政策評価
外務省政策評価アドバイザリー・グループ第21回会合議事録
1 日時
平成26年7月30日(水曜日) 14時00分~15時00分
2 場所
外務省
3 出席者
- (有識者)(五十音順)
- 神保 謙 慶應義塾大学総合政策学部准教授
- 福田 耕治 早稲田大学政治経済学術院教授
- 山田 治徳 早稲田大学大学院教授
- (外務省)
- 細野考査・政策評価官,中村考査・政策評価官室首席事務官,大貝ODA評価室長,齋藤総合外交政策局総務課首席事務官,鈴木会計課総務室課長補佐,丸山総合政策局政策企画室課長補佐ほか
4 議題
- (1)平成26年度(平成25年度に実施した施策に係る)外務省政策評価書(暫定版)等について
- (2)その他
5 発言内容
(1)平成26年度(平成25年度に実施した施策に係る)外務省政策評価書(暫定版)等について
【外務省】
アドバイザリーグループ・メンバーの先生方におかれては,大部の資料をお読みいただいた上貴重なコメントを頂き感謝。頂戴したコメントを最大限活用し,今後の評価に役立てていきたい。
評価の実施方法に変更があった点,あらためてご説明したい。現政権の下,経済財政諮問会議において重要な政策についていわゆるPDCAサイクルを実効性あるものにしていくことが強調されたことを踏まえ,総務省と各府省の調整を経て,評価実施方法の新たなガイドラインが策定され,標準化と重点化の2つを進めることとなった,まず,標準化としては,これまで府省ごとにばらばらであった評価結果の表し方を横断的かつ分かりやすく把握できるよう,目標の達成度を表す標語を,各府省共通に「目標超過達成」「目標達成」「相当程度進展あり」「進展が大きくない」「目標に向かっていない」の5区分に統一した。重点化については,必ずしも全施策を毎年評価する必要はないが,各種要因分析や達成手段の有効性・効率性などの検証は一層良く行うようにするというものである。
当省としても,標準化されたこの5区分を使用することとし,重点化に対応して施策を主に2つのグループに分け,交互に2年に一度,過去2年間の実績を評価する形にした上で,評価を行わない施策についてもモニタリングとして実績を記したものを毎年作成することとした。ただし,今年度行う評価については,25年度1年間の実績をもとに行っている。評価書のフォーマットについては,新しいガイドラインで指定されたフォーマットに基本的に沿った形のものを使用している。(各欄の定義や,記入すべき事項等について具体的に説明。)
また,当省の場合,例えば「国際の平和と安定」というふうに,施策1つがかなり包括的で広い内容に亘っているために,施策全体を構成する様々な政策を「個別分野」というものに分けている。その上で各分野ごとに行った分析等を総合して施策全体の評価を行っている。
次に,重点化への対応として,先に述べたとおり,施策を主に2つのグループに分け,それぞれを2年ごとに交互に評価していくこととしたが,今回は,国際の平和と安定に対する取組,国際経済に関する取組などの施策を評価対象としている。当省の組織が主に地域局と機能局に分かれている中,今回,新しいやり方で評価を行う初年度ということもあり,比較的実績等が明確に見やすいと思われる機能局を中心に評価を行った。地域局については,今回は25年度の実績のモニタリングを行い,明年度の作業で25~26年度の2年間の実績を踏まえた評価を行う予定である。
今回,評価結果については,まず,分担金・拠出金について3分野における代表的な国際機関を選択して評価を行っているが,測定指標に基づいて評価した結果,いずれもが「目標達成」レベルであったので,「目標達成」となっている一方で,その他については「相当程度進展あり」となっている。標準化により統一された基準に従えば,「目標達成」となるのは全ての測定指標において目標が達成された場合のみであり,例えば,主要な測定指標は達成していても,その他の何らかの指標で未達成の場合,施策全体としては「相当程度進展あり」,又は未達成のものが多くなると「進展が大きくない」といった判定になる。外務省の場合,非常に多岐にわたる内容が一つの施策に含まれることから,1施策の中に設定される測定指標の数もかなり多く,その全てが「達成」にすることは容易ではないという面がある。外交は相手のある話で,外部要因の影響も受けやすいという面もある。
評価に際してはいわゆるPDCAサイクルを回して,課題や改善点を見つけようと努力し,必要があれば目標の見直しを行っている。一方で,外交政策の場合,多くの場合,外交の継続性・一貫性が重視されるため,毎年目標全体が頻繁に変わることは少ない。目標の見直しを行う場合も,多くは大枠の目標は継続する中で,個別にこのような課題があるからこのような事項に今後重点を置くといった書きぶりになる。いずれにせよ,今回は新たな制度の下での初めての評価であり,試行錯誤していかざるを得ない点もままあると考えられる。今後,各府省の経験や総務省との協議を踏まえ,より良い評価書となるよう努めていきたい。ご質問やご意見等があればお願いしたい。
