寄稿・インタビュー

ルクセンブルガー・ヴォルト紙(ルクセンブルク)による安倍総理大臣インタビュー

(2015年12月1日付)

「安倍晋三総理大臣インタビュー“戦略的互恵関係”―日本とルクセンブルク,EU,COP21及び中国―」

平成27年12月3日

 ルクセンブルクのグザヴィエ・ベッテル首相から招待を受け,日本の安倍晋三総理大臣が今日,ルクセンブルクを訪れる予定である。訪問に先立ち,安倍首相は特別にルクセンブルク・ヴォルト紙の質問に答えた。

(問)日本とルクセンブルクの関係についてどう考えていますか。

(安倍総理大臣)まず初めに,ベッテル首相からは,かねてよりルクセンブルクへの訪問を招待頂いており,今回ルクセンブルクを訪問できることを大変嬉しく思います。皇室と大公家の親密な御関係を基礎に,両国関係は強固で良好であり,多くの日本人がルクセンブルクに親しみを感じています。
 両国間の経済関係も進展しています。7月にベッテル首相が訪日された際,「経済関係に関する共同発表」を打ち出しました。これに基づき既に10月には経団連のミッションがルクセンブルクを訪問しています。今回の私の訪問を機に,更なる関係強化を図りたいと思います。

(問)COP21の開催と同じ時期のルクセンブルク来訪となりましたが,この大規模な気候変動サミットに対する日本の貢献はどのようなものですか。

(安倍総理大臣)現在,EU議長国を務めているルクセンブルクとは,様々な国際問題の解決に向けても協力していきます。今般の訪問はCOP21の直後となりましたが,日本は気候変動問題について,すべての国が参加する公平かつ実効的な枠組みの採択に向けて,交渉に積極的に貢献していく考えです。国際社会の共通の課題である気候変動問題に向けて,引き続きルクセンブルクと緊密に協力していきます。

(問)新たな不況のおそれが懸念されていますが,アベノミクスは果たしてその有効性を証明していますか。その中で,安倍総理は,EUとの連携協定(EPA),米国との連携協定(TPP)に何を期待していますか。

(安倍総理大臣)私が政権についてからの3年間の流れをみて頂きたいと思います。アベノミクスによって日本国内の雰囲気は大きく変わり,15年続いたデフレから脱却するところまであと一歩というところまで来ています。名目GDPは,28兆円増え,500兆円を超えました。雇用も110万人以上増加しています。また,有効求人倍率も23年ぶりの高水準になり,企業収益は過去最高になりました。
 TPPの大筋合意をはじめ,コーポレートガバナンス,女性の活躍,農協・医療・電力分野の改革など,成長戦略を着実に実施しています。
 7-9月期の実質GDPは全体としてマイナス成長になっていますが,指標をよく見ると,特に自動車の在庫の減少が主な要因になっています。在庫が減少するとGDPの指標は実はマイナスになりますが,これは,今後に向けて良い傾向が出てきているということです。実質賃金の改善を受け,個人消費もプラスになっています。緩やかな回復基調は続いており,景気をしっかり下支えしています。
 現在,アベノミクスは第2ステージを迎えています。少子高齢化に歯止めをかけ,高齢者も若者も,女性も男性も,難病や障がいのある方も,誰もが今よりももう一歩前へ踏み出し,活躍することができる「一億総活躍社会」を目指していきます。
 世界経済に不安定さが残る中,環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の大筋合意の達成は非常に前向きなメッセージです。21世紀にふさわしい新たな経済ルールを構築し,人口8億人,世界経済の4割近くを占める広大な「一つの経済圏」を創るものです。そこでは,自由で公正な競争が促進され,イノベーションを活発にし,高い経済価値を生み出す力が発揮されます。TPPは,アベノミクスの成長戦略の核であります。
 日EU・EPAも,成長戦略の柱であり,EU経済にとっても発展の推進力です。日欧米三極が,経済関係の深化を同時並行的に達成することは,基本的価値を共有するパートナーである日EU双方にとっても戦略的に極めて重要な意義があります。
 日EU首脳間では,スピードと質の両方を重視しつつ,包括的かつ高いレベルのEPAを目指すことを確認してきており,11月には,大筋合意実現に向け年内も引き続き最大限努力しつつ,来年のできる限り早い時期に実現することで一致しました。

(問)総理の「積極的平和主義」と憲法解釈変更を伴う平和安全法制に不安を抱く人々に対してどのように応えていきますか。

(安倍総理大臣)平和安全法制や,国際協調主義に基づく「積極的平和主義」は,国際社会の平和と安定に日本が一層貢献するためのものです。この考え方については,私自身,外国訪問や各国首脳の訪日の際に,直接,丁寧に説明をしてきています。
 これに対し,米国はもとより,欧州,豪州,アセアン諸国,中東,アフリカ,中南米の諸国を始め圧倒的多数の諸国から,日本が地域や世界の平和と安定に,より一層の貢献を行うものとして,大きな支持を頂いています。

(問)日中関係は,特に領有権の主張や地域における強い対立関係により,近年,緊張状態にありますが,今後,実際の危機につながる可能性はありますか。

(安倍総理大臣)日中関係は全体として改善の方向にあります。習近平主席との二度にわたる首脳会談では,「戦略的互恵関係」の考え方に基づいて,関係を改善していくことで一致しています。11月初めの李克強総理との会談では,関係改善の勢いをさらに強めていくことで一致しました。

(問)日中間の領域問題についてはいかがですか。

(安倍総理大臣)中国は,東シナ海において,争う余地のない日本の領土である尖閣諸島周辺海域への領海侵入を繰り返しているほか,東シナ海の境界未画定海域での一方的な資源開発を繰り返しています。日本側から事態をエスカレートさせることはなく,毅然かつ冷静に対応してきています。法の支配・領土の一体性への挑戦等による一方的な現状変更の試み等に対しては,日本と欧州が連携して対応していくことも重要だと考えています。

(問)海洋問題における争点は何ですか。

(安倍総理大臣)南シナ海においても,大規模かつ急速な埋め立て等,中国の一方的活動が我が国を含む地域・国際社会の共通の懸念事項となっています。先般の東アジアサミットでは,南シナ海情勢が主要テーマとして議論され,海の平和と安全を守り,航行の自由を確保するため,各国が国際法に基づいて責任を持って行動し,緊張関係を生み出す行動を厳に慎むことに,強いコンセンサスが得られたことは,大きな進展でした。共通のルールの上に,関係国が対話を重ねることによって相互の信頼を培っていくことができると考えます。
 「戦略的互恵関係」の考え方に立って,今後も様々なレベルで対話を積み重ねながら,大局的な観点から安定的な友好関係を発展させ,国際社会の期待に応えていきたいと考えています。


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