寄稿・インタビュー

ニュー・ストレーツ・タイムズ紙(マレーシア)による岸田外務大臣書面インタビュー
(2015年8月5日付)

平成27年8月7日

「日マレーシア関係を強化する」

日本の岸田文雄外務大臣が、戦略的パートナーシップに対する考え方及び日馬二国間の関係強化を図る旨語った。
日馬外交関係は1957年に樹立、それ以来、両国関係は、東方政策、経済関係、文化、人的交流をもとに強化されてきた。日本の岸田文雄外務大臣は、ASEAN+3外相会議、EAS外相会議、ARF外相会議に出席のため、本日、マレーシアに到着し、二日間の訪問を開始する。訪問の間、同大臣は、日馬関係の強化を図りたい旨語った。

(問)日馬双方の首脳は,両国が戦略的利益を共有することを確認しました。両国は、どのようにして「戦略的パートナーシップ」を強化、構築できるでしょうか。貴大臣の考えをお聞かせ下さい。

(岸田外務大臣)外務大臣として、今回初めてマレーシアを訪問することができ、とても嬉しく思います。マレーシアには日本から年間約55万人(2014年)が訪問し、マレーシアとのビジネスに加え、マレーシアの雄大な自然や伝統文化を楽しんでいます。
 日本・マレーシア関係を考えたとき、まずマレーシアの東方政策が思い浮かびます。東方政策の下、これまでに約15,000人のマレーシア人が日本に留学し、現在,元留学生の多くがマレーシア政府や企業で活躍し、良好な二国間関係を支えていることを心強く思います。
 日本とマレーシアの関係は、政治や安全保障を含むあらゆる分野で深化しています。5月のナジブ首相来日の際には、両国は戦略的利益を共有することを確認するとともに、これまで築いてきた協力関係を踏まえ、両国関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げすることで一致しました。
 私としても、防衛装備協力を推進するための協定の交渉やマレーシア海上法令執行庁(MMEA)への支援を含む海洋協力等を通じて、マレーシアとの関係を強化していく考えです。また、JENESYSの実施やマレーシア日本国際工科院(MJIIT)の強化等を通じて文化・人的交流を推進するとともに、経済面では、今後も、マレーシアの経済高付加価値化や2020年までに先進国入りするという目標達成のため、日本からの投資推進や高速鉄道を含むインフラ整備等を通じて、最大限協力していく考えです。
 さらに二国間のみならず、今後、マレーシアの「戦略的パートナー」として、地域と国際社会の安定・繁栄に共に貢献していく考えです。また、本年のASEAN議長国であるマレーシアの取組に全面的に協力して行く考えです。

(問)ASEANにとっての課題のひとつに、いかに経済圏を拡大できるかにあります。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、ASEANを含む東アジアにおける貿易自由化を図るものであり、本年2015年末までの締結を目指しています。成功に導くため、日本にできることは何でしょうか。

(岸田外務大臣)RCEPは、世界人口の約半分、GDPの約3割を占め、日本にとっても貿易総額の約半分を占める国々との広域経済圏を構築する取組です。ASEANを含むアジア太平洋地域において、貿易・投資等の自由化の促進、知的財産や競争等についての様々なルール作りを行うことは、日本経済の再生のみならず、地域全体の成長に繋がるものとして重視しています。
 RCEPにおいては、2015年末までの交渉の完了を目指しており、これまで8回の交渉会合と3回の閣僚会合を精力的に開催してきています。16カ国もの多様な国々による交渉なので当然のことながら困難にも直面することが多いですが、交渉を開始するに当たり各国閣僚間で合意した「現代的な、包括的な、質の高い、かつ、互恵的な」経済連携協定の達成のため、引き続き交渉をリードしていきたいと考えています。

(問)南シナ海で進む埋め立てに関し、ASEAN首脳は「深刻な懸念を共有する」と表明した上で、「(このような行為は)信頼と平和、安定を損なう」としています。この地域における安全保障に対し日本はいかなる貢献が可能でしょうか。

(岸田外務大臣)南シナ海をめぐる問題は、地域の平和と安定に直結する、日本を含む国際社会全体の関心事項です。
 日本としては、大規模な埋立てを含め、現状を変更し緊張を高めるあらゆる一方的な行動を懸念しています。各国が緊張を高める一方的な行動を慎み、「法の支配」の原則に基づき行動することの重要性を訴えてきています。
 日本は、国際法に基づいた紛争の平和的解決や自制的行動の重要性について各国と認識を共有しています。今後もASEANや他の同志国との意思疎通、協力を深めていきます。
 また、これまでにASEANの国々に対する能力構築支援や、米海軍やフィリピン海軍との共同訓練を南シナ海周辺海域において行ってきています。
 特にマレーシアについては、海洋法令執行庁(MMEA)に対する人材育成や機材整備等を支援するとともに、本年5月には、両国首脳間で防衛装備品の移転に必要となる協定の交渉開始で一致したところです。
 日本は、ASEAN議長国のマレーシアがこの地域の安定のために果たす役割を重視しています。今回のASEAN関連外相会議や11月の首脳会議を含め、緊密に連携してきたいと考えています。

(問)日本経済は「失われた15年」を経て、明らかに景気が回復してきました。アベノミクスの効果をどのように評価しますか。また、アベノミクスは,マレーシアを含む東アジア経済にどのような影響を与えるのでしょうか。

(岸田外務大臣)アベノミクスの「三本の矢」の経済政策は、雇用・所得環境の改善傾向が続くなど、確実に成果を上げています。
 日本企業の経常利益は過去最高の水準にあり、失業率も低水準となっています。賃金についても、本年の賃上げ率は、1998年以来17年ぶりの高い水準となっています。こうした中、本年第1四半期のGDP成長率は年率3.9%と、事前の民間機関による予想の平均値を上回る水準となりました。
 6月末には成長戦略を改訂しました。これにより、デフレ脱却に向けた動きを確実なものにし、将来に向けた成長の礎を再構築していきます。
 日本とマレーシア、そして東アジアの経済は密接に結びついています。マレーシアにとって、日本は主要な貿易パートナーであり、多くの日本企業がマレーシアに直接投資を行い、活発に活動しています。アベノミクスで活力ある日本を作り出すことは、マレーシアを始めとする東アジア経済にも裨益するものと確信しています。


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