寄稿・インタビュー
ミャンマ・アリン紙及びミラー紙(ミャンマー)岸田外務大臣書面インタビュー
2014年3月23日付
(問)現在,多様な分野において日ミャンマー両国が関係を深化させつつあるが,このような現在の状況に対して大臣の訪問が持つ影響力について。
(岸田外務大臣)ミャンマーではサッカーが大変人気があると聞いています。今年,日本は,ワールドカップ・ブラジル大会に参加します。日本のサッカーは,細かなパスをつなぐスタイルと評価を受けていますが,実はそのスタイルは,今から約100年前にミャンマーから日本に留学していたチョウ・ディン氏が,当時の日本代表候補の選手に伝授したことに始まると言われています。
このような長い交流の歴史を有する両国の関係は,2011年の民政移管以降,昨年5月の安倍総理によるミャンマーの訪問,12月のテイン・セイン大統領による訪日等を通じて両国の関係は飛躍的に発展しています。私自身では昨年9月,私はワナ・マウン・ルイン外務大臣とニューヨークで,両国の連携のあり方について意見交換しました。
我々日本人の持つ一般的なミャンマーのイメージは,豊かな森と田園,多様な民族 文化,そして日本との深い歴史的なつながりを持つ国,といったものです。今回,私は,初めてミャンマーを訪問します。今日のミャンマーの発展ぶりをこの目で確かめることを大変楽しみにしております。また,外務大臣やその他要人と,今般の両国関係の発展と方策について忌憚のない意見交換ができることを願っています。
(問)今次訪問の目的は。また,具体的な課題はあるのか。
(岸田外務大臣)今回の訪問では主に以下の3つの目的を念頭に置いています。
(1)今年は,日ミャンマー外交関係樹立60周年です。特に昨年以来,両国の様々な分野における協力が拡大しており,それらを定着させつつ新たな協力についても意見交換することを考えています。
(2)また,ミャンマーは本年,初のASEAN議長国を務め,日ASEAN外相,首脳会談を含む一連の会合を開催する予定です。それらの会議における連携や日本の問題意識について説明することを考えています。
(3)日本は,「積極的平和主義」の下,少数民族支援も実施しており,今後5年間で100億円規模の支援を行うことを1月に表明したところです。また,笹川陽平政府代表に度々ミャンマーを訪問頂くなどして,和平の動きを精力的に後押ししています。今回の訪問でも,日本として,積極的にミャンマー政府と少数民族との和平の早期実現に向け,意見交換を行います。
このような様々な理由から,日本とミャンマーの関係は幅広い分野で強化されていくと確信します。私の訪問がその一助となることを願います。
(問)日ミャンマーの二国間関係はどの程度まで進展するのか。これについての貴大臣の見解如何。
(岸田外務大臣)私は主に以下の3つの観点から,両国関係は更なる発展の可能性を秘めていると考えています。
(1)一点目は,ミャンマーの戦略的重要性です。2015年の共同体発足に向けて,ミャンマーはASEANと南アジアの接点として,非常に大きな戦略的重要性を有しています。日本は従来からASEAN全体の連結性強化のためODA等を通じた支援を行ってきており,こうした面でミャンマーとの協力も強化していきたいと考えます。
(2)2点目は,ミャンマーの生産拠点,市場としての潜在的魅力です。現在,日本は新たな成長戦略の下,ASEAN各国との経済分野での協力を深めています。特にミャンマーとは今後,ウィンウィンの互恵的経済発展を実現していくことが可能と確信しています。
(3)3点目は,両国の伝統的な絆の強さです。両国は長年にわたり,歴史的・文化的な交流を深めてきました。このことは両国の信頼関係を支え,今後の協力関係発展の基礎となるものです。
(問)ミャンマー経済の将来及び日ミャンマー間の経済協力において,貴大臣は何に重点を置いているのか。
(岸田外務大臣)ミャンマーの今後の経済発展には,まずは基本的なインフラ整備が重要です。これも念頭に日本は昨年来,総額1,500億円を超えるODAの供与を決定しました。また,国民の生活向上支援や経済・社会を支える人材の能力向上や制度の整備支援分野でも協力しています。
一方で,ミャンマーの持続的発展のためには,より多くの民間投資が不可欠です。日本は昨年来,ティラワ経済特区の整備に官民を挙げて全面的に協力しており,雇用の拡大につながることを期待しています。また,昨年,両国はミャンマーにとって初となる自由化型の投資協定に署名したほか,航空協定を改正し航空便の拡大を図るなど,投資環境整備に努力しています。さらに,日ミャンマー共同イニシアティブという官民対話の枠組みを立ち上げ具体的な投資環境改善策に取り組んでいます。