寄稿・インタビュー

2015年1月19日付

平成27年1月26日

 昨年5月にネタニヤフ首相を日本にお迎えした後,今回私は日本の首相として,イスラエルを訪問しています。お互いの閣僚・政府要人の行き来も活発化しています。

 日・イスラエル外交関係は,既に63年の友好の歴史を重ねます。しかしイスラエル建国以前より,日本との友好関係は存在しました。戦時中に日本人外交官杉原千畝氏が発行した「命のビザ」により,6千人ものユダヤの人々が日本に避難されました。

 2011年の東日本大震災時には,イスラエルからは医療チームを世界に先駆けて日本へ派遣頂きました。また,その後もイスラエイドが日本で活動を継続しています。国民を代表して改めて感謝申し上げます。距離は遠くても心の近い国として,これまで脈々と友好関係を温めてきた一つの証だと思います。

 私とネタニヤフ首相が昨年5月に署名した共同声明では,政治,経済,安全保障,人的交流等,さまざまな分野で包括的に関係を発展させることに合意しました。現在,この共同声明で謳われた様々な目標を実現するために,産業分野の研究開発協力等,実務レベルで具体的な協力が進んでいることを嬉しく思います。私の訪問直前にイスラエル政府が発表した,経済協力を大幅に強化する計画も大いに歓迎します。私の訪問により,この流れが一層加速することを願っています。

 中東地域は,世界有数のエネルギー供給源と物流の要衝であり,テロ・大量破壊兵器の拡散防止のための重要な地域です。中東地域の平和と安定は,日本と世界の安定に直結します。私が就任以来の2年間,今回で5回目となる訪問を行っていることは,日本にとって中東が非常に重要な地域であることの証左です。

 イスラエルとパレスチナの共存は日本の願いです。日本は,イスラエルと将来の独立したパレスチナ国家が平和かつ安全に共存する二国家解決を支持しており,両当事者への直接の働きかけや信頼醸成の取組,パレスチナへの経済援助等長年支援を行っています。

 昨年,直接交渉の中断以来,ガザ紛争,西岸・エルサレムでの騒擾等,中東和平に否定的な影響を与える事案が多々発生している現状を懸念しています。真摯に対話が出来る環境を整えるよう,両当事者が互いに呼応する建設的な措置をとる必要が,かつてないほどに高まっています。日本は,双方に対して,交渉に向けて前向きな姿勢をとるよう様々な機会をとらえて働きかけています。

 隣人といかなる隔たりがあろうとも,信頼関係を築き,対話を通して根気強く話し合う。過去,苦難を多く経験し,イスラエルを建国した道のりを考えれば,中東和平問題の解決は,その根気強さをもってすれば,不可能ではないと考えます。

 かかる対話に向けた良好な環境を作る上でも,真の友人として,あえて助言させて頂きたいのは,国際社会が国際法違反とみなす入植活動についてです。イスラエル側にも言い分があることは承知しますが,入植政策推進が及ぼす影響について,イスラエル側はより配慮し,同政策を見直すことを改めて求めます。

 また,両当事者に真摯な交渉を呼びかけてきている日本としては,不買運動のような当事者の一方をボイコットするような動きには明確に反対します。日本は友人として,イスラエルが国際社会で孤立しないことを願っています。

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