寄稿・インタビュー

コリエーレ・デッラ・セーラ紙(イタリア)による岸田外務大臣インタビュー

(2016年3月19日付)

「脅威となる行動を止めるようイタリアから中国に働きかけを」

平成28年3月25日

 今年は, イタリアと日本が1866年に日伊修好通商条約を締結し, 国交樹立をしてから150年を迎える。本日, 岸田外務大臣はローマでジェンティローニ伊外務大臣と会談を行う。

(問)日本とイタリアは類似した歴史や価値を共有している。今日,イタリアは地中海,日本は東アジアにおいて,外交・安全保障上難しい局面にあるが,両国はこのような地域,また,世界の平和や安全の向上のためにどのような協力ができると考えるか。

(岸田外務大臣)日伊両国は,自由,民主主義,人権,法の支配といった基本的価値を共有するのみならず,世界に誇る歴史と伝統文化を有する点でも共通しています。日伊両国が直面する課題にも共通点があります。国内では経済成長と財政再建の両立,外交においても,ともに海に囲まれた海洋国家として海の平和と安定の確保などの課題に直面しています。移民・難民問題の対処においては,その背景にある地中海地域・中東地域の安定が不可欠であり,また,ウクライナや南シナ海等に見られる法の支配に対する力による挑戦に関しては,国際社会が一致して声を上げる必要があります。本年は日本,来年はイタリアがG7議長国を務めます。多くを共有しお互いを理解し合える日伊両国であればこそ,両国及び国際社会が抱えるこうした課題について,緊密に協力し,国際社会の取組をリードしていくことが可能であると確信しています。

(問)中国の台頭及び東アジアの現状に対する挑戦に,西側諸国はどのような対応をすべきと考えるか。

(岸田外務大臣)中国の平和的台頭は,日本やイタリアを始めとする世界にとってチャンスです。中国は日本にとって最大の貿易パートナーであり,国別で第1位となる約2万3千社の日本企業が中国で活動し,大きな雇用を生んでいます。また,両国間の人的往来は,昨年,前年から約230万人増の約750万人に達しました。一方で,中国は,日本の固有の領土である尖閣諸島における公船による頻繁な領海侵入,東シナ海における一方的な石油・ガス開発を継続しています。また,南シナ海においても大規模な埋立てや拠点構築など,一方的な現状変更の試みを更にエスカレートさせており,日本を含む国際社会に深刻な懸念を引き起こしています。これは,単にアジア太平洋地域の問題ではなく,法の支配に基づく国際秩序をいかに維持していくかという,欧州も含む世界全体にとっての問題です。日本やイタリアを始めとする国際社会が一致して,法の支配に基づく国際秩序に則って行動するよう,中国に対して働きかけを行っていくことが重要です。日本は,法の支配を始めとする価値を共有するG7のパートナーであるイタリアとも引き続き緊密に連携し,世界の平和と繁栄のために取り組んでいきたいと考えています。

(問)G7外相会合では何を優先議題とするか。

(岸田外務大臣)4月10,11日に私の地元広島においてG7外相会合を開催します。会合では,中東やウクライナといった地域問題に加え,テロ・暴力的過激主義対策,軍縮・不拡散,海洋安全保障といった問題は国際社会の喫緊の課題について議論したいと思います。テロ対処能力の向上や各国の連携強化はもちろんですが,そもそも過激主義を生み出さない社会を構築していく必要があります。このためにG7が果たすべき役割は大きいと考えます。軍縮・不拡散については,昨年のNPT運用検討会議以降,核兵器国と非核兵器国の対立が深まっていると感じています。また,先般の北朝鮮の核実験は,地域のみならず,国際社会全体の深刻な脅威です。このような状況だからこそ被爆地広島出身の政治家として,また世界で唯一の戦争被爆国である日本の外務大臣として,「核兵器のない世界」へ向けて前進を図るような力強いメッセージを発出したいと考えています。

(問)イタリアと日本の友好をさらに発展させるために,どの分野に焦点を当てるべきと考えるか。

(岸田外務大臣)今からちょうど150年前の1866年8月25日,日本とイタリアは外交関係を樹立しました。共に後発の先進国として近代化の道を歩み,第二次世界大戦後は揃って高度経済成長を実現しました。この150年間,日本とイタリアは着実にその友好関係を育んできました。日伊両国には多くの共通点があります。まずは南北に細長い国土と美しい自然。その恵みの中で育まれた食材を用いた両国の食文化は世界に誇るもので,いずれもユネスコ無形文化遺産です。今や,東京にはナポリよりも多くのピザ屋があるとまで言われるほど,イタリア料理は日本で愛されています。日本食もイタリアで人気を得ていると聞いて嬉しく思います。
 また,両国は,ともに永い歴史に育まれた豊かな文化と伝統を有しています。国交150周年を迎える本年,日伊両国において,文化行事を中心に数々の祝賀行事が予定されています。イタリアの皆様におかれては,この機会に日伊友好の歴史を振り返り,様々な形で「日本」に直接触れて頂きたいと思います。
 さらに,職人気質でモノ作りにこだわり,伝統技法と最先端技術を併せ持つ点も両国に共通します。近年,日立を始め,日本企業によるイタリアへの投資が相次ぎ,その経済関係が深まっていることを喜ばしく思いますが,両国の経済規模に鑑みれば,日伊経済関係には発展の余地が大きくあります。両国経済界の間で,150周年を機に,より一層の具体的協力案件が形成されることを期待しています。
 150年前を思い起こせば,当時両国の養蚕業者たちが互恵的な経済関係を希求したことが,遠く離れた両国の間に外交関係を樹立させた原動力となりました。折しも,その原点に立ち返るように,私もジェンティローニ大臣も経済外交の推進を外交の柱の一つとして掲げています。この150年の間に育まれた両国国民の友好関係の基礎の上に,経済面においてこそ,この先150年の日伊関係を方向付ける機運が生まれることを祈念しています。


このページのトップへ戻る
寄稿・インタビューへ戻る