寄稿・インタビュー
安倍総理のラーイ紙及びヨルダン・タイムズ紙インタビュー
(2015年1月18日付)
日本は対ヨルダン支援と関係強化を継続する
日本の安倍晋三総理は,日本とヨルダンの緊密な関係の重要性を確認。昨年の国王の訪日の重要性と,ヨルダンとヨルダン王室と日本の皇室の間の強力な関係に言及。
今回のヨルダン訪問の機会をとらえた本紙とのインタビューで,総理は,日本の対ヨルダン支援の継続とあらゆる分野での関係強化を強調し,中東地域の和平と安定の実現に向けたヨルダンの多大なる努力を評価した。また,イラクとシリアの国境を越えて台頭し国際社会の重大な脅威となっているISILと闘う周辺各国に対し,2億ドルの支援を実施する旨に言及,「イスラム社会と過激主義は全く関係がない。中東の国々が多くの民族・宗教宗派を包み込み,多様性に富んだ寛容な共生社会を築いてほしいと願っている。「和」と「寛容」の精神に裏打ちされた,活力ある安定した揺るぎない中東地域を実現するため,日本は積極的に貢献していく。」と述べた。
問1 ヨルダンと日本は,政治,経済のレベル,またあらゆる協力分野で伝統的に緊密な関係を享受しており,今回の貴総理のヨルダン訪問はその証拠である。こうした関係につきどのようにお考えか。また,その発展に関する展望如何。
私にとって初めてヨルダンを訪問することを嬉しく思う。日本とヨルダンは,1954年の国交樹立以来,ヨルダン王室と日本の皇室の伝統的に親密な関係を基礎として,極めて良好な関係を築いてきた。
2011年の東日本大震災の際には,ヨルダンからいち早く医療支援チームを派遣いただき,福島県において診療にあたっていただいた。これはまさに両国の友好関係の証である。
昨年は,日ヨルダン外交関係樹立60周年の機会に,光栄にも国王陛下に訪日いただいた。同訪問では,両国では初めてとなる共同声明を発出し,二国間関係の更なる強化と地域の平和と安定に向けた協力を確認した。先月も国王陛下から,総選挙での勝利を祝う電話をいただき,お心遣いに感激した。
これまで日本はヨルダンの発展を目的として,長きにわたり経済協力を行ってきた。さらに幅広い分野での協力が進展するよう,今回の訪問を契機として取り組んでいく。また,今回の訪問には,日本のビジネス・リーダーも同行する。両国の経済関係の進展のため,民間企業間の交流の活発化を,政府としても後押しする。
今回の訪問では,国王陛下や首相との会談の機会を得,深く感銘をうけた。多くの素晴らしい文化遺産を保有するヨルダンの観光業は大きな可能性を秘めている。文化・観光面でも,日本は惜しみない協力と支援を行う。
問2 和平プロセスやシリア危機,イラク情勢,テロとの戦い等の中東地域の課題に対し,ヨルダンと日本の立場は類似しているが,これらの課題につきどのようにお考えか。また,このインタビューを通じて,地域の諸国家及び諸国民に投げかけたいメッセージはあるか。
現下の中東地域は,中東和平交渉が停滞し,シリア危機が長期化する中で,既存の国際秩序に挑戦する過激主義勢力が台頭するなど,かつてない困難に直面しているとの深刻な危機感を私は持っている。特に,イラク及びシリアにおいて国境を越えて勢力を拡大するISILは,国際社会の重大な脅威である。
中東情勢の激動の最前線として難民等の地域不安定化の影響を受けているヨルダンを始めとする地域の各国の尽力により,地域の平和と安定が確保されることを期待する。日本は,「積極的平和主義」の下,こうした努力を非軍事的な分野で力強く支援していく。ISILと闘う周辺各国に総額で2億ドル程度の支援を実施し,また,中東地域全体に対して,人道支援やインフラ整備など約25億ドル規模相当の支援を行う。
イスラム社会と過激主義は全く関係がない。中東の国々が多くの民族・宗教宗派を包み込み,多様性に富んだ寛容な共生社会を築いてほしいと願っている。「和」と「寛容」の精神に裏打ちされた,活力ある安定した揺るぎない中東地域を実現するため,日本は積極的に貢献していく。