寄稿・インタビュー
ニュージーランド・ヘラルド紙 安倍総理大臣書面インタビュー
「安倍総理はTPPにおいてゆるぎない姿勢」
2014年7月7日付
日本の安倍晋三総理大臣はTPP交渉における日本の役割への批判に対しても動じない。日本は農業市場のアクセス対して強硬路線をとっており,その野心的姿勢は,ニュージーランドと米国の農業ロビーグループが日本抜きで協定を妥結させようとする動きを生んでいる。ジョン・キー首相は先月のワシントン訪問でこのような動きを是認しかけたが,同首相は日本を含めた協定妥結が好ましいと強調した。
報道によれば,6月19日にキー首相が米国商工会議所において,日本がもし市場アクセスの条件を改善しない場合には日本を除外するべきかと聞かれて,「日本,カナダ,メキシコとの間で,彼らが協議に加わった際に,この協定が包括的,高水準なものであることがこの交渉に加わった際の条件であることは,我々に明確であった。」と答えた。「もし日本がこれらの条件を満たせず,他の11パートナーが満たすことができるのであれば,11パートナーで協定を妥結するべきだ。」ともつけ加えた。
本紙が安倍総理に「日本が取り残されるのでは」と質問したところ,総理は世界第3の経済大国である日本が加わることでTPPの戦略的重要性は増すと強調した。「これまで米国と親密な関係を築いてきた一方,アジアの国々との信頼関係構築にも注力してきた。」「日本はその立ち位置を活かし交渉全体において橋渡し役を務めることで,野心を保ちつつ,協定がバランスあるものとなるよう努力している。」と言及した。「日本は,先般のオバマ米大統領訪日時の日米交渉によって生まれたモメンタムをとらえ,米国と共にTPP交渉全体の妥結に向け協力し,他の参加国とも精力的に協議している。引き続き,包括的で高い水準の協定の早期妥結に向けて,その役割を果たしていく。」
日本が強固に守ってきた非効率な農業分野は,「アベノミクスの第3の矢」と称される広範囲な構造改革プログラムの一つとして取り上げられている。第1,第2の矢は,日本経済が過去25年間繰り返し陥っていたデフレの脱却を目指して,財政,金融を刺激するよう設計されていた。「特に農業については,40年以上続いたいわゆる減反政策を廃止する。」と安倍総理は本紙に述べた。減反政策とは,コメの生産を抑制するために政府が農家に対してお金を支払うもので,これはコメの価格を守るためのものである。コメは牛肉,乳製品,麦,砂糖とともに,日本の農業においてセンシティブな5分野の一つである。「農業を競争力のある成長産業とするため,60年ぶりに農協改革に果敢にチャレンジする。」と安倍総理は言う。
ロイター通信は,安倍総理が5月の内閣の規制改革会議では,700地域の農業協同組合を取り締まる全国農業共同組合中央会(JA)の廃止といった特権のある「岩盤」の壁も打ち破ると約束したと報道していた。しかしながら,先月の最終的な案では,単に5年以内に再組織する関係法案を来年提出するだけものものとなっている。農業団体の強力なネットワークは,日本の農業の国際化である貿易自由化の手強い敵である。農業分野は,不経済な零細な土地保有者に支配され,さらに2010年で平均68歳,そのうち3分の1が75歳以上という人口統計的にも不利な状況となっている。
その他の改革は,法人税減税,労働市場の規制緩和である。「女性の更なる活躍の場の拡大や,海外人材の受入れの拡大による,労働人口減少の克服を実現していく。」と安倍総理は語った。