寄稿・インタビュー
イェディオット・アハロノット紙(イスラエル)への茂木外務大臣寄稿(令和3年8月18日付)
「日本・イスラエル関係:協力の歴史」
このたび、約7年ぶりにイスラエルを訪問できることを大変嬉しく思います。日本においてイスラエルは、聖書の舞台として知られてきました。これに加えて、近年では優れたイノベーションを生み出すスタートアップ大国、ハイテク大国として大いに注目を集めています。実際、日本企業による近年のイスラエル進出の動きは目覚ましいものがあり、その活動分野は、サイバーセキュリティ、医薬、モビリティ、宇宙開発、アグリテックと多岐にわたります。ビジネス分野におけるこのような活発な動きが、両国関係の更なる発展に向けた牽引役を果たしていくことでしょう。
日・イスラエル外交関係は、来年70周年を迎えます。両国国民の間には、堅固な友好の歴史があります。それは、例えば、約80年前に日本人外交官杉原千畝氏が発行した「命のビザ」であり、10年前の東日本大震災の際のイスラエルによる医療支援チームの派遣です。今回のイスラエル訪問では、二国間関係の進展に加え、中東地域及び国際社会の安定と繁栄に向けて、6月に発足したイスラエル新政権との間で直接顔を合わせ、連携して対応していくことを確認したいと考えています。
世界が直面する新型コロナ問題への対応には、国際的な連携が不可欠です。本年6月、日本はGaviとCOVAXワクチン・サミットを共催し、本年末までにワクチン18億回分を確保するために必要とされる資金目標(83億ドル)を大きく超える額の確保に貢献しました。イスラエルは、世界に先駆けてワクチン接種キャンペーンを開始し、その迅速な対応で国際社会に先例を示しました。今後、新型コロナ対策を含む保健医療分野においても二国間協力が一層進むことを期待します。
日本は、人口にして世界の半数以上を占めるインド太平洋において、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を構築する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた取組に力を入れています。海洋通商路の要衝に位置する中東地域との連携は、まさにこうしたFOIPの理念の実現において重要です。こうした中、日本は、自由、民主主義、法の支配、航行の自由といった基本的価値を共有する友好国であるイスラエルとビジョンを共有し、協力を強化したいと考えています。
昨年のイスラエルとアラブ諸国との国交正常化は、中東全体の安定や繁栄にとって新たな機会を生み出しました。イスラエルと地域諸国との経済・貿易関係の拡大は、経済面を端緒として相互の関係を深め、中長期的な地域の安定に繋がるものと考えます。日本としても、イスラエル及びアラブ諸国と連携した協力の機会が広がることを期待しています。
本年5月のイスラエルとガザ武装勢力との衝突で、双方の民間人に多数の死傷者が生じたことは心痛む事態です。我が国としては、イスラエル、パレスチナ両当事者の抱える問題は暴力によって解決されるものでは決してなく、当事者の交渉と相互の信頼を築く努力によってのみ解決されるものと確信しています。我が国としては、「二国家解決」の実現に向けて、引き続き「平和と繁栄の回廊」構想等の我が国独自の取組を通じて、当事者間の信頼醸成に取り組んでいく考えです。
今月8日に閉幕した東京オリンピック競技大会において、イスラエル選手団は2つの金メダルを含む4つのメダルを獲得する、めざましい活躍を見せてくれました。来週開幕するパラリンピック競技大会でも、イスラエルの選手が活躍され、素晴らしい成績を収められることを願っています。