寄稿・インタビュー


『日豪の「特別な関係」が始まる』

2014年7月8日付

平成26年7月24日

(問)日豪間の経済連携協定(EPA)署名は,二国間の経済相互依存関係及び日本国内のアベノミクスの進展,あるいは経済改革にどのような影響を与えるのか。また,かかる関係により両国は特別なパートナーシップとなりえるのか。

(安倍総理大臣)今から57年前の1957年,私の祖父である当時の岸総理は,戦後初めて豪州からの首相としてメンジース首相をお迎えし,日豪通商協定の締結を主導しました。これを契機に,日本と豪州の経済関係は大きく進展し,その後の日豪の強固なパートナーシップの礎となりました。

 その時代から現在に至るまで,自由貿易の推進は日本の対外通商政策の柱です。日本経済が力強い経済成長を達成するためにも,自由貿易体制をこれまで以上に強化し,外国の活力を日本の成長に取り込む必要があると考えています。

 日豪EPAは,日本がこれまで締結してきた二国間EPAの相手国のうち,最大の貿易相手国とのEPAです。経済的意義にとどまらず,普遍的価値と戦略的利益を共有する豪州との関係強化に寄与するものです。また,環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をはじめとするアジア太平洋地域における自由な貿易や投資,新たなルール作りを促進することを期待しています。

 日豪EPAの署名は,「戦略的パートナーシップ」から更に特別な関係へ発展する日豪関係の深化を象徴するものです。祖父が達成したように,私も,このEPAが日豪両国の新たな時代の礎となるよう願っています。

(問)安全保障分野で強化された日豪間の協力は,地域の平和と安定にどのように寄与するのか。日本のこの分野での協力に潜水艦の推進システム等の主要な防衛技術の輸出は含まれるのか。両国は戦略的パートナーと呼べるのか。東シナ海及び南シナ海における中国の行為は,地域の不安定化や中国の最終的な目的に対する地域諸国の不安をかき立てる一因となっていると考えるか。

(安倍総理大臣)日本と豪州は,自由,民主主義,法の支配,基本的人権といった普遍的価値に加えて,地域及び国際社会の平和,安定及び繁栄を護っていくとの戦略的利益を共有しています。

 日豪両国は,これまで具体的な防衛協力を深め,「戦略的パートナー」と呼べる関係を築くに至っています。日豪は,昨年11月~12月のフィリピン台風被害への支援や,今年3月~4月のマレーシア航空機捜索といった人道支援・災害救助,PKOといった国際貢献の現場で協力し,防衛当局間の共同訓練や交流も進めながら,地域の平和と安定に貢献してきています。

 今後も,防衛装備移転協定の署名等を進めることにより,私は,「戦略的パートナーシップ」を一層強化し,両国を新たな特別な関係に引き上げたいと考えています。

 防衛装備移転協定が発効すれば,防衛装備・技術の移転を伴う共同開発等ができるようになります。日豪間では,すでに科学技術分野の基礎研究である,流体力学分野に関する共同研究に合意しています。この技術は,潜水艦を含め,様々な種類の船に応用可能です。

 中国は,日豪とともにアジア太平洋地域の平和と繁栄のために大きな役割を果たさなければならない大国です。

 中国が国際的な規範を共有・遵守しながら,地域の課題に建設的かつ協調的な役割を果たすことを強く期待しています。

 日中関係は切っても切り離せない関係です。隣国であれば様々な懸案が生じます。私は,「戦略的互恵関係」の基本的考えにのっとり,大局的観点から中国との関係を発展させていきたいと考えています。私の対話の扉は常にオープンです。中国にも同様の姿勢を期待しています。


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