【有識者】
政策評価においては,PDCAサイクルを回して如何に次年度の改正に繋げていくかという意義が大きいと思うが,例えばほとんど結果が「相当程度進展あり」や「目標達成」で同じものが出てきた場合に,様々な可能性が考えられる。そもそも政策目標が正しく設定されていたかをチェックする仕組みはあるのか,政策評価という場があるが故に,政策目標の水準を甘く設定していなかったか,あるいはチャレンジ指標のようなものがないが故にこういう結果になったのではないかなど,難しい要素が出てき得ると感じた。政策評価の目的にどのようなものを設定するかは非常に難しい問題である。二点目は,国内官庁との比較で,外務省の大きな違いとして,相手があることに加え,成果が出るまでに長い期間を要することが少なくなく,今年度に成果が出なくても5年後にじわっと効いてくる政策などもたくさんあると思うので,年度ごとの評価というよりも何年度かにわたった評価指標があったほうが,外務省の政策評価には相応しい枠組みになるのではないかと感じた。
【有識者】
数年前の本会合で、3年とか5年とか10年とかという形で評価する枠組みを考えようという議論もあったと思うが,その後いかがか。
【外務省】
率直なところ,こうした長期の幅での評価についてはまだ検討されておらず,まずは,新たに定められた各府省共通のルールに沿った政策評価に取り組んでいくことを考えている。中長期的な課題も含めた評価については体制の問題もありこれからの検討課題であると考える。
【有識者】
今年大きく動いた集団的自衛権のような大きなレジーム・チェンジ,あるいは政策転換があったときには,例えばODAの評価なども含めて,評価基準自体を変えていかなくてはならない場合が出てくるのではないか。政策目的が合理的であるかどうかなど,見直しを2年おきにと言っていられないケースも生じてくるのではないか。
【外務省】
目標管理型の評価においては,基本的には目標を設定し,施策を実施した結果,その目標を達成したかどうかで判断していく方式になっている。そのような枠組みでは,途中で大きな政策転換が生じ,目標自体が事前に設定したものでは意味をなさなくなるような場合の評価は率直なところ難しい。技術的には,途中で目標を変更し,その上で評価するということになるのであろうが,外交のように日々情勢が変わりうるもの,それから先生ご指摘のように政策目標自体が変わることを想定した枠組みに必ずしもなっていない面はある。そういう中で現在の政策評価の制度の中で対応に努めることになると考えている。
【有識者】
質問というよりは感想だが,政策評価の主な目的が,情報公開,効率的な行政,説明する責務といったところにある中で,いわゆる説明する責務については,もともとアカウンタビリティと呼ばれ,アカウント,すなわち会計責任を指し,帳尻がきちんと合っていることを報告する責任から発展した責務である。また,情報公開の観点では,分かりやすい評価が必要だと思う。その関連で言えば,主要な測定指標とそうでない測定指標がどのように設定されているか。スペースの関係でいちいち書けないのかもしれないが,頂いた暫定版の評価書案では主要な測定指標がどれなのかが分かりにくく,アカウンタビリティの原点に照らしても,もう少し分かりやすくすると良いのではないか。もう一つ,目標とは本来成功状態を表すものであるべきだが,一部部局においては活動状態を書いているように見える点が気になった。外交の世界は,道路を整備するといった政策とは異なり,結局永遠に大きな目標を追い続けることになるのかと思う。そこで重要なのは,評価結果に基づき何をしたのかという点ではないか。また,不易流行という言葉があるが,いわゆる不易の部分,粛々とやり続ける部分と,いわゆる流行の部分,アドホックな部分やあるいは評価結果に基づく新たな取り組みなど,それらの間の違いが必ずしもよく見えていないと感じる。
【外務省】
ご出席頂くに先立って電子ファイルでお送りした段階では,指標が多数ある中でこれとこれが主要なものであるという点を必ずしも明示しきれていなかったが,席上にお配りしたバージョンでは,暫定的ではあるが明確化した記述になっている。例えば各施策の欄においては,以下に挙げるものが主要な指標である旨を明記した上で判定理由を説明している。もう一つ,先生から拝聴した不易と流行の関係では,外交政策の場合,例えば評価をした結果何が足りなかったといった典型的な評価の結果見いだされる反省点とは異なるものとして,この年度の間に途中で発生してきた国際情勢のような外的な事情変更などを踏まえて,今後は何に力を入れていきたいといった方向性でPDCAサイクルを回す評価を申し上げることが多い。例えば,国際経済関係の施策の中にOECDに関する取組が入っているが,日本がOECDに加盟してまもなく50周年を控えている中であるので,このようなその時期に応じた重点を意識して今後なすべきことを方向性などで語ることになる。また,欧米諸国がOECD加盟国の大半を占める中で,東南アジア地域との関与をどのように強化していくかが新しい課題であるので,その辺りも反映させてある。このような不易流行を意識した箇所は他にもあるが,分かりやすい例として1つ紹介させていただいた。
