寄稿・インタビュー
岸田総理大臣の米国訪問
米国メディア報道ぶり
CNN(4月7日付け、電子版)
「岸田総理、世界は「歴史的転換点」にあると警告、バイデン大統領との首脳会談を前に米国との同盟を強調」
(ハナコ・モンゴメリー記者、ジュンコ・オグラ記者、シモーヌ・マッカーシー記者)
岸田総理は、地政学的緊張の高まりは世界を「歴史的な転換点」に追いやり、日本は防衛態勢の変更を余儀なくされている旨、ジョー・バイデン米大統領との首脳会談を来週に控えた日曜日にCNNの取材に対し語った。
「ロシアによるウクライナ侵略、現下の中東情勢の継続、そして東アジアの情勢をみても、我々は歴史的な転換点にある」。岸田総理は、東京の私邸でインタビューに答えた。
「このため、日本は防衛力の抜本的な強化を決断し、日本の安全保障政策も大きく転換をさせた」と首相は語った。
安全保障上の課題が山積する中、日米同盟の「重要性は益々高まっている」と首相は強調し、ワシントンで超党派の支持を獲得することを期待すると語った。
岸田総理は、水曜日(17日)のワシントンでのバイデン大統領との会談を数日後に控えている。岸田総理は、米国連邦議会の上下両院合同会議で演説し、日本、米国及びフィリピンの3カ国による初の首脳会談に参加する予定である。
米国は、岸田総理・バイデン大統領による首脳会談を、北朝鮮による兵器実験やロシアとの関係の急拡大から、南シナ海や台湾に対する中国の侵略に至るまで、日米両国が地域の脅威に目を向ける中で、同盟関係を近代化する歴史的な機会として位置づけている。
日本とのパートナーシップは、長きにわたりインド太平洋における米国の戦略の中心であったが、防衛関係は岸田総理の下で拡大し、岸田総理は世界と地域の安全保障における日本の存在感を高めてきた。
平和主義の過去からの転向
2021年の就任以来、岸田総理は、日本政府による防衛態勢の大転換を指導してきた。第二次世界大戦後に米国から押し付けられた平和主義憲法から転向し、2027年までに防衛費をGDPの約2%まで引き上げ、反撃能力を獲得する。
この動きには、特に第二次世界大戦時の日本の軍国主義の下で甚大な被害を受けた中国やアジアの他の地域において、賛否両論がある。
この転換について岸田総理は、世界第4位の経済大国であり、東アジアに位置する日本を取り巻く安全保障環境は「厳しく複雑」であると指摘した。
「我が国の周辺には、弾道ミサイルや核兵器の開発を進めている国、また、不透明な軍事力の増強を進めている国、そして、東シナ海及び南シナ海の双方において、力による一方的な現状変更の試みが行われている」と岸田総理は述べた。これは、フィリピンや日本との領有権争いに関連する中国の海洋進出について言及したものである。
また、日本の抑止力と対処力を高めることも、米国との同盟にとって「不可欠」であると岸田総理は主張した。
「是非アメリカにも日本の取組を理解してもらい、共に地域の平和と安全のために努力をしてもらいたいと思うし、そういった連携を今回の訪米でもより深化させ、そして、それを世界に示すことが重要だと思っている」と岸田総理は語った。
来週のイベントは、日本ともうひとつの重要な地域パートナーであり相互防衛条約の同盟国であるフィリピンとの協力関係を深める場にもなる。
日米比首脳会談は、画期的な日米韓首脳会談から1年も経たないうちに実現する。この2つの首脳会談は、米国のインド太平洋安全保障戦略における日本の重要性を強調するとともに、地域の緊張が高まる中、同盟国やパートナー国との連携を強化することを後押しした。
これまで以上に強力に
来週の岸田総理の訪米とバイデン大統領との会談は、両首脳が自国の不透明な状況に直面しているときに行われることになる。
日本の首相は、主に自民党のスキャンダルを受けた支持率の低迷に苦しんでいる。また、来る米国の選挙は、ドナルド・トランプ前大統領が来年ホワイトハウスに復帰した場合に政策が一新される可能性を高めている。
トランプ前大統領は、トランプ政権時代も近年も、米国(ワシントン)の防衛・安全保障条約に何度も冷や水を浴びせ、アジアと欧州の同盟国も同様に混乱させている。
岸田総理は、前大統領の再選を懸念しているかどうかについてはコメントを避けた。その代わりに、日米同盟の重要性は 「党派を超えて」広く認識されているとの考えを示した。
「日米関係はかつてないほど強固なものになっており、大統領選の結果がどうであっても、日米関係が重要であるという認識を、党派を超えてアメリカの国民のみなさんにしっかり持ってもらうことが重要であると考えている」と岸田総理は語った。
岸田総理は、就任以来、日本をアジアだけでなく、よりグローバルな米国のパートナーとして位置付けてきた。
岸田総理は、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であるとの見解を提唱する一方、ウクライナへの忠実な支持者としての立場を築きつつ、ロシアに対する立場においてG7諸国と緊密に連携する姿勢を示している。
こうした関連性は日本にとって身近なものである。ロシア軍と中国軍がこの地域で共同演習を行い、北朝鮮はウクライナ戦争で使用する武器をロシアに供給したとしてG7諸国から非難されている。米国と緊迫した関係にあるこの3国の間に、新たな枢軸が生まれつつあるのではないかという世界的な懸念が高まっている。
また、岸田総理は、「諸懸案」を解決し、両国間の安定した関係を促進するため、北朝鮮の金正恩委員長との会談を実現させるべく「ハイレベルの働きかけ」を行っていると述べた。
日本は、韓国と並び、北朝鮮の積極的な兵器実験プログラムの最前線にあり、発射実験のミサイルは定期的にこの地域の海域に落下している。数十年以上前に北朝鮮に拉致された日本人の問題も、特に感情的な争点であり続けている。
岸田総理は、日本政府は北朝鮮とロシア間の装備品のやり取りを監視していると述べ、また中国とロシアの共同軍事訓練を指摘し、そのような協力は 「国際秩序の安定に対する懸念」であると述べた。
「北朝鮮や中国に対しても、法の支配に基づく、自由で開かれた国際秩序を守ることが、国際社会の平和と安定や繁栄にとって大事であるということをしっかりとメッセージとして伝えることも大事である」と岸田総理は述べるとともに、「分断や対立ではなくして、力強い国際社会を促進するために協力しなければならない」「分断や対立ではなくして、国際社会を進めていくために協力をしてもらう雰囲気を作っていくために、アメリカや同盟国・同志国(our allies)と協力していくことが大事であると考えている。」と述べた。