シリア・アラブ共和国

平成28年2月9日
2月4日(木曜日)(現地時間),ロンドンのクイーン・エリザベスII会議センターにおいて,クウェート,独,ノルウェー,英及び国連の共催で「シリア危機に関する支援会合(The Supporting Syria and the Region Conference, London 2016)」が開催され,我が国からは武藤外務副大臣が出席したところ,会合の概要は以下のとおり。

1 会合の経緯

シリアの人道状況の悪化が継続する中,引き続き1000万人を超えるシリア難民・国内避難民やホストコミュニティ等に対する支援が必要な状況において,2015年12月,国連は,シリア国内及び周辺国に対する支援として,総額約77億ドルの人道支援アピールを発出した。これを踏まえ,国際社会に対して拠出を呼びかけるべく本件会合が開催された。

2 会合の概要

(1)本件会合には,我が国のほか,主催者であるクウェート,独,ノルウェー,英及び国連のほか,米,仏,アラブ諸国を始めとする約70の国,国際・地域機関の代表等が出席した。主な出席者は,サバーハ・クウェート首長,メルケル独首相,ソールベルグ・ノルウェー首相,キャメロン英首相,アブドッラー2世ヨルダン国王,ダーヴトオール・トルコ首相,サラーム・レバノン首相等の首脳,ケリー米国務長官,ファビウス仏外務・国際開発相,ジェンティローニ伊外相,ビボー加国際開発相,アッサーフ・サウジアラビア財務相,シュクリ・エジプト外相,ジャアファリ・イラク外相,ザリーフ・イラン外相等の閣僚が多数出席。国際機関からは,潘基文国連事務総長の他,オ・ブライエン人道問題担当国連事務次長,グランディ国連難民高等弁務官,クラークUNDP総裁,トゥスク欧州理事会議長,モゲリーニEU外務・安全保障政策上級代表,エル・アラビー・アラブ連盟事務総長等が出席。

(2)会合では,各国から,長期的な支援に重点を置き,教育支援,雇用機会の増進等の必要性が強調され,幾つかの国は複数年の支援や借款を含めた支援表明を行ったほか,シリア国内の被包囲地域等,支援が行き届いていない地域への人道アクセスの確保や国際人道法の遵守の必要性が改めて指摘された。さらに,シリア危機の政治的解決が不可欠であるとして、国連安保理決議第2254号に基づく政治プロセスの進展の必要性が強調された。

(3)我が国から出席した武藤外務副大臣は,日本がこれまでシリア難民流入の影響を受けているヨルダン及びトルコに対する円借款を含めて総額12億ドル以上のシリア・イラク及び周辺国支援を実施してきたこと,日本が新たにシリア・イラク及び周辺国に対し約3.5億ドルの支援を実施することを表明するとともに,新たな支援は,第一に特定の集団が疎外され過激化することを防ぐための包摂的な支援が重要であり,第二に人道支援と開発支援の連携を通じてシリア人に将来の復興への希望を与え受入国の負担を軽減する必要があるとの考えに基づいて,女性や若者も含めた職業訓練等を着実に実施していく旨表明した。
なお,本会合の場等を利用し,武藤副大臣は,サバーハ・アル・ハーリド・クウェート第一副首相兼外相,ジャアファリ・イラク外相,スワイア英外務閣外相,アヌレイ英外務閣外相,アッサーフ・サウジアラビア財務相との二国間会談や,マララ・ユースフザイ氏と懇談するなど,中東地域の諸問題だけでなく,女性といったテーマについても有意義な意見交換を行った。
 
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    ジャアファリ・イラク外相との会談
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    サバーハ・アル・ハーリド・クウェート第一副首相兼外相との会談
(4)会合では,新規支援として,主催国である独が23億ユーロ(約25億ドル)(2018年まで),英が約20億ドル(2020年まで),ノルウェーが100億ノルウェー・クローネ(約12億ドル)(2020年まで),クウェートが3億ドル(2018年まで)を行ったのを始めとして,EU及び加盟国:30億ユーロ(約33億ドル)(EUとして24億ユーロ(約26億ドル)),仏:10億ユーロ(約11億ドル)(2018年まで),米:9億ドル,伊:約4億ドル(2018年まで),サウジアラビア:2億ドル,UAE:約1.37億ドル,オランダ:1.25億ユーロ(約1.4億ドル),デンマーク:約1億ドル,カタール:1億ドル,ベルギー:7,700万ユーロ(約8,200万ドル)(2017年まで),カナダ:7,000万ドル,オーストリア:6,000万ユーロ(約6,500万ドル),韓国:約6,200万ドル,スイス:約5,000万ドル他多数の国から追加支援のプレッジがあった。(注:上記支援額は,特に言及のあるものを除いて,いずれも2016年の支援額。)

(5)今回の会合で示された最終的なプレッジ総額は,2016年及び2017年以降の分も含めて総額約100億ドル以上と発表された。

3 会合の評価

(1)今回の会合では,昨年3月の第3回シリア人道支援会合におけるプレッジ総額である約38億ドルをはるかに上回る100億ドル以上のプレッジが行われた。このことは,シリア情勢の悪化が長引く中,これまで以上に教育,職業訓練,雇用促進といった中長期的な観点からの支援が必要であり,そのような観点から,国際社会が引き続き一致協力して取り組むとの姿勢を示す重要な機会となった。

(2)これまで,シリア及び周辺国に対する人道支援に積極的に取り組んできた我が国としても,中長期的な支援にも重点を置きつつ,迅速に支出される総額約3.5億ドルの支援を表明することで国連等からも評価が示された。

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