寄稿・インタビュー
エル・ティエンポ紙(コロンビア)による安倍総理大臣書面インタビュー
(2014年7月27日付)
“日本とコロンビアの間で新たな歴史を紡ぐことを期待する”
(問) 100年以上に及ぶ両国外交の歴史上,日本の首相が初めてコロンビアに来訪されるが,今回の訪問にはどのような意義があるのか,また日本は,コロンビアの経済,社会,そして文化における将来性について,どのような展望をもっているかを教えていただきたい。安倍政権は,新たな地政学的挑戦を前に,軍事的にも経済的にも国際的立場を再定義しようとしているが,中南米諸国及び太平洋同盟とはどのような立場をとるのか。
(安倍総理大臣) 日本とコロンビアの関係は,今から100年以上遡り,1908年5月25日に調印された「修好通商航海条約」により始まりました。父の安倍晋太郎は,1985年に,日本の外務大臣として,初めてコロンビアを訪問しました。私は,2008年5月の日コロンビア外交関係樹立100周年での訪問に引き続き,両国関係がかつてなく緊密化し,両国が共に勢いのある現在,日本の総理大臣として初めてコロンビアを訪問することができ,非常に感慨深く思います。
日本ではコロンビアのコーヒーが親しまれ,作家の故ガルシア・マルケス氏の作品が読まれています。最近のサッカー・ワールドカップではコロンビアチームと対戦し,日本中が両国代表の勇姿をたたえました。
経済面では,2008年に交渉開始で合意された日・コロンビア投資協定が,2011年9月のサントス大統領訪日の際に署名されました。日・コロンビアEPA交渉も進展してきています。
コロンビアは,2012年に設立された太平洋同盟への参加も含め,中南米地域において最も発展の目覚ましい国の一つとして世界の注目を浴びつつあります。
私が今回の訪問でコロンビアの皆様にお伝えしたいのは,日本は,太平洋で結ばれたパートナーとして,二国間関係のみならず国際場裡でも一層協力関係を強化したいとのメッセージです。また,治安問題を克服する等数々の困難を克服し飛躍の時を迎えたコロンビアへの心からの尊敬をこの機会に示したいと考えています。
コロンビア国内情勢の安定を背景とした経済面での今後の一層の発展の可能性については改めて言うまでもありません。日本も,2011年3月の東日本大震災という苦難がありましたが,コロンビアを含めた国際社会の温かい支援を得つつ,経済の再生を果たしてきました。
故ガルシア・マルケス氏やフェルナンド・ボテロ氏などを輩出したコロンビアの社会が,文化面や芸術面で備えている底知れないパワーと魅力は国際的にも十分に知られているところです。このような分野でも更に交流を深め,日本とコロンビアの間で新たな歴史を紡ぎ出したいと考えています。
(問) 日本とコロンビアはEPA締結に向けて交渉中であるが,今後交渉を順調に進めていく上で,どの点が最も困難であり,それを乗り越えるために何が必要であるか。また,本年4月末にマツダコロンビア自動車が工場を閉鎖し,国内のあらゆる業種に懸念が広がっている。日本はコロンビア国内産業育成において興味はあるか,また興味があるならどの分野への投資に魅力を感じているかを教えていただきたい。
(安倍総理大臣) 日本とコロンビアのEPA交渉において重要な点は,お互いがお互いの関心や利益,更にはセンシティビティを十分に考慮した上で意味のある成果を出し,EPAを通じて両国経済にもたらす利益を最大化することです。物品の貿易,サービスの貿易の自由化を通じて,両国間でウィン・ウィンの関係を築くべく,出来る限り早期の合意を目指し,交渉を進めていくことが必要です。
最近,コロンビアの市場規模,豊富な資源,近年の著しい治安の改善,開放経済の推進等によって,日本企業のコロンビアへの関心,投資意欲は大きく高まっています。既存の資源,自動車に加え,医療,食品関連,情報通信等の新しい分野でも近年新規投資が行われています。
日・コロンビア間では2011年に投資協定が署名されており,その早期の締結が期待されます。EPA及び投資協定の締結の相乗効果により,また,鉱工業分野を中心とした関税の削減・撤廃等コロンビアの投資環境が今後更に整うことによって,日本の対コロンビア投資が飛躍的に拡大することを期待します。
日本が締結した他のEPAの経験から申し上げても,EPAの締結は,日本からコロンビアへの投資を拡大する効果を持つと期待されます。両国の経済関係の緊密化が,コロンビアの国内産業の成長にもつながっていくと信じています。