寄稿・インタビュー
グランマ紙(キューバ)による岸田外務大臣インタビュー
(2015年4月30日付)
“日本がキューバにおいて信頼できるパートナーとして歓迎されることを期待”
日本の外務大臣によるキューバへの初の公式訪問は,両国のつながりにおいて歴史的な出来事となる。今日のキューバ及び地域情勢を踏まえた文脈において,岸田文雄外務大臣は二国間関係の将来性とポテンシャルに関し,グランマ紙に語った。広島県選挙区の自民党衆議院議員である岸田大臣は,2012年に日本外交の舵を取った。米国のボストン,ニューヨーク,ワシントンを訪問しハバナに到着する前に,岸田大臣は,メールにてグランマ紙に対し,「キューバは日本人にとってなじみ深い国であり,二国間関係をさらなる高みに引き上げたい」旨明らかにした。また,地元である広島の平和記念公園に,革命の歴史的指導者であるフィデル・カストロが訪問したことを想起し,「平和記念資料館には,訪問の際の写真と平和に向けたメッセージが今も飾られている」旨語った。
【問】大臣は現在の二国間関係をどう評価されるか。
【岸田外務大臣】日本とキューバとの友好の歴史は意外に長く,古くは1614年,伊達藩士・支倉常長一行がキューバに上陸したことから二国間交流は始まりました。昨年は日本・キューバ交流400周年として様々な記念事業を行い,両国の関係が更に緊密化したことを喜ばしく思います。
こういった長い友好関係もあり,日本にはキューバ・ファンも多く,現在の二国間関係は極めて良好だと認識しております。両国には,立場の異なる問題もありますが,そのような点も含め,率直な対話も行ってきています。また,両国関係は更に拡大・深化できる余地があります。日本の外務大臣として初めてキューバを訪問することを契機に,日本とキューバの関係がより親密なものとなることを強く期待します。
1970年代始めに好調だった二国間経済関係は,キューバの経済状況悪化に伴い停滞しましたが,再び明るい兆しが見えてきました。債務問題にも進展があり,また,米・キューバの関係改善に向けた協議は,地域の安定的発展を進めるものとしても注目されています。
【問】2014年,両国は最初の日本人がキューバの地を訪問してから400周年を祝ったところ,今後,日本でキューバがどのように認識されることを望まれるか。また,今後,日本のどういった点がキューバで評価されることを望むか。
【岸田外務大臣】昨年7月に初めて海上自衛隊練習艦隊がハバナに寄港したほか,10月には,総勢200名を超える日・キューバ交流400周年記念代表団がチャーター便でキューバを訪問するなど交流が深まりました。
日本人にとってキューバはWBCでの対戦やプロ野球でのキューバ選手の活躍により野球,そしてヘミングウェイとの縁や音楽,観光などを通じてなじみ深い国です。経済面でも本年3月には,カブリサス閣僚評議会副議長が訪日されましたが,その際に行われた投資機会セミナーには多くの日本企業が出席しました。さらに今回,私と共に日本企業の代表団もキューバを訪問していますので,これからは貿易・投資の有望な相手国としてのキューバという認識が高まることでしょう。
一方,キューバにとって日本は黒澤映画や座頭市,「おしん」などを通して昔から知られていると承知しています。私のキューバ訪問を機に,両国の政治・経済関係が活性化し,協力・交流が広がり,キューバの方々にとって一層日本が身近な存在となることを期待しています。
また,日本は昨年ODA60周年を迎えましたが,日本の持つ開発協力の経験を活かし,現在キューバで行われている経済社会改革を後押しし,キューバ国民の生活の向上にもつながるよう,経済協力を進めていきたいと考えており,日本がキューバの発展のための信頼できるパートナーとして歓迎されることを期待します。
【問】キューバ訪問が実現する現下の国際情勢をどのように評価されるか。
【岸田外務大臣】昨年末にラウル・カストロ国家評議会議長とオバマ米国大統領から発表された,キューバと米国の外交関係再構築に向けた協議の開始というニュースは,瞬く間に世界を駆け巡りました。
日本政府としても,キューバと米国との国交正常化交渉開始は地域の更なる安定と発展に寄与するものとして歓迎し,支持します。また,パナマで行われた先の米州首脳会合に初めてキューバが参加し,ラウル・カストロ議長とオバマ大統領との間で,国交断絶後初となる首脳会談が行われたことを,歓迎します。
これらの動きは,日本との関係にもプラスになるものと考えており,その進展に期待し,可能な範囲で後押ししていきたいと思います。政府のみならず,日本企業もキューバと米国の関係改善の動きを受け,一層,キューバへの関心を強めているようです。このように,キューバをめぐる国際情勢が変化している中でキューバを訪問できることは,日・キューバ関係を更なる高みに引き上げるに際し,非常に有意義であると考えます。
【問】大臣は2013年4月29日,メキシコにおいて演説された際,協力・補完関係の強化に向けた新対中南米外交政策を明示された。これらの原則をどのようにキューバへ適用するか。
【岸田外務大臣】2013年4月,私は,「中南米と共に新たな航海へ」と題するスピーチを行い,その中で,日本と中南米が互いに助け合い繁栄を実現すること,及び,共通のルールによって平和が保たれるより良い社会を作ることを2つの柱とする新たな対中南米政策を発表しました。
1つめの柱である,互いに助け合い繁栄を実現するため,引き続きキューバの持続的発展のために社会経済基盤整備,保健医療,農業開発,環境・気候変動対策等について支援を行っていきます。また,今後,ビジネス環境が更に改善し,両国の経済関係が深まることも期待しており,これらを通じ,共に発展していきたいと考えています。
2つめの柱である,より良い社会を作るため,国際場裡での相互の立場の理解や連携を深めたいと考えています。例えば,一昨年9月中南米諸国全33か国が加盟するラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)と日本との外相会合を行いました。
同会会合において,私は,当時CELAC議長であったキューバのロドリゲス外相との間で日・CELAC関係強化で一致しました。今回の訪問を契機に,今後より幅広い分野で協力を深めていきたいと考えます。