世界が報じた日本
海外主要メディアの日本関連報道
3月4日~11日
掲載日
10日付
紙名(国名)
執筆者(発信地)
社説
中国の経済成長が全体的に鈍化している中で,同国の国防費の増加は過去3年で最大であり,また,二桁台の増加という過去数十年の傾向が続いている。多くの専門家は,実際の総額はもっと大きい額であろうと考えている。国防費増加は,真空の中で起きているわけではない。中国は域内における新たな攻撃的な姿勢により,経済面だけでなく軍事面での中国支配を恐れる近隣諸国の間で疑念を生じさせている。中国は,日本が施政している東シナ海の諸島の領有権をめぐって日本との危険な係争関係にあり,同諸島周辺での中国軍の巡視船と日本漁船の頻繁な動きが紛争を引き起こさないかと懸念されている。昨年11月には,中国はこの海域の一部に防空識別圏設定を宣言して日米韓に衝撃を与えた。中国は,漁業や埋蔵が推定される原油・天然ガスの埋蔵を巡り,南シナ海で中国の領土権主張に反対する東南アジア諸国をも脅している。中国は,他国は何も恐れることはないと述べているが,米国が行っているように,国防費大幅増加の理由及びその用途を説明することで,懸念を緩和することが可能だ。中国軍と米軍の協議の増加,領有権問題の解決に向けた真剣な取り組み,あるいは少なくともそうした問題に対処する上での行動規範を巡る合意が懸念緩和に役立つだろう。一方,米議会は,国防費拡大への衝動を抑制することが大事だ。中国の能力を引き続き明確に認識しつつ,アジアへの経済・政治・軍事的な関与を拡大するオバマ大統領の政策を支持するのが,より適切な対応策である。
掲載日
10日付
媒体名(国名)
執筆者(発信地)
(東京発)
日本は,第二次世界大戦中に強制的に軍の売春宿で働かされた女性への謝罪に用いられた証言の見直しを進めているにもかかわらず,その謝罪を変えるつもりはないと月曜日(同国)に菅官房長官は述べた。保守政権である安倍政権は河野談話と呼ばれる1993年の謝罪を変えるつもりはないと菅官房長官は述べた。その謝罪は旧日本軍が慰安婦と呼ばれる女性を強制的に日本兵に売春させたことに間接的に関わったことを初めて認めたものである。菅官房長官が2週間前に,政府が謝罪を裏付ける証言を見直すと発言したことに対して,大部分の慰安婦の出身地である元日本の植民地韓国から批判が高まっていることへの返答である。菅官房長官は,専門家委員会を組織して,談話の裏付けとなった16人の元慰安婦による20年前の証言などを検証すると述べていた。
掲載日
10日付
紙名(国名)
執筆者(発信地)
ヴェロニク・ル・ビヨン記者
福島原発事故発生後,各国の原子力発電所でストレス・テストが実施された。フランスでも「福島後」が話題に上り,原発の安全が強化された。しかし,無形の安全性はあまり話題にされていない。仏経済学者のフランソワ・レベック氏は,福島原発事故の直接の原因は津波であったが,透明性が高く能力の高い独立規制機関の欠如が根本的な原因だと指摘する。既存の機関による規制はコストが低くてすむが,外部のチームを加えることで原発の安全性を著しく強化し得ると同氏は指摘する。原子力発電所の事業者はもちろん原発の安全の責任者である。福島事故の後,事業者である東京電力のガバナンス不全などが明らかにされた。ただしフランス放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)のジャック・ルプサール所長は,「規則が多すぎると,安全に関わる作業が煩雑になり,結局は規則を壊すことになる」と指摘している。
掲載日
7日付
媒体名(国名)
執筆者(発信地)
社説
中国,日本,韓国が三国間自由貿易協定を結ぶためソウルで4回目の会合を行う。歴史や領土紛争を巡る論争で,日本と他の2か国との関係は緊張しており,会合が行われること自体が驚きである。このことは,これらの国のリーダーが東アジアにおける経済の優位性を完全には見失っていないということだ。習国家主席と朴大統領は一年前に政権に就いて以来,安倍総理との会談を拒否しており,これは異例の事態だ。過去の日本帝国の犠牲者である中韓は,安倍総理の靖国参拝に象徴されるように歴史を頑迷に反省しない日本を非難してきた。習国家主席と朴大統領は反日ナショナリズムを掻き立てることで内政上の優位を得た。東シナ海での中国の動きは,日本の軍隊(ママ)の地位を高めようという安倍総理の努力に一役買っている。それでも中国は日本の最大の貿易相手国であり,日本は中国の3番目,そして韓国は日本の2番目の相手国である。経済的利害関係も高く,貿易や投資が複雑に三国を結びつけていることは疑いがない。急速に高齢化する人口と成熟した経済を抱える日本や韓国にとって,国民の福祉を維持するために国際的な経済関係を成功裏に管理していくことは大変重要だ。習国家主席の下,今や中国は隣国からより敬意を払われるべきであると信じ,特権を要求してくるようになった。しかし中国は,世界経済と深く相互依存していかなければ拡大する自国の経済・軍事力は維持できないと理解すべきである。
掲載日
5日付
紙名(国名)
執筆者(発信地)
Teddy Ng北京駐在記者による,木寺昌人駐中国日本国大使へのインタビュー
2012年12月に北京に赴任して以来,多くの友人を作ろうと最善の努力をしてきたにもかかわらず,その経験豊富な外交官は,中国外交部の役人を除いて,中国の指導層と接する運には恵まれてこなかったと述べた。「私は,中国各地を訪問し,できる限り多くの中国の方にお会いしようとしてきたが,現在,中国の指導層にはなかなか会えない状況にある。この1年間,日中関係の改善のために地道に努力をしてきたが,容易ではないと感じている。」「日中間の政治関係が難しいために,地方に行った際には地方政府の指導者にお会いするのが難しいということがある。」
大使は,両国が直面している状況は「困難」であるが,日本側から事態をエスカレートさせるような考えはない旨述べ,両国の指導層が平和的に諸問題を解決するよう呼びかけた。「日本は戦後一貫して平和国家としての道を歩んできた。安倍政権がその道を変えることはない。日本は,一貫して毅然かつ冷静に事態に対応している。両国間に困難があるからこそ,ハイレベルを含めて直接の意思疎通を行うことが重要だ。日本側の対話のドアは常にオープンである。」
また木寺氏は,大使として直面する困難な状況が今年も続くと認識しているが,両国が「戦略的互恵関係」を尊重し,個別の問題が両国の長期的な関係を危険にさらすことのないよう手段を講ずることを確信していると述べた。