世界が報じた日本

5月13日~20日

平成26年5月20日

 最近の海外主要メディアにおける日本関連報道の中からいくつか紹介いたします。メディア側から予め承認が得られたものの中から選んで掲載しています。転載・複製を禁じます。詳細はリンクから原文にあたって下さい。

掲載日

17日付

紙面(国名)

ニューヨーク・タイムズ紙(米)

執筆者・掲載欄・発信地

佐々江賢一郎アメリカ合衆国駐箚特命全権大使投稿(ワシントンDC発)

 「日本の平和憲法」(5月9日付同紙国際版社説)は,日本が集団的自衛権の行使を検討していることは,「民主主義の手続を完全に損ねるものである」と論じている。このような主張は,日本の民主主義の現実と伝統を全く考慮していないものである。我々の目標は,社説が論じているように,憲法を「差し替える」ことではなく,1947年の制定以降著しく変化したアジア太平洋の地域情勢を踏まえ,憲法の特定の条項の解釈を再検討することである。この取組は,日米同盟を著しく強化することになる。日本政府は,安倍総理の懇談会から出された提言を検討し,その上で国会は適切な法制化に向けて審議することで全面的に関与することになる。このことは,社説が主張するように,日本国憲法が「政府の気まぐれによって変更される」ということでは全くない。むしろ,国民の意思を自由かつ開かれた形で代表する議会制民主主義の手続を通して,日本は判断することになる。安倍総理を含め,日本人は,憲法第9条の精神を信じており,戦争放棄の条項を変更する意図はない。我々は,日本の民主主義の成熟に自信を持っている。

掲載日

16日付

紙面(国名)

ニューヨーク・タイムズ紙(米)

執筆者・掲載欄・発信地

マーティン・ファクラー東京支局長(釜山)

 「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は15日、自衛隊が攻撃されている同盟国を援護することを可能にするため,軍に関する憲法上の制約を緩和するよう提案した。安倍総理は日本を戦後の平和主義から離すことに向けて、自身最大のステップを踏み出そうとしているかもしれない。安倍総理は、この有識者会議の提案に即座に支持を表明した。提言は、与党連立政権内でこれから討議されるが、公明党の反対に直面することになるため、閣議決定される前に骨抜きにされるかどうか見通しは不透明だ。また、世論調査も日本国内に幅広い反対があることを示している。多くの国民は、ナショナリストの安倍総理が、憲法の解釈変更を、戦後憲法と戦争放棄を除去するために利用するのではないかと懸念している。総理はまた、テレビ放映された記者会見で、軍事力を強化し、日本が自国を防衛し、地域の安定に貢献することで平和を保障するという、「積極的平和主義」と自身が呼んできた主義を主張した。総理は、「日本が再び戦争をする国になるといった誤解があるが、そんなことは断じてあり得ない」「日本国憲法が掲げる平和主義は、これからも守り抜いていく。抑止力を高めることで、我が国が戦争に巻き込まれることがなくなると考える」と述べた。
 安倍総理の支持者は、今回の提案が、日本の安全保障体制の強化を目的としていると述べるが、総理の不支持者からは、政府の権限を強めるものとの意見も出ており、第二次世界大戦中の軍部の独裁主義による悲惨な経験から、多くの国民が警戒している。憲法の解釈の見直しは、更に進んだ動きであり、自衛隊が「普通の」軍隊のように活動することを可能にするものだ。有識者会議は、憲法の解釈の見直しを行うために、「集団的自衛権」という法的概念の容認を呼びかけた。

掲載日

16日付

紙面(国名)

フランクフルター・アルゲマイネ紙(独)

執筆者・掲載欄・発信地

ペーター・シュトゥルム記者

 安倍総理は,日本国憲法の一部について解釈変更も視野に入れる計画を発表した。有識者懇談会は,日本の兵力が同盟国の兵力と共に日本国外で活動可能とすることを想定している。前提条件は,日本の安全が大きな危険にさらされていることを政府が確認することである。日本が直接攻撃されていない場合も該当し得る。この点が従来との決定的な違いである。第二次大戦後,米国が起草した日本国憲法第9条は,日本が「国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又は行使は,国際紛争を解決する手段としては」放棄するとしている。同上第2項は戦力の保持を禁じている。この非常に厳しい規定は,既に数十年前にも,外からの攻撃に遭った場合,国を防衛する「自衛隊」を設置するために解釈し直された経緯がある。今回の計画は,第9条第2項をさらに発展させることを意味する。また,これは,日本を再び戦争のできる国にするための検討ではなく,政府の目標は,国民を最も良い方法で守ることであると約束した。安倍総理のこのような所見は,日本の軍国主義が蘇ることを恐れるアジアの近隣諸国のみに向けられたものでない。政府内でも全員が総理の考えに納得しているわけではない。安倍総理が正式な憲法改正を断念したのも,このような理由によるものと思われる。

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掲載日

16日付

紙面(国名)

ル・モンド紙(仏)

執筆者・掲載欄・発信地

フィリップ・ポンス記者(東京発)

 北朝鮮は5月10日,第4回目となる新たな核実験を近く実施すると予告したが,衛星写真によっても豊渓里の核実験場での活動が活発化していることが確認されている。韓国の金寛鎮国防部長官も,核実験の準備はほぼ終わって「いつでも」実施できる状況だとの見方を示したが,緊張を高めるための演出に過ぎない可能性も除外していない。新たな核実験の目的は,2013年3月の前回と同様に,核弾頭の小型化技術を試験することにあると思われるが,濃縮ウラン型の核実験を行う可能性も予測されている。国際的な制裁を受けている中で,北朝鮮が核実験を断行すれば,国際世論からは新たな挑発行為と受け止められるだろうが,北朝鮮の指導陣にとっては,国際的圧力に屈しない決意表明の意味合いがあるとともに,実質的な核兵器保有国としての地位を確保するという狙いもあると考えられる。また米国の「忍耐する戦術」に対する北朝鮮指導陣の苛立ちの表明ともなるだろう。核実験はさらに,北朝鮮にとって同盟国であると同時に主要な支援者でもある中国に対する挑戦ともなろう。中国は,北朝鮮の核実験が東アジア地域の軍拡競争を招き,米国がアジアでのミサイル防衛体制を強化する結果に繋がることを警戒している。中国はまた,北朝鮮の核実験が,日本に防衛体制の強化を正当化する新たな論拠を提供し,日本が集団的防衛権を行使し,米国とともに世界のあらゆる地域に介入する可能性を得ることも懸念している。さらに,東アジアの緊張が高まれば,日本の核兵器保有に関する論議も再燃する可能性がある。

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