寄稿・インタビュー


(2014年7月28日付)

平成26年8月11日

“日本とカリコム諸国間の友好の絆を強めたい”

(問) 日本の総理大臣にとって,今般が初めてのトリニダード・トバゴ(TT)及至カリブ地域訪問と承知する。本訪問は,幅広い関心事項における,日本とTT及びカリコムとの関係強化に向けたより直接的なアプローチをとる用意が日本政府にあるという意思表示か。さらに,カリコム市場における日本製品は伝統的に自動車及び電子商品である。右に加えて,TTでは,総工費8億5000万米ドルの石油化学工場建設のため打ち出された日本の巨大企業である三菱とTTの大規模企業であるマッシー社の提携といった大幅な進展が見られる。日本・TT間及びカリコム全体との経済関係を拡大深化させる新たな展望はあるか。

(安倍総理大臣) 日本の総理として初めてトリニダート・トバコを訪問できることを非常に光栄に思います。

 カリブは妻昭恵と新婚旅行で訪れた忘れがたい土地です。詩人デレック・ウォルコットが詠ったような,自然美と多彩な文化に触れ,深い感銘を受けました。再び訪れることができ嬉しく思います。

 私は,日本とカリコムには物理的な距離を超越した共通の親和性があると信じています。それは,共に海に囲まれ,海の恵みに生き,海の安全を己の安全とする海洋国家としての連帯であり,共通の関心,課題,価値観の共有です。私は,カリコム各国首脳との対話を通じて,この絆を確認し,強化したいと思います。

 日本とカリコム諸国を結ぶ絆の一つは海洋・島嶼国としての連帯です。日本は,自らも小島嶼を抱える国として,気候変動対策,廃棄物処理,水産業の能力強化等の課題に対し,日本の技術や知見を活用した様々な協力を実施してきました。

 日本の協力に共通するのは,一緒に課題に向き合い,技を伝え,心を繋ぐ支援であることです。日本は今後とも,持続的発展と脆弱性克服に向けた支援を行っていきます。

 カリコム諸国は,日本にとって天然ガスやコーヒーなどの供給源として重要です。再生エネルギーや電力分野等の開発にも関心が集まっています。日本の投資は,人材育成,技術革新等を通じて地域にも貢献するwin-winの関係です。今回の私の訪問には,日本を代表する企業トップが同行しており,日・カリコム間の経済関係の活性化に繋がることを期待しています。

 経済の持続的発展も,ルールに基づく国際社会の平和と安定があって初めて実現します。私は,海洋においては(1)国際法に照らして正しい主張をし,(2)力や威圧に頼らず,(3)紛争はすべからく平和的解決を図るという3つの原則を主張しています。海洋境界の平和裡な合意の経験を有するカリコム諸国からも多くを学ぶべきだと思います。

 カリコム諸国には,基本的価値を希求し,これを実現してきた誇るべき伝統があります。日本とカリコム諸国は,世界における平和と安定の灯火(あかり)として,持続的発展に向け連携し,国民間の善意の絆を強化し,グローバルなパートナーとして国際社会の安定と繁栄のために歩んでいきたいと思います。今般のカリブ訪問が,その第一歩となれば幸いです。


(問) カリコム諸国は気候変動に対し脆弱である。また,日本は島国として気候変動問題へ対処することに積極的な関心を明示している。右問題への取組みに向けた,カリコム諸国支援のための見込み如何。

(安倍総理大臣) ハリケーンや気候変動による海面上昇など,カリコム諸国が抱える様々な問題への対応の必要性は,島国に暮らす私たち日本国民も共有するところです。このため,日本は対カリコム支援の重点分野の1つに「環境・防災」を掲げ,気候変動対策支援に積極的に取り組んできています。

 明日28日には,トリニダード・トバゴにおいて,約15百万ドルの無償資金協力「The Project for Japan-Caribbean Climate Change Partnership」が署名される予定です。この協力は,国連開発計画(UNDP)を通じ気候変動政策の策定支援,緩和・適応技術移転のためのパイロット・プロジェクトの実施,情報共有体制の構築・強化を行うものです。

 カリブを初めて訪問する日本の総理大臣として,カリコム諸国の気候変動対策に広域的に資する同プロジェクトの署名に立ち会えることを大変嬉しく思っています。

 日本は今後も,島国としての経験に培われた技術や知見を活かしつつ,カリコム諸国のニーズに応える支援を実施していく方針です。こうした協力を通じて,日本とカリコム諸国が共に気候変動問題に取り組んでいくためのパートナーシップ関係を一層強化したいと考えています。


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