寄稿・インタビュー


(2014年8月1日付)

平成26年8月11日

“日本とブラジル,強い関係”

 日本とブラジルは地球の反対側に位置するが,長きに亘り様々な分野で関係を構築し,交流を深めてきた。この数年間,長きに亘る信頼関係を基礎として,日本とブラジルの絆は,一層拡大・強化している。またブラジルと日本は,自由,民主主義,人権の尊重及び法の支配といった基本的価値観を共有している。日本は,ブラジルと二国間のみならず,国際場裏での協力もさらに推進する所存である。

 経済分野では,約2億人の巨大な市場やインフラ整備,エネルギー分野等での大きな投資機会を背景に,ブラジルにおける日本企業の数は約700社に増えた。今回の自分のブラジル訪問では,人材育成といった協力を通じて,両国のビジネスの後押しをしたいと考えている。

 両国間の交流の一例は,両国の漫画の有名なキャラクターである「モニカ」と「鉄腕アトム」である。モニカと仲間たちの生みの親であるマウリシオ・デ・ソウザ氏と,アトムの手塚治虫氏は,友情を育んでいた。両国の著名な漫画家は太平洋を越えて交流し,それぞれのキャラクターが共演する作品を共同制作したと聞いた。

 政治・経済分野のみならず,二国間関係は,教育・科学技術,及び青年・スポーツ交流を通じてより幅広いものとなり,これをさらに一層強化することは,今回のブラジル訪問のテーマの一つとなっている。留学生交流の促進や,2016年リオデジャネイロ・オリンピック・パラリンピック及び2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い,ブラジルとのスポーツ交流事業を一層推進したい。これらのスポーツ・イベントを考慮し,我国は「Sport for Tomorrow」(英語で明日のためのスポーツの意)と称するプロモーションを通じて,国際貢献策を実施している。右貢献策の一環として,民間団体とも協力しつつ,今回の訪問において,柔道着,卓球ラケット及び野球・ソフトボール道具一式をブラジルのアスリート達に寄贈する。

 日本とブラジルの関係発展の歴史は,日本人移住者及びその子孫の果たした役割抜きには語れない。祖父の岸信介が日本国総理大臣としてはじめてブラジルを訪問した1959年当時,ブラジル日系社会は40万人により構成されていた。しかし,現在は,様々な分野で活躍している160万人の子孫により海外最大のコミュニティを形成している。次世代を担うこれらの方々との関係も構築していきたい。

 ラテンアメリカの国々は,6億人の市場を抱え,世界経済の成長のエンジンの一翼を担っている。日本がラテンアメリカ諸国との友好と連帯の歴史に基づく特別な絆を一掃強化することを願っている。

 経済面では,内閣発足後,「大胆な金融政策」,「機動的な財政政策」,「民間投資を監視する成長戦略」からなる「三本の矢」として知られる政策パッケージにより,デフレから脱却し,経済は再活性化しつつある。他方,人口減少及び高齢化は,労働力人口,社会保障制度の支え手の減少などを通じて,財政の悪化など経済社会に様々な影響を及ぼすと考えており,喫緊の課題となっている。こうした中,経済再生との両立を図りつつ,2015年度に2010年度比でプライマリーバランス赤字を半減し,2020年度に黒字化するという財政健全化目標の達成に向け,着実に取り組んでいる。

 また,少子高齢化が急速に進む中で持続的成長を実現するため,女性の労働参加率を高めるとともに,世界中から,高度な技術を持つエキスパートや資格を持った外国人の来日を促すことにしている。日系人は,日本に対する信頼の礎であり,より多くの人達が日本で働く意欲を持つことを期待する。


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