寄稿・インタビュー


(5月2日付,4面)

平成26年5月2日

「日本は人材育成に注力」

岸田文雄日本国外務大臣,第5回アフリカ開発会議(TICADV)行動計画及び宣言につき,日本の具体的取組を語る。


(問)
 日本は,カメルーンに対して40億CFAフランのノンプロジェクト無償を供与した。カメルーンは,2035年までに新興国となることを目標に「成長と雇用のための戦略文書(GESP)」の実施を約束した。日本は,この目標達成のためカメルーンをどのように支援していく予定か。

(岸田外務大臣)
 日本は,カメルーンが独立した1960年から外交関係を築いており,友好的な二国間関係が続いている。2002年の日韓ワールドカップでは,大分県中津江村がカメルーン代表のキャンプ地となり,選手と村民との交流が大きな注目を浴びた。中津江村の皆さんは,本年のブラジルワールドカップでも,カメルーン代表を応援していると聞いており,両国の交流が根づいていることを嬉しく思う。
 両国間の友好関係は国レベルにおいても良好である。例えば,日本は経済協力を通じ,カメルーン全土でこれまで277の小学校,1521の教室を建設し,子どもたちのための整った教育環境づくりに貢献している。今年3月末には,極北州の4万人の市民に安全な水を供給するプロジェクトに署名した。
 2013年,TICADVを開催した。アフリカ全体の主体的な取組を支援するため,「強固で持続可能な経済」,「包摂的で強靱な社会」及び「平和と安定」を促進することとしている。カメルーンとの間では,同政府策定の「成長と雇用のための戦略文書(GESP)」に基づく取組を支援するため,教育を中心とする人的資源開発,中小企業振興等を中心とする経済開発,農業・農村開発の分野において重点的に支援を展開していく考えである。支援は,日本の知見・経験を活かしたものとなる。
 今回,私は日本の外務大臣として初めてカメルーンを訪問する。カメルーンのムココ・ムボンジョ外相をはじめ,カメルーン要人と会談し,日本のカメルーン支援策等について議論する予定である。

(問)
 2013年6月3日,TICADVは,横浜で共同宣言及びアフリカ行動計画を発表して閉会した。この2つの重要な約束の実施につき1年目をどのように評価するか。

(岸田外務大臣)
 日本は,昨年のTICADVにおいて今後5年間で官民合わせて最大3.2兆円の取組を含むアフリカ支援パッケージを発表した。ここカメルーンで開催される閣僚会合において,私から,この1年間に日本が官民併せて実施した支援の進捗状況について発表する予定である。1年目としては充分良いスタートを切っていると考えている。
 加えて,昨年11月には貿易・投資促進官民合同ミッションを中・西部アフリカ(コンゴ民主共和国,ガボン,コートジボワール)に派遣し,今年の1月には安倍総理大臣がTICADVでの約束通りアフリカ3か国を訪問するなど,日本はアフリカの発展に向け,様々な支援や,協力関係の強化をはかってきた。
 今回の私の日本外相として初めての歴史的なカメルーン訪問,そしてカメルーンでの第1回TICADV閣僚会合開催は,日本がTICADでの約束を守る固い決意を具体的に示すものである。日本は,引き続き,表明した支援を着実に実施していく。

(問)
 ヤウンデで開催されるアフリカ外務大臣会合はTICADプロセスにとってどのような重要性があるのか。

(岸田外務大臣)
 今次会合は,TICADV後,アフリカ大陸で開催される第1回目の閣僚会合であり,中部アフリカ地域での初めてとなる歴史的なTICAD会合である。この会議を,日本にとって重要なパートナーであるカメルーンがホストし,各国・機関からの代表を受け入れることは,日・カメルーン関係上も重要な事柄である。カメルーン政府及び国民の皆様に心から祝意を表する。初めてカメルーンの地を踏めることを楽しみにしている。
 今回の閣僚会合では,今後,アフリカ,日本及び国際機関がどういった取組をしていくのかについても議論する。TICADVの合意が,着実に実施されることを閣僚レベルで確認する上でも,今次会合は極めて重要な意味を有している。
 アフリカ,そして世界にとって重要且つタイムリーなイシューを議論することで,今後のTICADプロセスに向けた日アフリカ協力の方向性を探るとともに,グローバルな場での今後の議論に貢献することを期待している。

(問)
 横浜宣言では,過去20年のアフリカ諸国の発展を満足できるものとしつつ,引き続き解決していく挑戦が残っていることを述べている。これまでどのような進展があって,会合ではどの課題につき議論されるのか。

(岸田外務大臣)
 TICADプロセスが始まり,この20年間,アフリカは躍動する大陸として,高い経済成長を遂げてきた。他方で,依然として,保健,教育,貧困といった様々な問題を抱えているのも事実である。
 今回の会合では,特に「農業,食料・栄養安全保障」,「ポスト2015年開発アジェンダ」,「女性と若者の能力強化」について議論する。
 AUは,今年を「アフリカ農業・食料安全保障年」と定め,農業の変革に向けた取組を行っている。また,来年はミレニアム開発目標の目標年となっており,国連の場を含め,世界中で「ポスト2015年開発アジェンダ」についての議論が盛んに行われている。更に,アフリカの労働人口の大部分を占める農業の発展のためには,女性と若者の能力強化が不可欠である。
 いずれの分野も,アフリカ主導で取り組んでいる一方で,未だに改善すべき課題が山積しているのも事実である。また,これらの分野は日本を含む国際社会全体にとっても極めてタイムリー且つ重要なテーマである。数あるテーマの中でも,特に緊急性の高いこの3つのテーマについて議論するものである。
 日本は,今次会合の結果を踏まえつつ,アフリカやTICADパートナーと共に,今後ともこれらの挑戦について協働していく所存である。

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