは,外交関係を樹立しました。日ラオス外交関係樹立から60周年を迎えた年,トンシン首相(当時)の訪日時に,両国関係は「戦略的パートナーシップ」へと格上げされ,新たなステージを迎えました。これに呼応するように,昨今,両国間の要人往来が活発化しています。このような中,今回,外務大臣として初めてラオスを訪問でき,大変嬉しく思います。
 1991年以降,日本は,世界最大の対ラオス援助供与国として,一貫してラオスの経済社会発展に貢献してきました。日本は,これからもラオスの「戦略的パートナー」として,2020年までのLDC(後発途上国)からの脱却や,議長国ラオスのASEAN優先8分野の実現への貢献などを含め,ラオスの国造りに積極的に協力していきます。
 また,最近では,ODAに加えて,日系企業による対ラオス投資も活発化してきました。アデランス,ニコン,豊田紡織など大手日系企業も進出するに至り,日系企業のラオス投資への関心も急速に高まっています。
 このように,60年の歴史の中で,日本とラオス両国は,着実に友好関係を育んできました。私自身,日本の外務大臣として,今回の訪問を通じ,先月就任されたトンルン首相,サルムサイ外相とお会いし,新指導部との間でも,良好な関係を一層発展させたいと考えています。

(問)日本は,ラオスの開発協力に関して,どのようなビジョンと戦略を有しているか。また,これまで,過去に,日本はインフラ,農業,教育及び保健の分野で支援を行ってきた。今後はどのような分野に重点を置く予定か。理由とともに伺いたい。

(岸田外務大臣)昨年ASEAN共同体が発足し,経済統合が一層進展する中,ASEAN唯一の内陸国であるラオスの発展は,ASEAN統合強化の進展の鍵を握っています。
 地域の発展の鍵を握るラオスは,現在,2020年までのLDC脱却という目標の達成に向けた様々な取組を進めていると承知しています。
 この目標を達成するには,経済発展著しい周辺国との連結性の強化,更なる発展を実現するための産業の多角化・中小企業の発展・産業人材の育成,均衡の取れた都市・地方開発を通じた格差是正・貧困削減が,重要な課題であると考えています。
 日本は,このようなラオスを取り巻く現状,発展に向けた課題を踏まえ,ラオス側と緊密に相談しながら,支援を進めていきたいと考えております。
 支援を進めるにあたっては,昨年5月に発表した「質の高いインフラパートナーシップ」を具体化していきます。日本が得意とする,品質が高く,環境に優しく,防災にも強く,長持ちするインフラの整備を,技術的な支援と共に行っていきます。
 また,昨年11月に提唱した「産業人材育成協力イニシアティブ」の下,各国との対話を通じてニーズを把握し,持続的な成長に向けて産業人材育成をオールジャパン体制で支援していきます。
 こうした支援を含め,昨年7月,日メコン協力の方針「新東京戦略2015」を採択し,メコン地域に対して,今後3年間で7,500億円のODA支援を行うことを表明したところです。
 これらの取組を通じ,ラオスの支援を強力に進めていきたいと考えています。

(問)本年は,ラオスがASEAN議長国を務める。ASEAN経済共同体(AEC)の進展は,ラオスにとってチャンスとなるか,それとも課題になると考えるか。

(岸田外務大臣)ASEAN共同体が昨年末に成立したことで,ASEAN共同体の今後の行方に世界が注目しています。特にASEAN経済共同体に対しては,日本でも政府のみならず経済界も高い関心をもって注目しています。
 ASEAN共同体元年の議長国であるラオスは,共同体強化への取組をリードするという重要な責務と期待を担っています。
 タイやベトナム等に囲まれた内陸国としての特性は,今までラオスにとって不利だったかもしれませんが,ASEAN経済共同体の強化により,その特性を製造業や貿易の拠点,中継地として最大限に活かすことが可能になります。
 そのためには,インフラ整備といった物理的連結性のみならず,貿易やビジネスに関する制度面での連結性,人の移動を円滑にする人的連結性の整備が不可欠です。また,経済統合の影響に脆弱な中小零細企業や女性等に配慮し,全ての人々が経済統合に適切に参画していくことを支援することが必要です。
 私(大臣)は,ASEAN共同体強化に欠かせない連結性強化に,より一層取り組むべく,5月2日のバンコクでのASEANスピーチで「日・メコン連結性イニシアティブ」の立ち上げを提案しました。日本は,これらの取組を通じ,ラオス自身のこのような取組,議長国としてのASEANのための取組を全面的に支援してまいります。

                

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