寄稿・インタビュー
タイ字紙デイリーニュースへの林外務大臣寄稿(令和4年11月16日)
本日から、私はAPEC閣僚会議に出席するため、バンコクを訪問します。日本とタイとの外交関係樹立135周年を迎えたこの節目の年に、タイを訪問できることを光栄に思います。
「ほほえみの国」タイは日本人にとって最も人気のある国の1つです。皇室・王室の親密な関係を基礎に、政治、経済、文化、科学技術、スポーツ、観光、教育等の幅広い分野で大変活発な交流が行われています。また、約8万人の日本人が在住し、約6千社の日本企業が進出しているタイは、我が国にとって極めて重要なパートナーです。今日の強固な日タイ友好・協力関係は、まさに両国の発展に尽くした全ての人々の上に成り立っています。そして、現在、日本とタイの協力関係は未来に向けて、新たなステージに入っていく時期にあると考えています。
新型コロナウイルスによるパンデミックは、国際社会共通の問題を乗り越えるために各国が連携する重要性を再確認させました。日本からタイに対し、ワクチン供与に加え、ワクチン輸送・保管に必要なコールドチェーンの整備、医療機器の供与や、新型コロナウイルスの検査態勢強化や治療薬開発に必要な施設・機材の整備などの協力を行いました。同時に、タイ政府は在留邦人向けのワクチン接種プログラムを提供し、これまでに数万人もの在留邦人がワクチン接種することができました。正に、「困ったときの友は真の友」です。
また、パンデミックを通じてオンライン交流が活発化する一方、私たちは対面での交流の重要性を改めて実感しました。先月、日タイ両国の水際措置が大幅に緩和されたことにより、観光を含む両国の人の往来が戻りつつあり、今後更に活発になっていくことを期待しています。
昨今、国際情勢が激変する中で、両国は、少子高齢化、気候変動、新型コロナウイルス、エネルギー・食料安全保障等の新たな課題に効果的に対応することが求められています。これらの課題を克服し、両国の緊密な関係を更に発展させるために、私は今回のタイ訪問で、両国の経済分野での新たな協力の指針をドーン副首相兼外務大臣と打ち出したいと考えています。より強靱で持続可能な未来に向けた新たな道筋を描き、両国の戦略的パートナーシップ関係を更に発展させていきたいと思います。
私は商社の社員として働き始めて間もない頃、タイに出張したことがありました。エネルギーにあふれ、これから経済発展していくことを強く予感させられたことを覚えています。それから約40年が経過し、バンコクは高層ビルが立ち並ぶ洗練した都市へと変貌しました。ASEANの中でも開発先進国であるタイは、エーヤワーディ・チャオプラヤ・メコン経済協力戦略会議(ACMECS)を主導するなど、この地域の発展に大きく貢献してきました。また、タイには、地域の感染症対策の中核組織としての役割が期待されるASEAN感染症センターの事務局が置かれています。今後タイのドナー国としての役割がより重要になってくると確信しています。
さらに、日本 ASEAN 友好協力50周年という歴史的な節目を迎える来年に向け、ASEAN対日調整国としてのタイの重要性は今まで以上に大きなものとなっています。8月の日 ASEAN 外相会議において私は、ドーン副首相兼外務大臣を始めとするASEAN各国代表の皆様とともに、50周年のオフィシャル・ロゴマークとキャッチフレーズ「輝ける友情、輝ける機会」を共同発表しました。長年の強い信頼関係に裏打ちされた日ASEAN関係は、このキャッチフレーズが表すとおり、輝かしい可能性に満ちています。先日の日ASEAN首脳会議において岸田総理が発表したとおり、日本は来年、ASEAN各国の首脳を日本にお迎えし、特別首脳会議において新たな日ASEAN協力のビジョンを打ち出せることを、心待ちにしております。
今般の訪問を通じて、日本とタイが、強固な絆に基づき、二国間協力のみならず第三国協力をも深化させ、ASEAN全体、インド太平洋地域、ひいては国際社会の持続的な平和と繁栄のために貢献していくことを確認したいと考えます。日タイ両国の関係が今後、一層の成長と発展を経て、多くの実りある成果を産むことを願ってやみません。