寄稿・インタビュー

CNN(米国)への岸田外務大臣寄稿

(2015年8月5日付)

「なぜ我々は決して広島を忘れてはならないのか」

平成27年8月6日

英語版 (English)

 1945年8月6日,一発の原子爆弾が,私の出身地である広島で13万人以上の命を奪いました。70年を経て,ある被爆者の言葉が私の心に特に深く刻み込まれ,実際,私自身の信念ともなりました。それは「被爆体験は思い出したくないが,2度と繰り返さないために忘れないようにしている。」という言葉です。広島及び長崎への原爆投下70年にあたり,より平和な未来を確保するためには,過去から学ぶことが不可欠です。

 日本は長きにわたり,核兵器を廃絶するための世界的な活動の第一線に立ち続けてきましたが,今日においても,そのコミットメントはこれまで同様に揺るぎないものです。世界の核兵器保有国が自ら核兵器を廃棄するとの考えに対し,多くの疑念があることは承知していますが,日本の外務大臣として,そして広島出身者として,「核兵器のない世界」という目標は達成可能であり,それを追求すべきであると心から信じています。

 地球上には現在,約16,000の核弾頭が存在しています。冷戦ピーク時の70,000からは大幅な削減かもしれませんが,依然として多すぎ,また,廃絶に向けた進捗は遅すぎます。

 2011年に米露間で署名された戦略核兵器削減条約(新START)は,この数をさらに削減するでしょう。しかし,核軍縮を追求するという責務は,最大数の核兵器を保有しているこの二か国だけにあるのではなく,他のすべての核保有国もいずれ核軍縮の交渉に参加すべきです。これを念頭に,いまだに核軍縮への努力に取り組んでいない国々に対し,核兵器の全廃という最終的な目標に向けて核兵器を削減するよう求めます。

 しかし,核兵器を廃絶するのであれば,核兵器への依存の高まりを防ぐことが喫緊の優先事項です。すなわち,核兵器数の削減には,安全保障戦略及び軍事ドクトリンにおける核兵器の役割と重要性を低減させる取組が伴わなければなりません。残念なことに,いまやいくつかの国では,その総合的な防衛戦略の中で,より大きな重点を核兵器に置いているように見受けられます。これは明らかに誤った方向への一歩です。

 先般,核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が正式なコンセンサスに達することができなかったことに,私は非常に残念に思います。それにもかかわらず,同会議の合意案の中には,世界の核兵器に関する完全な説明責任及び透明性の必要性など,広範な支持を得た要素が多く含まれており,これらは失われるべきではありません。配備及び備蓄された核兵器の正確な状況を把握しなければ,核軍縮の課題に適切に対処することはできません。また,透明性の向上により,この問題で進展がみられているのだと人々が確信を築いていくことができます。それゆえ,我々はすべての核保有国からの明確なデータを求めます。

 人々からの支援はこのような変革に不可欠であり,そのような考えから私は,世界の政治指導者と若者に対し,広島と長崎を訪問し,核兵器がもたらす壊滅的で非人道的な結果を自らの目で見ていただきたいと思います。このような訪問だけでも,核軍縮に向けた強力な原動力となると信じるものです。

 不拡散の問題は軍縮の問題と密接に関連しています。私は,北朝鮮に対し,国際社会からの再三の要求に従い,すべての核兵器及び現存する核計画を放棄するとのコミットメントを果たすべく具体的な措置を取ることを強く求めます。

 IAEAの保障措置制度の強化は,核物質の非平和的な利用への転用を防ぐ上で不可欠な手段であり,日本はこれを強く支持してきており,今後も支持します。また,アジア及び世界において,厳格な輸出管理の促進を続けていきます。

 イランとの核合意には当然世界中の関心が集まっていますが,私たちは,その合意を歓迎し着実な実施を望みます。このため,これらの措置を検証するにあたってIAEAが果たす極めて重要な役割と,天野之弥事務局長の強いリーダーシップを完全に支持します。

 今月には包括的核実験禁止条約(CTBT)に関する賢人グループ会合が,また来年4月にはG7外相会合がいずれも広島で開催されますので,これらの全ての課題について議論したいと考えています。

 4月に安倍総理とオバマ大統領は,核兵器不拡散条約に関する共同声明の中で以下のとおり述べました。「広島及び長崎の被爆70年において,我々は,核兵器使用の壊滅的で非人道的な結果を思い起こす。広島と長崎は永遠に世界の記憶に刻み込まれるであろう。」

 この声明でも明らかなように,我々が後世に残すべき遺産は,日本が原爆による破壊を目撃した地球上で最初の,そして最後の場所であり続けるというものでなければなりません。


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