アフガニスタン・イスラム共和国

平成28年10月6日
アフガニスタンに関するブリュッセル会合
10月5日(水曜日),ブリュッセルの欧州連合本部庁舎において,EU及びアフガニスタン政府の共催により,アフガニスタンに関するブリュッセル会合が開催されたところ,概要以下のとおり(モゲリーニEU外務・安全保障政策上級代表,ラバニ・アフガニスタン外相他,EU及びアフガニスタンの閣僚が議長を務めた。)。

1 結果概要

(1)薗浦健太郎外務副大臣が日本代表団長として出席した他,ガーニ・アフガニスタン大統領,トゥスク欧州理事会議長,ケリー国務長官等関係国首脳・外相,潘基文国連事務総長,山本忠通国連事務総長特別代表兼UNAMA代表等国際機関の長等,75か国・26機関の代表が出席した。

(2)今次会合は,アフガニスタンの開発支援に関し,関係国・機関が一堂に会して方向性を定める機会となった。参加した各ドナー国・機関は,2017年から2020年末までの開発支援の方針を表明し,総額152億ドルの支援プレッジの表明があった。また,参加国・機関は,ガーニ大統領率いる現政権の取組を今後も支援していくことで一致した。

(3)アフガニスタン政府は,新たに今後5年間の開発の方針を定める「平和と開発のための国家枠組み」(ANPDF:Afghanistan National Peace and Development Framework)を発表するとともに,汚職対策,選挙改革,人権改善等における改革へのコミットを表明した。

(4)また,国際社会はアフガニスタン政府と共に,「東京相互責任枠組み」(TMAF:Tokyo Mutual Accountability Framework)の後継である「相互責任を通じた自立のための枠組み」(SMAF:Self-Reliance through Mutual Accountability Framework)で定められている選挙改革,汚職対策,人権,財政改革,開発,ビジネス環境整備,ドナーによる支援の形態に関する指標について,2018年末までに達成すべき短期指標を新たに策定した。

(5)今後のアフガニスタンの自立と安定に向け,「変革の10年(2015年~2024年)」にわたり,(1)ANPDF及びSMAFに記載のとおりアフガニスタン主導の国作り,(2)国際社会による2020年までの現状あるいはそれに近い水準の支援,及び(3)経済発展のための暴力の終焉に向けた地域・国際支援及び持続的和解に向けた政治プロセスへの取組を確認する旨のコミュニケ(PDF)が採択された。

(6)薗浦副大臣は,今次会合の機会に,ケリー米国務長官,モゲリーニEU外務・安全保障政策上級代表,アブドッラー・アフガニスタン行政長官,潘基文国連事務総長,イリナ・ボコバ・ユネスコ事務局長,ハムディ・ローザ・エジプト外務副大臣,エルラン・アブディルダエフ・キルギス共和国外務大臣と立ち話を行った。

2 今後の日本の対アフガニスタン支援

薗浦外務副大臣から,アフガニスタンの自立と安定に向けた同国政府の取組を支えるため,以下のとおり積極的な貢献を表明するとともに,アフガニスタン政府に対し改革努力を強く要請した(骨子(PDF)仮訳(PDF) / 英文(PDF))。また,アフガニスタンへの帰還を余儀なくされた帰還民を対象とし,500万ドルの緊急無償資金協力を実施することを発表した。

(1)アフガニスタンに対する直近の支援規模を維持するため,年間最大約400億円の支援(現行レートで約3億9000万ドル)を,2017年から2020年の4年間継続するよう努めることとし,このうち,治安支援については,直近の支援規模である年1億3000万ドルを同じ4年間確保する。

(2)治安改善の重要性を強調。ガーニ大統領とアブドッラー行政長官の協力が不可欠。政治指導体制の安定が,治安改善にもつながる。

(3)アフガニスタン政府に対し,汚職対策,選挙改革,人権改善等の分野における改革努力を強く求める。アフガニスタン政府の改革努力に応じて,日本を含む国際社会が支援を継続していくという相互責任の原則を明確にするためである。

(4)日本は,これまでも主要ドナー国として,国際社会と共に,アフガニスタンの国づくりを支えてきた。今回の支援プレッジは,アフガニスタンの自立と安定,テロ根絶に引き続きコミットする日本の強い意思の表れである。

(5)各国プレッジの総合計額だけを,単に今次会合の成果とすべきではない。今次会合が,複数年度プレッジを行う最後の会合となる程度までアフガニスタンが自立することができるか否かが,より重要である。

【参考】

1 「平和と開発のための国家枠組み」(Afghanistan National Peace and Development Framework: ANPDF)

(1)民間主導の輸出増・経済成長によりアフガニスタンの自立及び国民の福利増進を実現することを目的とし,インフラや人材開発等に必要な,規律ある財政に支えられた投資を行うための戦略

(2)開発の優先課題
 ア バナンス:公共セクター改革,汚職撲滅,地方ガバナンス強化,麻薬対策等。
 イ 社会資本への投資:司法改革,国民意識の醸成。
 ウ 経済成長と雇用:農業開発,民間セクター開発,鉱物・資源開発,エネルギー・インフラ開発,地域統合,労働生産性向上および人的資源への投資,都市開発等。
 エ 貧困削減及び社会統合:農村開発、教育、保健衛生等。

2 東京会合(2012年)における「東京相互責任枠組み」(TMAF)の創設
2012年7月のアフガニスタン支援に関する東京会合において,「東京相互責任枠組み」(Tokyo Mutual Accountability Framework: TMAF)が創設。アフガン政府・国際社会双方が達成すべき指標を設定。

3 「相互責任を通じた自立のための枠組み」(SMAF)
ガーニ新政権の国家優先事項に基づき,2015年9月,TMAFを更新し,新たに「相互責任を通じた自立のための枠組み」(SMAF: Self-Reliance through Mutual Accountability Framework)を策定。

(1)ポイント:アフガン政府が達成すべきガバナンス・開発等の改革指標と国際社会が達成すべき援助効率性向上の指標を設定,達成度合いを定期的に確認する仕組み。アフガン政府の改革達成度に基づき,国際社会が支援を継続することとなっている。

(2)短期指標:SMAFは,2016年末までにアフガン政府及び国際社会がそれぞれ達成すべき計39の短期指標を定めている。対象は選挙改革,汚職対策,人権,財政改革,開発,ビジネス環境整備,ドナーによる支援の形態等。ブリュッセル会合において改定し,新たに2018年末までの短期指標を設定予定。

(3)ブリュッセル会合において設定された新たな短期指標

ア アフガン側が達成すべき,主な新たな改革指標(~2018年)
(ア)2017年の選挙改革プロセス及び選挙準備に向け,着実に歩を進める。
(イ)政府全体の汚職対策戦略を2017年前半までに策定し,2017年後半に実施。
(ウ)女性公務員を2017年までに2015年から2%増加させる。
(エ)マクロ経済・財政改革をIMFによる融資プログラムに沿ったものとする。
(オ)貧困削減のため市民憲章プログラム(NPPの一つ)を2017年12月までに2,000の村で実施。
(カ)民間セクターと協働し,投資環境改革計画を2017年中頃までに策定。等

イ 国際社会が達成すべき,主な新たな援助効率性向上の指標(~2018年)
(ア)一定割合以上のオン・バジェット支援(アフガニスタンの国家予算に組み入れる援助)の確保
(イ)80%以上の支援を,NPPsに沿ったものとする。等

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