寄稿・インタビュー
アハラーム紙(エジプト)への茂木外務大臣寄稿(令和3年8月15日付)
「エジプトは世界の平和と安定のための重要なパートナー」
今日8月15日から、外務大臣に就任して初めてエジプトを訪れます。約10日間に及ぶ中東・北アフリカ地域を歴訪するに当たり、この地域の安定に不可欠な日本の友人であるエジプトを最初に訪問することとしました。今年は、日本の最初の外交施設がカイロに設立されてからちょうど85年を迎える記念すべき年であるだけに、両国関係の一層の飛躍に向けて貢献できることを嬉しく思います。
日本とエジプトの友好関係は、2015年、当時の安倍総理のエジプト訪問に続き、2016年のエルシーシ大統領の公式実務訪問賓客としての訪日、そして2019年のG20及び第7回アフリカ開発会議(TICAD7)のための二度にわたる訪日を契機として、一層強固にそして多岐に亘り発展してきました。近年では、エジプト日本学校(EJS)やエジプト・日本科学技術大学(E-JUST)といった教育分野での協力が大きく進展しています。文化面でも、これまで両国協力の象徴の一つであったオペラハウスに加え、日・エジプト協力の新たな記念碑となる、大エジプト博物館(GEM)の完成が近づいています。
世界が直面する新型コロナ禍に際しては、日本は、公平なワクチン供給のための国際的枠組みであるCOVAXファシリティに対して、合計10億ドルの拠出を表明しました。エジプトとの関係では、CTスキャナーを始めとした医療機材の供与、ワクチン接種のためのコールドチェーン整備、医療・看護関係者への技術協力、女性や子供など脆弱層への支援、さらには財政支援など、2億5,000万ドル以上の協力を進めています。
そして今、両国は、二国間関係の枠を超え、地域や世界を視野に入れた戦略的パートナーとしてさらに歩を進める時期に来ています。その際、これから一層強化すべきは、両国をつなぐ「海」を巡る協力です。この3月、世界最大級のコンテナ船エバーギブン号の座礁事故が発生しました。スエズ運河庁の素晴らしい働きにより、わずか6日間で離礁しましたが、この事故は、インド・太平洋と地中海、大西洋を連結するスエズ運河、そしてエジプトの重要性を世界に改めて認識させる機会となりました。
スエズ運河は、歴史的に日本とエジプトを結ぶ絆でした。ちょうど100年前、後に昭和天皇となられる皇太子裕仁親王もスエズ運河を北上し、エジプトを訪問しておられます。古くから日本企業はスエズ運河を活用した航路を開拓し、中東・北アフリカに展開するビジネスの拠点としてポート・サイードやアレキサンドリアで活動をしていました。また、スエズ運河架橋を含め、日本はこれまで様々な経済協力を通じ同運河の発展に携わってきました。
安定した国際海運の前提となるのは、国際法に基づく自由で開かれた海洋秩序です。このような秩序を構築することで地域と世界の平和と繁栄を実現することができ、これが日エジプト両国共通の利益になると、私は信じています。日本は、「自由で開かれたインド太平洋」という考えの下、海を平和と繁栄のための国際公共財として守る取組において、エジプトを欠くべからざるパートナーと考えています。
また、既に日本とエジプトのパートナーシップは、地域の平和と発展に向けて貢献してきました。特に、紛争解決・平和構築のためのカイロ国際センター(CCCPA)などを通じて10年以上に亘ってアフリカでの平和構築のための人材育成に協力してきたことは、日本が主導するTICADとエジプトが主導する「持続可能な平和と開発に関するアスワン・フォーラム」をつなぎ、シナジーを生み出しています。今後、両国で、アフリカの平和と発展の実現に向けてさらに力を合わせていきたいと思います。
こうした取組を進めていくにあたり、日本は、長年の友人であるエジプトの皆さんと、真のパートナーとして共に歩んでいきたいと心から願っています。今回の訪問では、二国間だけでなく、地域や世界の平和と繁栄・発展のために両国がどのように協働していくか、エジプト政府との間でしっかり話し合うことを楽しみにしています。