(2)その他
【外務省】
予算と政策評価の連携ということがよく言われる。政策評価では,行政事業レビューとの連携を強化するとの観点から,達成手段について行政事業レビューの項目と合わせるといった工夫を行っている。この関係から,行政事業レビューにおいて,外部有識者の指摘等を含めどのような動きがあるか担当者からご説明させていただく。
【外務省】
行政事業レビューは,予算要求に向けた自己レビューのプロセスであるため,昨年度,25年度が終わった時点で各課室でレビューを開始している。客観的な評価を行うべく,自己評価が終わった時点で有識者の先生方に見ていただくプロセスを設けている。6月中旬に自己点検を行った結果をHP上で掲載しているが,そのレビューシートについて,いくつかのシートを選んで有識者の先生に確認の上コメントを頂いている。有識者の先生方には5年間で全ての事業を見ていただく形にしており,年間20事業ぐらいを見ていただいている。
これに加え,公開プロセスも設けており,インターネットで議論の様子を動画で公表し,報道関係者から希望があれば実際に見ていただくこともできるような環境で,いくつかの対象事業を絞って公開の場で説明をして有識者の意見を頂くという場を設けている。今年は6月17日にこの公開プロセスを実施し,旅券関連業務,日本インドネシアEPAに基づく看護師・介護福祉士への日本語研修事業,JICAの交付金の技術協力の3事業について,事業の効率性を如何にして上げるかについて公開で議論を行った。結果を簡単に申し上げると旅券事業についてはとりまとめとしては,事業全体の抜本的改善という結果をいただいた。特に,旅券冊子の在庫の管理について合理化ができるのではないかというようなコメントを頂いた。また,日インドネシアの看護師・介護福祉士の日本語研修事業については,訪日前の研修を国際交流基金で行い,訪日後は外務省,経産省共同で,それから病院での研修は厚生労働省ということで所管省庁が分かれているためそういったところの連携をきちんと図るようにとのご指摘があった。技術協力については,NGOの草の根技術協力に焦点を当てて議論していただいたが,事業がきちんとNGOの育成にもつながるように,小規模なNGOも含め幅広く参加できるような制度的な改善を図るべきではないかということで,こちらは事業内容の一部改善というとりまとめ結果を頂いている。こうしたご意見を8月末に提出予定の概算要求に反映させる作業を現在進めている。
もう一つこの機会にご報告させていただきたいのは,行政改革推進会議において,行政事業レビューを通じ得られた優良な改善事例があれば,それを広く各府省に共有していくということが推奨され,この6月2日の同会議で優良改善事業として報告された3事業の1つに外務省の無償資金協力事業が報告されている。平成24年度の公開プロセスで無償資金協力の一部を議論していただき,評価をより客観的にすべきとのご指摘をしっかり受け止め,各事業について客観的な指標を作るという作業を進めた結果,昨年度末に開発課題別の指標例という形で公表できた。具体的には,教育,保健,下水等様々な事業分野別に客観的指標をあらかじめ設定し,事業の立案段階から被援助国側と共有し,一貫した指標で評価もやっていくというガイドラインを作ったことが評価され,他の事業への適用があり得る模範例として,行政改革推進会議で報告された。
【有識者】
外交に限ったことではないが,複数の府省にまたがる課題というものがいくつかあると思う。日・フィリピン、インドネシアの看護師・介護福祉士の日本語研修事業については,訪日前の研修を国際交流基金で行い,訪日後は外務省,経産省共同で,病院での研修は厚生労働省ということで所管が省庁横断型になっている。外国人の教育コストがどれほどかかっているのか、送り出し国との協力関係、外交政策、人材の育成にどれほど寄与しているのか、日本にやってくる移民労働者が経済成長に貢献する割合と医療費などの社会保障支出の割合をどう評価するのかという問題とも関わってくる。このような省庁横断型の評価において財政レベルのアカウンタビリティの確保に限ってみても、費用対効果の評価と透明性の確保が肝要となる。諸外国の日本への理解を深め,外交政策の目的を達成するために協力者を増やす意味で多くの外国人留学生あるいは研修生を受け入れるという施策を取る一方で,これにともなう安全保障上の、あるいは経済的リスク等、長期的な観点で施策の評価も必要となるのではないか。例えばEPAで受け入れ支援に関して,単に日本の国家試験に何人が合格した,だから効率性が高かったというような評価の問題だけではない。受入国である日本と送出国との間で日本側が負担する語学研修費の効率性や,そもそもお金をかけることの妥当性など,様々な切り口があるのではないかと思われる。英国は,移民が多いためこうした評価を厳しくやっているようだ。外交努力は、数値化できない定性的な評価とならざるを得ない部分も少なくないと思うが、検討の余地はある。
