サウジアラビア王国
内外発信のための多層的ネットワーク構築事業招へい:
イスラム協力機構(OIC)・知恵の声センター長と日本側有識者等とのオンライン・ミーティング
2月16日及び17日、サウジアラビアのジッダに本部を有するイスラム協力機構(OIC)事務局内に設置されている知恵の声センターのターレク・ラジャル所長(Dr. Tarek Ladjal, Supervisor, Center for Voice of Wisdom, Organization of Islamic Cooperation)と我が国有識者等とのオンライン・ミーティングが行われたところ、概要は以下のとおりです。
1 概要
今回のオンライン・ミーティングは、外務省主催の内外発信のための多層的ネットワーク構築事業の一環として、今後の知恵の声センターの対外発信活動を通じて、日本の暴力的過激主義対策やイスラム世界との関わりに関するイスラム諸国の理解を深めること、また、OICと我が国との協力を今後一層進めることを目的に開催されました。ターレク・ラジャル所長は、暴力的過激主義やテロ対策、そしてアフリカの平和と安定の定着に向けた日本の取組について関係者から説明を受け、我が国とイスラム諸国との関係強化の具体的方策等について我が国の有識者と意見交換を行い、今後我が国とOICとの間での交流と協力を今後深めていく上で有意義な第一歩となりました。なお、外務省からは、新村ジッダ総領事のほか外務省の関係者が参加しました。
2 議論の内容
ターレク所長からは、過激派対策に向けた政治面、社会・経済面、そして文化面に渡るOICの幅広い取組について説明があり、これを踏まえ、各セッションの日本側出席者との間で次のような議論が行われました。
(1)保坂修司日本エネルギー経済研究所中東研究センター長兼日本中東学会会長との意見交換(16日)
暴力的過激主義対策に関し、日本とイスラム世界との知識人対話の更なる促進に向けた国際会議の開催といった形でOICが果たし得る役割、今日のグローバルな課題となっている暴力的過激主義に関し日本も共有できる経験、若者等の過激派のプロパガンダに特に脆弱な層への対策の重要性、SNSの効果的な活用やアニメ・ゲームといった娯楽の教育分野での活用等について、活発な議論が行われました。
(2)NPO法人アクセプト・インターナショナルとの意見交換(16日)
ソマリア等での平和定着支援を行う我が国のNPOであるアクセプト・インターナショナルの永井陽右代表から、ソマリア等の紛争地域における取組や課題について説明が行われました。また、社会的マイノリティに対する支援の在り方、過激派から離脱した人々の社会復帰支援、イスラム世界での過激派対策において日本にできる貢献といった点について意見交換を行いました。
(3)JICA関係者との意見交換(16日)
JICA関係者から、中東アフリカ地域における平和と安定の定着、民間起業家支援等に関するJICAの様々な取組について説明が行われました。ターレク所長からは、ソマリア等の紛争地域においてOICがJICAの各種取組をどのように補完していけるかを含め、中東アフリカ地域の開発支援の在り方について、OICとJICAとの連携を更に強化していきたい旨の発言がありました。
(4)野村明史拓殖大学助教との意見交換(17日)
野村助教から、日本におけるムスリム状況(震災時の支援活動、ハラール・クッキング教室といったイスラム理解促進に向けた取組等)、ショッピングモール内での礼拝スペース確保やハラールレストランの増加等に見られる日本社会でのムスリム配慮の向上、大学における学術的なイスラム関連講座の開設等について紹介が行われました。ターレク所長からは、日本社会は寛容性のモデルであり、こうした日本の現状に対する理解がイスラム世界で更に高まるよう交流を深めていきたい旨の発言がありました。
(参考1)イスラム協力機構(Organization of Islamic Cooperation:OIC)
57のイスラム諸国を加盟国とする政治機関。1969年9月にモロッコのラバトで開催されたイスラム諸国首脳会議の決定により設立され、その翌1970年に開催されたイスラム諸国外相会合においてジッダがその恒久の本拠地とされる。中東和平問題のほか、中東地域のみならず世界各地で発生している暴力的過激主義への取組、今日では、イスラムと他の宗教との間の共存や、イスラム諸国学生に対する留学奨学金の付与など、イスラム諸国とその他の国々の関係強化に向けた多岐にわたる取組を行っている。OICのウェブサイトはこちら 。
(参考2)知恵の声センター
2016年に設立されたOICの一組織で、暴力的過激主義に対する取組を実施。多数のプラットフォームを用い、諸外国・地域におけるイスラム教徒と他宗教・文明との共生や相互理解の重要性を促す発信を積極的に行っている。同センターのウェブサイトはこちら 。