中東
安倍総理大臣の中東訪問
平成27年1月22日
1月16日から21日まで,安倍内閣総理大臣は,エジプト,ヨルダン,イスラエル,パレスチナを訪問したところ,概要は以下のとおり。
1.訪問日程
(1)エジプト(1月16日~17日)
日エジプト首脳会談及び昼食会,エルシーシ大統領と経済ミッションの会合,マハラブ首相との会談,日エジプト経済合同委員会における中東政策スピーチ,大エジプト博物館視察
(2)ヨルダン(1月17日~18日)
日ヨルダン首脳会談,アブドッラー2世国王夫妻主催夕食会,アブドッラー2世国王主催日・ヨルダン経済界との会合及び昼食会,ヌスール首相との会談,ヨルダン国立博物館視察
(3)イスラエル(1月18日~20日)
日イスラエル首脳会談,ネタニヤフ首相夫妻主催夕食会,ネタニヤフ首相と経済ミッションとの会合,リヴリン大統領への表敬,ヤド・ヴァシェム(ホロコースト博物館)訪問,経済セミナー出席,エルサレム旧市街視察,ヘルツォグ労働党首による表敬,「イスラエル・パレスチナ合同青年招へい」及び「中東和平プロジェクト」参加者の同窓会,内外記者会見
(4)パレスチナ(1月20日)
アッバース大統領との首脳会談及び昼食会,アッバース大統領と経済ミッションとの会合,アラファト廟訪問
2.全体概要と評価
(1)中東地域の主要勢力との伝統的友好関係を確認するとともに,政治経済等の幅広い協力関係を強化。また,中東地域の安定に不可欠であるイスラエル・パレスチナ間の和平の実現に向けた働きかけを実施。中東地域の安定や国際秩序に対する深刻な脅威であるISIL対策をめぐり,周辺国との協調をアピールすると共に,日本のプレゼンスを発信。
(2)安倍総理がエジプト・カイロで行った中東政策スピーチにおいて,最近の中東地域の秩序の動揺や過激主義の伸長に対し,「中庸が最善」の考えを共有した。そして,国際協調主義に基づく積極的平和主義の観点から,活力に満ち,中東地域の人々が安心して暮らせる安定した中東を取り戻すために,日本として貢献していくことを表明。具体的な貢献策として,中東全体に向けた25億ドル相当の新たな支援を打ち出した。
(3)今回の訪問に同行した経済ミッション関係者は,4か国・地域の全ての首脳及び企業関係者との会合を行い,日エジプト経済合同委員会,イスラエルでの経済セミナー等のイベントを開催。中東地域の企業とのマッチングや大型プロジェクトへの参画や投資機会の増大に向け,我が国企業の中東地域におけるビジネスチャンスの拡大に向けた機会となった。
(4)訪問中に発生したISILによる邦人の殺害予告動画配信に対し,内外記者会見で,安倍総理大臣より,人命を盾にとって脅迫をすることは許しがたいテロ行為である,日本はテロに屈することなく,国際社会によるテロとの闘いに貢献していく,今回の中東訪問で発表した2億ドルは,難民支援を始め,非軍事分野でできる限りの貢献を行うためのものとの立場を表明。アッバース・パレスチナ自治政府大統領に,人命確保のための情報収集や必要な支援を直接要請し,アブドッラー2世・ヨルダン国王,エルドアン・トルコ大統領,エルシーシ・エジプト大統領に電話で支援要請を行った。
3.各国での概要と成果
(1) エジプト
- 日エジプト関係の新たな1ページを開き,今後の二国間関係を深化させるための目標を定めた包括的な共同声明に合意。日エジプト関係を一層高みに引き上げるための歴史的な訪問となった。
- 安倍総理大臣が「中庸が最善:活力に満ち安定した中東へ-新たなページめくる日本とエジプト-」と題する政策スピーチを行い,25億ドル相当の新たな中東支援を含め,中東の安定に向けた日本の貢献を表明。
- 日エジプト経済合同委員会の開催,エルシーシ大統領と経済ミッションとの会合等を通じて,スエズ運河開発計画や電力エネルギー分野等の国家的プロジェクトに日本企業が参画し,両国経済関係のさらなる拡大につなげる機会となった。
(2) ヨルダン
- ISIL対策の最前線として難民等地域不安定化の影響を受けているヨルダンへの支援を表明。
- 日本とヨルダンは皇室と王室間の親密な関係を基礎として大変良好な関係にあるが,昨年11月のアブドッラー2世国王の訪日に続き今回安倍総理大臣がヨルダンを訪問し,首脳間の活発な交流が続いている。両首脳は,両国の戦略的関係を更に発展させ,平和と安定を促進するための協力を継続することを改めて確認。
- 経済ミッションが同行し,日本企業が関わる太陽光発電プロジェクト2件に関する署名式を実施。また,アブドッラー2世国王との昼食会も開催。
(3) イスラエル
- 昨年5月のネタニヤフ首相訪日以降,政治・経済・文化面等全ての分野で二国間関係が着実に進展していることを確認する,日イスラエル共同プレスリリースを発出。
- 中東和平問題について,安倍総理大臣より,昨夏以降の暴力と不信の連鎖に懸念を表明し,対立がエスカレートするような言動を控えるよう要請し,イスラエルが実施しているパレスチナ自治政府に対する税還付停止の見直しを強く求めた。また,国際法違反である入植活動の停止についても要請。昨年5月の首脳会談に引き続き,「平和と繁栄の回廊」構想に対するイスラエルの一層の協力への期待を表明。日本が信頼醸成の取り組みとして長年続けてきた,「イスラエル・パレスチナ合同青年招へい」及び「中東和平プロジェクト」参加者の同窓会を開催。
- 同行した経済ミッションは,ネタニヤフ首相との会合及び経済セミナーを実施。安倍総理大臣は,あらゆる分野で深化している二国間関係の内,特に経済面の進展には目を見張るものがあり,「イノベーション」を経済成長のエンジンと位置づける日本が,革新的な技術を生み出すイスラエルと協力しない理由はない旨述べ,今後の経済関係の一層の期待を表明。
- 安倍総理大臣は,ヤド・ヴァシェム(ホロコースト博物館)を訪問し,平和に向けたメッセージを発出。
(4) パレスチナ
- 日パレスチナ関係や中東和平プロセスの促進に関する日・パレスチナ共同プレスリリースを発出。
- 中東和平問題について,安倍総理大臣より,1億ドルの新規支援を含め,二国家解決に向けたパレスチナの国造りへのコミットメント・支援を強化する考えを直接伝達。
- 国連の場や国際機関で外交攻勢をかけるパレスチナに対し,交渉再開や中東和平への努力を損ねないよう働きかけ。
- 経済ミッションが同行し,アッバース大統領との会合を行い,パレスチナ経済の自立化に向けて,日本企業が関与していく足がかりとなった。