【外務省】
グローバル化が進む中で様々な問題について,単純に外交と内政というふうに分けられないといった意味では,仰せのとおりだと感じる。現在の評価制度では,基本的には各府省が所管している政策について評価を行う仕組みになっているが,省庁横断的に例えば人材育成や,感染症の問題,外国人受け入れ問題をどうするかといった横断的な問題について評価が必要な場合には,総務省が評価を行う旨政策評価法に定められている。
【有識者】
外務省の管轄の中で,例えば「人権の保護・促進」という目標を掲げる一方で、安全保障や成長戦略との関連も含め武器輸出を認めるという方針を出す動きがみられる。例えば,武器を移転したことが回り回って日本のリスクになるという可能性は当然あるし,そのようなリスクが実際に生じた場合,政策的に矛盾する結果となる。現在の情勢下でその国に武器移転しても問題がなさそうでも,状況が変わればリスクになる,米国が経験したのはこうしたことではないのか。担当の省庁が違うということであろうが,外交上の影響も軽視できない,人間の安全保障への影響なども気になるが、多角的な評価が求められるのではないか。
【外務省】
外交政策を立案する過程では,あらゆる要素を考慮し,必要に応じ関連省庁とも協議して決めていくようにしている。外務省の視点だけではなく,最終的な政策は政府一体となって行われる。
【有識者】
行政事業レビューにおいて,有用な改善例など成果を共有する動きがあり,特に外務省の改善事例が他府省に参照されているのはすばらしいと思う。あと,他の先生がおっしゃられた複数の府省にまたがる政策の幅はずっと意識されていて,それが国家安全保障局そして国家安全戦略という形に結実しているのではないか。今年度の政策評価書の中でもそうした動きに言及されているが,外務省の各局の施策評価と同時に,全体にまたがるもの,例えば国家安全保障局自体の政策のレビュー,国家安全保障戦略と実際に行われた政策との関連性をどう評価するかとか,こういった発想も必要になってくるのではないか。これはおそらく既存の枠組みだけではうまく捌ききれないという気がする。例えば,国家安全保障局自体に対する評価を追加的に入れていくようなシステムを作るなど,連携を取る方途があり得るのではとも感じている。
【外務省】
ご指摘は,今後の重要な検討課題と考えられる。
【外務省】
先生方からのコメントに全てお答えできる訳ではないが,ODA評価という別のラインから見させていただいている立場から2点ほど申し上げたい。1点目は,上位政策が変わったときにどのような評価基準を用いるべきか,という点についてである。ODA評価は,ODA評価ガイドラインに基づいて第三者評価として実施しているが,本年末にODAの憲法とも言うべきODA大綱の見直しが予定されている。まだ有識者懇談会の報告書が提出された段階で,今後具体的な条文作成の段階に入るが,その流れを踏まえてODA評価ガイドラインにも必要な検討を加えて行くことを考えている。またODA評価室では,これも第三者評価として「過去のODA評価案件のレビュー」を実施している。5年あるいは10年ごとに過去のODA評価結果及び提言等を整理し,分類化・体系化していただいているが,今回は,ODA大綱の見直しのスケジュールに併せて実施した。その結果,一層重視していくべき点としては,援助戦略・方針の一層明確化,民間等他アクターとの連携と協調のさらなる促進,多様な支援対象国に応じた援助方針の策定,情報公開・ODA広報の強化,ODA評価結果の一層の活用などの提言をいただいた。ODA評価の立場としては,上位政策が変わった際には,評価の基準・項目などに関する必要な見直しを検討してゆくことを考えている。2点目は,行政事業レビューとの関連で,ODAに関するご指摘に関しては,ODA第三者評価にてフォローする場合が多くなっている。昨年の貧困削減戦略支援無償,また本年6月の草の根技術協力の際にも,各レビュー結果を踏まえ,ODA第三者評価の対象としている。これらの対応が,無償資金協力に関して,行革推進会議にて改善がみられる事例としてご紹介頂けたことにも繋がったものと考える。そういう意味では,政策評価,行政事業レビュー,ODA評価が連携をもって動き出していると感じている。
【外務省】
本日は,貴重なご意見を頂き感謝申し上げる。これをもって本日の会合を終了させていただく。