寄稿・インタビュー

(2015年10月24日付)

「内閣総理大臣:日本は,タジキスタンとの協力を強化するつもりである」

平成27年10月28日

(問)今回の貴総理のタジキスタン訪問の主な目的は何か。

(安倍総理大臣)1992年2月の外交関係樹立以来,日本の総理大臣として初めてタジキスタンを訪問することができ大変嬉しく思います。今回の訪問では,初めてお会いするラフモン大統領と,政治,経済,文化など幅広い議題についてじっくりと議論したいと考えています。

 日本とタジキスタンの関係は,まだまだ,潜在力を秘めています。特に経済面での関係は発展の余地があります。今回,日本企業の代表が私に同行してタジキスタンを訪問します。それらの人々がタジキスタンの魅力に触れ,そこから新たなビジネス・チャンスが生まれれば良いと期待しています。

 また,日本は,タジキスタンの高度産業人材育成のための協力や,両国間の相互理解の深化のための文化行事の拡充など,二国間関係の強化につながる施策を打ち出していく考えです。

 特に,今回の訪問では,「中央アジア+日本」対話の枠組みで行われている農業協力の一環として,FAOと連携し,バッタ対策に関する無償資金協力のためのE/Nに署名します。農業国であるタジキスタンにとって,国境をまたいで発生するバッタの問題は大変深刻であると承知しています。日本の協力がタジキスタンにおける農業振興に役立つことを期待しています。

 日本は,国際協調主義に基づく積極的平和主義を掲げ,国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に寄与していく方針です。中央アジアにおいては,地域の安定に極めて重要な役割を果たしているタジキスタンとの連携が必要不可欠です。テロや麻薬など,地域が抱える深刻な問題についても,日本は,「中央アジア+日本」対話の枠内における協力を含め,タジキスタンとの連携を強化していきます。

 日・タジキスタン両国の間には,協力を進める上でいかなる障害もありません。今回の私の訪問をきっかけとして,両国の関係が一層強化され,相互理解及び相互信頼がますます深まり,両国の協力関係が大きく発展していくことを期待しています。

(問)日本とタジキスタンの二国間関係はこれからどのように発展していくのか。

(安倍総理大臣)日本は,タジキスタンの独立以来,地方の開発,経済・社会インフラの整備及び人材開発などの分野で,持続可能な発展に向けたタジキスタンへの支援を一貫して行ってきました。

 1997年の内戦終結後,国連タジキスタン平和構築事務所に奉職し,命を賭して平和構築のために尽くした秋野豊・国連タジキスタン監視団政務官の記憶は,日本において色あせることがありません。タジキスタンには同氏の名前を冠した学校がいくつかあり,今でも毎年慰霊会が行われている所もあると聞き,私は,タジキスタンの皆様の思いに胸が熱くなりました。

 先人たちの努力を受け継ぎ,日・タジキスタン両国の友好を深めていくことは私たちの使命です。両国が地域の重要なパートナーとして,二国間関係のみならず地域及び国際場裡においても協力し,中央アジアの安定と繁栄に貢献していくことが重要です。

 日本は,タジキスタンからの長年の要請に応え,ドゥシャンベに常駐する特命全権大使を来年から派遣することを決定しました。新しい大使の下,日本大使館は更に活動を活発化させていきます。

 また,文化・人的交流分野においても,連携を深めていきます。例えば,サッカーU-16及びU-19タジキスタン代表チームの監督として指導に当たられた方に,鈴木隣(すずき・ちかし)さんがおります。鈴木さんは東日本大震災の被災地の出身であり,津波でお父様を亡くされましたが,その中でも,タジクの若きサッカー選手を「ソムニの戦士(注:タジクの英雄の意味)」と育てるべく尽力されました。今後も,タジキスタン国民の皆さんと,日本の距離が大きく縮まることを願っています。


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