寄稿・インタビュー
ラスメイ・カンプチア紙(カンボジア)による岸田外務大臣書面インタビュー
2014年6月29日付
(問)岸田大臣の今般のカンボジア訪問の主目的及び期待される成果は何か。
(岸田外務大臣)我々日本人にとってカンボジアは,雄大なアンコール文明の歴史,トンレサップ湖やメコン河などの豊かな自然,陽気で親しみやすい国民性,そして日本との深い歴史的なつながりを持つ国です。また,近々にカンボジアで最大規模商業施設となる日本のショッピング・モールがオープン予定と聞いており,カンボジア市民の皆様が心待ちにされてきたと聞いています。今回,カンボジアの発展ぶりをこの目で確かめ,カンボジア政府要人と,今後の両国関係の発展の方策について忌憚のない意見交換ができることを大変楽しみにしています。
特に,今回,昨年二国間関係が戦略的パートナーシップへと格上げされたことを受け,次の三つの課題を重視しています。
(1)内戦後の国作りを支援してきた信頼関係を活かし,選挙改革をはじめとする,民主主義の定着に向け協力します。
(2)2015年のASEAN共同体設立に向け経済面の取組を強化し,メコン地域の連結性の鍵を握る南部経済回廊整備を支援します。また,カンボジアにおける日本企業の進出を促進します。
(3)一層厳しさを増すアジアの安全保障環境の中,日本は「積極的平和主義」の下,地域と国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献していく方針です。ASEAN対日調整国であり,戦略的パートナーのカンボジアと一層緊密に連携していきたいと思います。
(問)日カンボジア両国は昨年外交関係樹立60周年を迎え、両国は政治・経済・文化等あらゆる面で関係を深めている。両国関係の将来に関する岸田大臣の見解如何。
(岸田外務大臣)日カンボジア外交関係樹立60周年を迎えた昨年は,両国で120を超える交流行事が開催されるなど,両国の人々が和平や復興における協力の歴史を通じて信頼の絆で深く結ばれていることを改めて認識する機会となりました。
両国関係の将来は大変明るい。私はそう確信しています。「戦略的パートナーシップ」へと格上げされた日カンボジア関係は,今後,政治・経済・文化・社会のあらゆる分野で一層強化され,両国は,地域・国際社会でも重要なパートナー同士として連携を強化していくでしょう。そのような中で,日本は,今後も,カンボジアの民主政治の発展を支援していく考えです。
また,「アベノミクス」を通じて経済の再興を力強く進める日本と,過去10年間平均8%の成長率を達成してきたカンボジアが,経済面で連携と協力を進める余地は大きいと考えます。日系企業によるカンボジアへの投資は着々と増加し,多くの雇用を生み出しています。また,日本政府としては,カンボジアの地域統合や格差是正に向けた取組を引き続き支援していきます。これらを通じて,「ウィン・ウィン」の関係を築いていくことを期待しています。
(問)南シナ海における中国とASEAN諸国の対立に関する日本の立場及び貴大臣の見解如何。
(岸田外務大臣)南シナ海をめぐる問題は,中国あるいは東南アジア諸国にとどまらず,地域の平和と安定に直結し,日本を含む国際社会全体の関心事項です。
日本は,海洋において法の支配が貫徹されなければならないと強く訴えています。具体的には,(1)「法」に基づいて主張を明確にする,(2)主張を通すために力や威嚇を用いない,(3)「法」に基づく平和的な解決を徹底する,という「三原則」を提唱しており,国際社会はこの原則に沿って行動する国を支援すべきと呼びかけています。
また,中国とASEANの双方が,2002年の行動宣言(DOC)の精神と規定に立ち返り,可逆的な物理的変化を伴う一方的行動をとらないことを約束すべきと提案しています。DOCは,当時のASEAN議長国のカンボジアが取りまとめた,非常に重要な約束です。
日ASEAN間では,海洋の問題につき,昨年の日・ASEAN特別首脳会議等を通じて,基本的な考え方を共有しています。また,日本はASEAN諸国の海上能力構築への支援を強化することとしています。今後もASEANとの意思疎通,協力を深めていきます。
(問)岸田大臣からカンボジア国民へのメッセージを。
(岸田外務大臣)日本とカンボジアの関係は,和平と復興での協力の歴史を通じて信頼の絆で結ばれています。この絆を基礎に,今後の両国国民間の関係は一層親密になると考えます。例えば,近年の日本企業の増加に伴い,現在カンボジアには4千人近い日本語学習者がいると聞いています。近くオープンする「イオンモール・プノンペン」には,日本からも49店舗が出店するなど,日本を一層身近に感じて頂けると思います。
また,現在,サッカーW杯が行われており,カンボジアでもサッカーの人気は高いと聞いています。多くの日本人選手等がカンボジア・リーグで活躍しており,スポーツ面での交流も深まっています。
更に,昨年,我が国とカンボジアは,相互に一般旅券所持者への数次査証の発給を決定したほか,将来の直行便就航へ向け航空協定交渉等の動きも進んでいます。これらを通じて,国民レベルの交流が活発になり,相互理解が一層深まることを期待しています。
最後に,今回の私の訪問を通じて,より多くのカンボジア国民の皆様に,日本のこと,そして両国の友好協力関係に関心を寄せて頂ければ幸いです。